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Bリーグ&マーチマッドネス:NCAA制覇4回の強豪校OBがB1で奮闘中

青木崇Basketball Writer
アームストロングは04年に全米制覇を経験 (C)UConn Athletics

 Bリーグの中には、今アメリカで盛り上がっている『マーチマッドネス』として知られるNCAAトーナメントでプレーした選手が多いことをご存知だろうか? 今季は八村塁がゴンザガ大のメンバーとして活躍していることもあり、日本でもマーチマッドネスへの注目度が少し上がっているはずだ。B1のチームでプレーする選手の中には、NCAAトーナメント優勝やファイナル4の舞台を経験した者もいる。その代表する選手をあげるならば、UCLAが1995年に優勝したメンバーである桜木ジェイアール(当時の名前はJ.R.ヘンダーソン)だろう。

 UCLAはNCAAトーナメント制覇11回という名門中の名門だが、コネチカット大(UConn)ハスキーズも1999年からの20年間で4度頂点に立ち、多くのNBA選手を輩出した強豪として認知されている。では、なぜ突然UConnの名前が出てくるのか? その理由は、B1のチームにOBが3人在籍し、チームに欠かせない戦力としていい仕事をしているからだ。その3人とは、ヒルトン・アームストロング(琉球ゴールデンキングス)、ハシーム・サビート・マンカ(横浜ビー・コルセアーズ)、ギャビン・エドワーズ(千葉ジェッツ)である。

琉球でディフェンスの核となっているアームストロング (C)平野敬久
琉球でディフェンスの核となっているアームストロング (C)平野敬久

 アームストロングは2004年に控えセンターながらも、NCAAトーナメント制覇を経験し、2006年に1巡目12位でホーネッツ(現在のペリカンズ)からドラフトされた経歴を持つ。サビートは221cmのサイズを生かしたディフェンスを武器に、2009年にチームをファイナル4に導く要因になったビッグセンター。その年のNBAドラフトでは、グリズリーズからNo.2ピックでドラフトされた逸材だった。この2人がNBAでプレーしている一方で、エドワーズは3年間ビッグマンの控えで、4年生になって平均10.6点、6.5リバウンドを記録。しかし、NBAからドラフトされることはなく、2013年にアイシン(現在のシーホース三河)の一員となって来日した選手である。

大学時代から身体能力の高いビッグマンとして活躍しているエドワーズ (C)UConn Athletics
大学時代から身体能力の高いビッグマンとして活躍しているエドワーズ (C)UConn Athletics

 エドワーズは2015年にアイシンがNBLを制したとき、ファイナルで得点とリバウンドのダブルダブルを連発。身体能力の高さとフィジカルの強さに加え、ハッスルプレーでもチームへの貢献度が高かったことからすれば、ファイナルMVPに値するレベルの活躍をしていた(受賞者は金丸晃輔)。今季から千葉ジェッツの一員となったエドワーズは、天皇杯決勝で古巣の三河相手に20点、10リバウンドをマークし、チームの2連覇の原動力となった。B1のレギュラーシーズンでも平均17.8点、7.8リバウンドの数字を残し、千葉の32勝12敗という好成績に大きく貢献している。

エドワーズとサビートは同級生で2009年にNCAAファイナルフォーを経験
エドワーズとサビートは同級生で2009年にNCAAファイナルフォーを経験

 そんなエドワーズと横浜のサビートは、2006年秋にコネチカット大に入学した同級生。3年生だった2009年には、7万人以上の観客が駆けつけたNCAAファイナルフォーの舞台に立った経験がある。日本で5年目を迎えるエドワーズが「昨季彼が来るかもしれないという噂は聞いていたけど、何も起こらなかった。でも、今季現実となったことにはちょっと驚かされた」と語るように、サビートと同じリーグでプレーすることになるとは想像していなかった。昨季千葉に在籍し、今季から琉球でプレーするアームストロングは、3人がBリーグでプレーすることを「とてもクールだよ。そうなるとはまったく予想してなかったけどね。最初にギャビンが日本に来て、それから自分、ハシームと続いた。僕が卒業した後、ギャビンとハシームが同級生として入学したんだ。どこかでUConnコネクションを感じられるのはいいことだし、特にアメリカから遠く離れた日本で、というのは素晴らしいね」と話す。

大学時代のサビードはインサイドで強烈な存在感を示していた (C)UConn Athletics
大学時代のサビードはインサイドで強烈な存在感を示していた (C)UConn Athletics

 エドワーズとはNBA入りするまでの3年間一緒にプレーしたサビートだが、千葉と実際に対戦するまで話す機会はなかったという。それでも、「友人関係というのは、連絡を取り合っているものもあれば、そうでないものもある。でも、コート上で一度顔を合わせれば、以前のような心の触れ合いを感じられるし、競い合えることは素晴らしいこと」と、UConnの仲間としてのつながりは失われてないことを強調する。アームストロングは2006年に卒業してNBA入りしたため、サビートとエドワーズと入れ違いでハスキーズの一員になった。

 しかし、アームストロングとの縁は以前からあった。「彼がちょうどNBAからドラフトされたばかりの時、大学に残ってワークアウトをしていたから、その時に彼のことを知る機会があった」とエドワーズが語れば、サビートは「数年前かな、NBA復帰を目指してヒルトンと一緒にカリフォルニアでワークアウトをしていたんだ。お互いどこでプレーするかわからない状況だったから、相当ハードにやったよ」と振り返る。UConnの後輩たちとマッチアップすることについてアームストロングは、「最高だよ。激しく競い合ってお互いにやっつけてやるというメンタリティでやっているのは、UConnの血が流れているからさ」と口にしている。

 

 アームストロングは平均6.5点、7リバウンドという数字以上にディフェンスで存在感を示し、琉球のB1チャンピオンシップ進出に貢献。エドワーズの千葉が東地区2位ということからすれば、どこかのラウンドで直接対決が実現するかもしれないし、アームストロングは「ありえるね。それが実現したら、とてもクールな気分になるだろうし、UConnにとっても大きなストーリーになると思う」と話すなど、エドワーズと古巣千葉とチャンピオンシップで対戦することを楽しみにしている。

 サビートの横浜は苦戦を強いられ、チャンピオンシップ進出が正直に言って厳しい。しかし、残留プレーオフを回避するためにも、攻防両面でサビートの活躍が欠かせない状況。ファウルトラブルに悩まされることが多いながらも、平均2.42ブロックショットはB1でトップの数字であり、15点以上も18試合で記録している。勝ち試合の11.3リバウンドは、シーズン平均の8.2本よりも3.1本も多いことからも、サビートが活躍するか否かが横浜の命運を左右すると言っていい。

 所属チームの状況や自身が担う役割に違いがあるといえ、3人ともB1でいい仕事をしているのは確か。そして、彼らにUConnのコネクションとは何か? と質問すると、次のような答えが返ってきた。

「UConnに行き、どのスポーツでもハスキーズの一員になれば、強いつながりができるし、大学に対する思いも強くなるものさ」(ヒルトン・アームストロング)

「我々はお互いがすごく親密なグッドガイのグループさ。UConnで様々なことを学び、経験させてもらったよ」(ハシーム・サビート・マンカ)

「多くの大学と同じように、たとえコーチや一緒にプレーしたチームメイトが違ったとしても、いろいろなことをシェアし、経験した兄弟みたいな間柄だよ」(ギャビン・エドワーズ)

 UConnハスキーズであること誇りは、どこにいても変わらない。

Basketball Writer

群馬県前橋市出身。月刊バスケットボール、HOOPの編集者を務めた後、98年10月からライターとしてアメリカ・ミシガン州を拠点に12年間、NBA、WNBA、NCAA、FIBAワールドカップといった国際大会など様々なバスケットボール・イベントを取材。2011年から地元に戻り、高校生やトップリーグといった国内、NIKE ALL ASIA CAMPといったアジアでの取材機会を増やすなど、幅広く活動している。

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