京都発の伝統にオリエンタルな息吹。象牙色の「水無月」を提案する滋賀県とも栄さんの実直で新しいテイスト
6月30日に迎える「夏越の祓(なつごしのはらえ)」。都内の神社では「茅の輪」を目にするようになり、こと観光地では日常の景観と異なる情景にカメラを構える海外からの観光客の方もちらほら。
昨今関東をはじめ、全国的にも販売されるようになったこの時節とは切っても切り離せない和菓子「水無月」。諸説ありますが、平安時代の京都にて、一年の折り返しに邪気や暑気を払うため、氷室に貯蔵しておいた貴重な氷を口にしていたことからとも言われています。
また、五行にて力を司る赤を象徴した小豆と外郎を合わせるようになったのはもっと後。江戸時代には庶民の間で食されていたという説もあります。
さて、水無月と申しますと白(ところによっては黒糖や抹茶のものも)い外郎に小豆を敷き詰めた三角形の外郎を思い浮かべる方が多数かと思いますが、滋賀県の老舗「とも栄」さんからは、一風変わった色合いの水無月が。
「杏仁風」のねっとりと舌に絡みつくような柔らかな食感の外郎は、濃厚な旨味と甘味が溢れ、じんわり味わうたびに杏仁の華やかな風味で口の中が満たされていきます。どこか耽美な味わいと形容したくなるのは私だけでしょうか。
けれど、そこは何年もの歴史を紡いできた和菓子。たっぷり散りばめられた白小豆と外郎生地の素朴な一面もしっかりと感じられ、エキゾチックかと思いきや着地点は紛れもなく「和」です。
甘酸っぱい爽やかな香りが満開!「檸檬と白桃」の、肉厚でジューシーな桃の果肉感と、ぷるんと弾ける外郎の食感はなかなか他に類を見ない水無月。時折舌先に触れる白小豆の素朴な味わいがアクセントに。
ただ甘いだけではなく、ところどころで見え隠れするレモン果皮のほろ苦さや清涼感が、フレッシュ且つ奥行きを演出。水無月を食べて「すっきりする」という後味の感想が漏れることはなかなかお目にかかったことはなく、むしろ初体験かもしれません。餡子としての小豆は食べられても、小豆の粒立ち苦手な方もいらっしゃるかと思います。そういった方にこそぜひ一度召し上がっていただきたいと思います。
小豆の赤で邪を払うことも大切ですが、五行の「金」である白小豆の白で「清潔」さを、「土」の黄色である檸檬で「感謝の心」を取り入れるという観点でみると、なかなかユニークな水無月だなと思いました。
こちらは本店のほか2023年6月28日~30日まで、京都高島屋さんでも購入できるそうです。
<京都高島屋・2023年水無月特集>