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やっと政府が訂正:政治による風評被害に苦しんだ夜の繁華街

木曽崇国際カジノ研究所・所長
(写真:アフロ)

最初の風評被害の発生から約1カ月。やっと政府が自粛対象とする業態に対する表現に関して訂正をしました。以下、時事通信からの転載。

「接待伴う店」はキャバレー 政府が業態明確化

https://www.jiji.com/jc/article?k=2020060300760&g=pol

新型コロナウイルス感染拡大のリスクがある場所として例に挙がる「接待を伴う飲食店」について、政府は3日、菅義偉官房長官の記者会見などの際に「キャバレー」「ナイトクラブ」といった形で業種を具体的に示すことにした。「接待に使う飲食店」と混同される、として明確化するよう関係者から求められたため。

上記記事では、政府の「基本的対処方針には、これまでクラスター(感染者集団)が確認された場所として『繁華街の接待を伴う飲食店』とする記述があり、政府関係者もこの言葉を多用」などと解説されていますが、本当はそれどころの騒ぎでは無かったのが実態。4月11日に行われた首相会見においては、全国の自粛対象となる業態として「接待」ではなく「繁華街の接客を伴う飲食店」という表現が使用され、夜のサービスを伴う飲食業界全体が政治による風評被害に苦しんできました。以下、当時の首相会見を報じた毎日新聞からの転載。

「繁華街の接客を伴う飲食店」全国で利用自粛要請へ 首相、11日午後表明

https://mainichi.jp/articles/20200411/k00/00m/010/073000c

政府は11日午後に開く新型コロナウイルスの感染拡大に関する政府対策本部で、「繁華街の接客を伴う飲食店」への外出自粛要請を全国に拡大することを決める。クラスター(感染者集団)が生じている可能性があるキャバレーやナイトクラブなどでは、利用者や従業員が感染しても経路を追いにくいケースが多いため、全国に利用自粛を呼びかける。

なぜこのような事が起こったのかは非常に明白で、政治も行政も夜の繁華街における様々な業態を規制している風営法に対して圧倒的な不理解であったこと。「接客」と「接待」は法律上全く違う意味ですし、また法律上の「接待」と一般用語として使われる「接待」の意味も全く違う。詳細は以下動画にまとめていますが、私はこの表現の違いを修正すべきだと当初から幾度となく訴えて来ました。

この政府が犯した大きな間違いに基づいて、全国自治体の中では未だ繁華街の飲食店に対して必要以上の営業自粛要請を出し、また消費者に対してそれらを利用することがない様に発信している都道府県が多数存在します。各都道府県はいち早く自粛対象となる業態の記述を見直し、現在発生している夜の繁華街に対する風評被害を払拭すべきです。これは、政治と行政の風営法に対する圧倒的な不理解によって生じた、特定業種に対する風評被害であると明言しておきたいと思います。

国際カジノ研究所・所長

日本で数少ないカジノの専門研究者。ネバダ大学ラスベガス校ホテル経営学部卒(カジノ経営学専攻)。米国大手カジノ事業者グループでの内部監査職を経て、帰国。2004年、エンタテインメントビジネス総合研究所へ入社し、翌2005年には早稲田大学アミューズメント総合研究所へ一部出向。2011年に国際カジノ研究所を設立し、所長へ就任。9月26日に新刊「日本版カジノのすべて」を発売。

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