旧統一教会への過料に関する文化庁の見解 宗教2世「高額献金による家族被害は継続している」
9月7日に立憲民主党を中心とする「統一教会」国対ヒアリングが行われ、文化庁宗務課長から旧統一教会への過料を科すことについての説明がありました。
「このたび宗教法人審議会にご意見をお聞きして、地方裁判所に対して、過料の通知を行うことになりました。本件通知は、7回にわたり行った報告徴収に対して、500以上の質問を行いましたが、2割にあたる100以上の項目の報告がなされませんでした。7回の報告徴収は宗教法人審議会の委員に集まって頂いて決めた基準、それに基づいて(宗教法人法)第81条の解散命令に該当する疑いが認められるということで権限を行使したわけでございます。81条の1項の『法令に違反する』には、あらゆる法令が含まれていると認識しておりまして、宗教法人が民法に基礎を有する公益法人の一形態であって、その民法の不法行為を排除するという趣旨はないだろうと考えております。手続きとしても、7回のすべての報告徴収を行うにあたりまして、法律にのっとって宗教法人審議会に諮問をして、毎回全会一致で相当であるという答申を受けて行ったもので、適正な権限行使に対して報告を拒否した。なかには再度質問をしても報告拒否を重ねるものもございましたので、違反の程度も軽微ではなく、過料を科すのに相当なものであると考えています」
旧統一教会は自らにやましいところがないならば、すべての質問に対して誠意をもって答えるべきで、もし疑われる部分があるとすれば、しっかりと真実を明らかにして払拭すべきでしたが、それがなされませんでした。しかも文化庁は「違反の程度も軽微ではなく」としています。本来ならば、教団は真摯に回答拒否の姿勢を反省すべきですが、先日の教団側の会見では「裁判では全面的に争う」としており、国との対立はさらに深まるものとみられています。
誠意が伝わらない団体
この状況について、元妻が信者でそのもとで育った長男が亡くなるという大変つらい体験をされている橋田達夫さんは、文化庁からの100項目以上の質問に回答拒否をするのは、悪質な団体であると指摘します。
「誠意が伝わらない団体、宗教法人格が与えられていて、税制優遇を受けているのはおかしい。早く解散請求をしてほしい。解散させない限りは、今後も被害がずっと継続してしまうと思っています。自分は顔を出して話していますが、誹謗中傷、脅迫がいっぱいあります。みんな(被害者)が顔を出して統一教会を批判それができない状態であることを感じています。弁護団と一緒に、今、集団交渉をやらせて頂いていますけれども、統一教会側の反応はありません。解散させない限りは、被害者は救済されません」と訴えます。
全国統一教会被害対策弁護団の見解
9月6日付で、過料に関して、全国統一教会被害対策弁護団は、団長談話を出しています。阿部克臣弁護士はその言葉を引用しながら、次のように話します。
「統一教会が質問に回答しなかったことは、意図的に真実の解明を妨げたものといわざるをえません。統一教会が過料に処せられるということは、当然のことです。統一教会には過料の通知がなされた意味を真摯に受け止めて、自らが生み出した被害を認めて被害者に対して誠実に対応することを改めて強く求めます。このような不誠実な対応は解散請求の一根拠となりうる。文化庁にはすみやかに解散請求を行って頂きたいというのが、(弁護団としての)内容です。質問権には強制力はありませんが、宗教法人法78条の2には法的な根拠がありまして、過料という行政罰が科せられているというものになります。その意味では、公益法人である宗教法人に対しては調査に協力する法的な義務があります。具体的にいえば、真実解明の義務などの法的な義務を負っている。その義務に対して、それを果たさず、不誠実な対応をした以上は制裁が科されるのはもちろんのことで、解散請求の根拠ともなりうるものと考えます」
教団の「継続性」は今も続く
解散命令請求の要件は、組織性、悪質性、継続性を要件です。宗務課長は「その情報を積み上げている状況で、継続性の意味するところは、過去の一時期に悪いことがあったというだけではなく、現在に至るまでそれが続いていること」としています。
旧統一教会二世の鈴木みらいさん(仮名)から、継続性などの指摘がありました。
鈴木さんは、文鮮明のマッチングをうけた両親が1億6千万円もの高額献金をしたために、十分な養育を受けられませんでした。親の献金額を知ったのは事件後で親と話し合い、一度は全額返金請求をしましたが、教会の指定額3千万円で親が合意をしてしまい、現在は絶縁中で家庭崩壊しています。
鈴木さんは、悪質性について「家庭崩壊している信者家庭が多い」といいます。「私は献金返還請求時から『娘より信仰』を取ると言われましたが、その理由には教義への絶対服従があるからです。子供より教会の教義を取る親が多いので、家庭崩壊に至る」といいます。
継続性、組織性については「私の親は高額献金をした後に、さらに借金をして430代先祖解怨祝福(地獄にいる先祖を結婚させることを意味する)を完了しています。これは韓鶴子総裁の命令であったために完了しています。メシヤには絶対服従なので、完了しようとする信者は多くいたと思います」そして「韓国本苑(HJ天宙天寶修練苑)HPには、現在も公示され続けている」と、高額献金の継続性を指摘します。
430代の先祖祝福完了に関する指示事項
「公示 天宙清平修練苑分苑と430代の先祖祝福完了に関する指示事項」には、「指示」とあります。これは教団(神様)の命令として、絶対に守らなければならないものとなります。
鈴木さんは「真の父母様は、2018年9月20日、天正宮博物館で『2020年の紀元節までに全世界のすべての統一家の食口たちが430代先祖解怨と先祖祝福を完了して天譜苑(天国に入れる人の名簿)に登載されなければならない』と特別な指示をされました。これはメシヤ自身が言っているので、非常に組織性があると思います。現在は証拠が残らないよう集金するために、先祖解怨・祝福は韓国の修練所に参加する形で献金を直接もっていくように指示が出ている」と話します。
信者らに示されている資料を示します。
「2023年8月18日『文鮮明天地人誠の父母天宙成和11周年記念 孝情天寶特別大役事』のご案内の『6.韓国本苑で参加する方への案内』には『予約の内容に対する献金は振込みせず、直接日本円を持参して受付をするようにしてください。日本円以外の貨幣での受付は不可』とあります。また『外国為替法による制限があるので、予約は1人当たり100万円未満を限度としてください。※海外へ100万円以上の現金を持ち出す場合は、税関に申告の義務があります』」となっています。
鈴木さんは「今は日本の教団本部から、韓国の教会には送金していないとしていますが、こうした形で信者らに韓国にお金を持って行かせて、入金させる形をとっている」といい「コンプライアンス宣言以降、韓国へ婦人部長から2019年に親と2世が110万円ずつ、教会職員である婦人部長から手渡されて、他の信者の先祖解怨祝福のお金を韓国に持っていたという証言もあります。また今年の2月以降、先祖解怨祝福の献金額は安くなっていますが、数百万円以上はかかります。韓国への献金を組織的に継続しています」と話します。
「神様が決めた人以外を好きになると地獄に落ちる」
旧統一教会元2世信者のデビルさんはVチューバーとして、旧統一教会の問題に若い世代にも関心をもってもらおうと活動しています。しかしネットでは、信者らが一般人になりすましての誹謗中傷も過激になっており、深刻な状況だとも話します。
デビルさんの母親は現在も信者として活動して、信者家族として、多額の献金被害をうけています。デビルさんは、子供の頃から母親から「神様が決めた人以外を好きになると地獄に落ちる」と言われ続けて、誰にも相談できず、恋愛、結婚に恐怖を感じ、自分の存在自体に罪悪感をもっていたといいます。ある時、彼女に初めての彼氏ができたことが母親にバレてしまい「お母さんを裏切ったのね」といわれ、母親は暴れて家の中がめちゃくちゃになり、その後、賃貸アパートを1棟、丸ごと売って全額献金してしまったそうです。
「母は『あなた方はいずれ真実がわかる。私は間違ったことはしていない』の一点張りで、話になりませんでした。大学進学を諦めて、働き始めました。ある時『身分証明書を貸してほしい』と言われて、渡したところ、私と同じ位の女性に、母の娘になりすまさせて借金をしていました。母親は日常的に家族に対して、嘘をつきます。夫の稼ぎ、生命保険や遺産などを献金していきました。家族が家族を騙します。しかし、騙しても、結果的にその人が天に徳を積んだことになるので、後で感謝されるという思いを持っています。教団側は「お母さまが信仰に基づき献金されたわけですから、ご納得されているはず。ご家族から返金と言われましても、ご本人が拒否していますので」といわれて、返金が不可能だといいます。
高額献金による家族被害が継続
今も多くの信者の家庭被害・崩壊が続いており、鈴木さん、デビルさんの家庭に対しても、教団は何も適切な指導をしておらず、高額献金による家族被害が継続しています。ただ高額献金を目に見える形でしなくなったからそれで「良し」とするのではなく、過去の献金被害の回復をしないことで、被害は継続していると考えなければなりません。
デビルさんは最後に「この統一教会の問題は、私たちの代で終わらせなければなりません。一刻も早く解散命令請求をよろしくお願いします」と訴えます。
鈴木エイト氏は「9月から、冬にかけて切れ目なく韓国の研修会のスケジュールが組まれていまして、2世信者らに韓国にお金を運ばせる懸念があります。40年、50年前から教団の実態は変わっていない。批判者に対して、組織的な恫喝をしてきた。悪質な誹謗中傷が継続している。継続性、組織性、悪質性は続いている。過料の通知に対して、国に対しても敵対姿勢で牙をむくような姿勢は今も続いている」と継続性を指摘します。
今回の過料については、適正な法的手続きを踏んだものです。しかしその措置に対して、教団側は全面的に裁判で争っていくという姿勢を見せていますが、それをくつがえせるような有力な一手ははっきりと示されておらず、10月にむけての解散命令請求のカウントダウンが始まったとみてよいかと思います。