ロペスと互角に戦った中谷正義がロマチェンコとの4団体統一戦を大予想
10月17日ラスベガスでライト級4団体統一戦が行われ、3冠王者(WBC、WBA、WBO)のワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)と、IBF王者テオフィモ・ロペス(アメリカ)が対戦する。
日本人で唯一ロペスと対戦した経験を持つ、元OPBF東洋太平洋ライト級王者中谷正義(31)に今回の試合について話を聞いた。
ロペスと互角の戦いを見せた中谷
昨年7月、中谷はロペスとIBFライト級挑戦者決定戦で拳を交えた。
試合では、長身でリーチが勝る中谷が無敗でKO率8割を超えるロペスの強打を完封し、互角の戦いを見せた。
結果は3-0の判定で中谷が破れたが、SNSではドローだったとの声もあった。
それまで連戦連勝で圧倒的な強さを見せていたロペスが、最も苦戦した試合と言っても過言ではない。
この試合でロペスは挑戦権を獲得し、昨年12月にIBF王者のリチャード・コミー(ガーナ)に挑み、2回1分でKOで下し新王者になった。
そして今回、4団体統一王者戦でロマチェンコと対決する。
当初は今年の4月ごろの予定だったが、新型コロナウイルスの影響で延期となっていた。
ロペスと対戦について
中谷にロペスとの試合を振り返ってもらった。
「もっとパンチが当たるかと思っていて油断していました。攻撃よりディフェンスがうまくて自分のペースで戦えませんでした」
中谷はライト級では高く身長182cm(リーチ182cm)に対し、ロペスは173cm(リーチ174cm)。
長身の中谷がやりづらさを感じるほど、ロペスとの距離が遠くパンチが当らなかったようだ。
「クリーンヒットをもらいませんでしたが、ガードの上からでもパンチはありました」
試合ではお互いにパンチをモロにもらうシーンは少なくハイレベルな戦いだった。
「今まで戦った中で最強の選手でした。でも、もう一度戦えればチャンスがあると思います」
中谷は前回の敗戦の要素に、アメリカでの試合に慣れていなかった事も上げていた。
「全てが初めてのことでした。レフリーのやり方も違い、日本でできたことが海外でできませんでした」
初めての海外の試合となると、想定外の事も起こるだろう。
時差の対策や減量の調整、試合でのジャッジのやり方なども微妙に違う。
世界と日本人に差はない
実力的には、海外のトップレベルと全然差がないと話していたので、あとは経験だろう。
ライト級は選手層が厚い階級で、日本人が勝ち上がるのは難しいといわれている。
中谷は日本を立つ前に、元世界王者で大学の先輩にあたる元WBA世界スーパーウェルター級暫定王者石田順裕氏(45)からアドバイスをもらっていたようだ。
「向こう(海外)の選手は強いという先入観も持っていしまい、やる前から気持ちで負けている。でも、世界と日本人に差はないし十分に戦える」
海外でも活躍した石田さんが「世界と日本に差はない」と言ってくれていたのが大きかったようだ。
試合予想について
今回の試合について「自分に勝利したロペスに勝ってほしいと思いますが、やはりロマチェンコが有利でしょう」と予想した。
五輪二連覇で世界3階級を制覇しているロマチェンコは、現役王者の中でも最強と言われている。
高い技術力を持ち、圧倒的なパフォーマンスで対戦相手が戦意を喪失し棄権するほどだ。
「ロペスが勝つには、前半のKOにしか勝機はない。試合が長引くほどKOされる可能性が高くなる」と試合を分析した。
若さと勢いがあるロペスのパンチが前半に入れば、面白い展開になるだろう。
両者ともに久しぶりの試合となるので、試合になれるまでの前半が見どころとなりそうだ。
中谷が言うように後半になればなるほど、技術・経験値が高いロマチェンコが有利になる。
「試合をやったロペスが4団体戦をやるので、複雑な気持ちはありますが楽しみです」
今回の試合について少し悔しさも滲ませていた中谷。昨年に引退表明したが、まだ心の奥にボクサーとしての気持ちが残っているかもしれない。
ボクシング史上、未だ4人しか達成していない4団体統一王者になるのはロマチェンコか、ロペスか、見逃せない試合となりそうだ。