ウルトラマラソン中の悲劇 ランナー21人が亡くなった事故はどんな天候下だったのか
悪天によりマラソンランナー21人が亡くなるという悲劇が起こりました。22日(土)中国北西部の甘粛省で行われた、山を100キロ走破するウルトラマラソンの大会中の出来事でした。
この悲劇の舞台となった黄河石林は、黄河が削ってできた奇岩が、まるで林のように立ち並ぶ、壮大な景色が広がる観光名所です。
事故の経緯
22日(土)朝9時、晴天のなかマラソン大会が始まりました。その時の映像を見ると、Tシャツや短パン姿の薄着の選手が目立ちます。しかしその3時間後、天気が急変します。このレースでもっとも過酷な地点といわれる標高2,000メートル近いエリアに選手たちが到達したころ、突然の強風、冷たい雨、ひょうなどが襲いかかりました。
多くが体調不良を訴え途中棄権、また視界不良により172人がコースを外れ行方不明となりました。レースは午後2時に中止になっています。
夕方には1,200人の救助隊が駆け付け、ランナーの捜索にあたりました。土砂崩れも起きたため、作業は難航。結局151人が無事救助されるも、21人が帰らぬ人となりました。多くが低体温症にかかっていたもようです。
死亡者の中には、ウルトラマラソンの王者や、2019年の北京五輪でパラリンピックの聴覚障害者マラソンで優勝した選手もいたと報じられています。
急な温度差
どのような天候の変化が起きていたのでしょう。事故現場から近い観測所での気象記録を見てみましょう。
午後になると雨が降り出し、北風も強まって、14時には気温が5度、17時には1度となって雪も降り出しました。
レースは標高の高い場所で行われていたので、このデータよりも低温、さらに強風であったことが推測されます。そのうえ参加者は薄着ですから、危険な状態であったことが容易に想像できます。
モンゴルでも大きな気温差
レースの行われる一日前には、事故の起きた甘粛省に近いモンゴルでも、急な天候の変化が起きていました。
たとえばモンゴルの首都ウランバートルでは20日(木)の気温が25.8度であったものの、翌21日(金)にはマイナス1.1度まで下がり、下の写真のように季節外れの雪も降ったようです。またバヤンデルガーという場所では、33.1度からマイナス0.2度まで下がったようです。
(↑ウランバートルの21日の降雪の様子)
レースの主催者は、悪天は予想されていなかった、と主張しています。しかし気象局は、前もって強風や雷、ひょうや大雨への注意を呼び掛けていたようです。そのため天候への注意を怠っていたと、主催者は非難を浴びています。