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新潟県は北陸か東北か、それとも関東甲信越か 気象庁では北陸地方東部で情報発表

饒村曜気象予報士
冬の新潟県の観光地のシンプル線画イラストマップ(提供:イメージマート)

新潟県の扱い

 新潟県は東北、北陸、中部、関東甲信越に入るなど、時と場合によって区分けが違います。

 国の行政機関としては、関東甲信越を管轄する地方支分部局(東京)の下に位置付けられることが多いのですが、北陸を管轄する地方支分部局(金沢)の下に位置付けられることも少なくありません。

【国の行政機関の地方支分部局】

財務省    関東財務局

経済産業省  関東経済産業局

林野庁    関東森林管理局

厚生労働省関東信越厚生局

環境省    関東地方環境事務所

農林水産省  北陸農政局

国土交通省  北陸地方整備局や北陸信越運輸局

気象庁    東京管区気象台

 また、福島県と新潟県の境に広がる尾瀬地方は、水力発電にとっては重要な場所であり、電力会社や電力関係の仕事は、新潟県と東北地方を合わせて、東北7県として扱われることがあります。

 仙台市にある東北電力は、北陸7県に電力供給をしていますが、最大の電力消費量は新潟県です。

北陸3県と新潟県の気象の違い

 気象庁の地方支分部局では、新潟県は東京管区気象台の下に入ります。

 そして、福井・石川・富山・新潟の各県を北陸地方とする予報中枢として、地方情報等の発表に入れています。

 ただし、新潟県と福井・石川・富山各県とは気象が違う場合があり、その場合は北陸東部と西部を分けて情報を発表しています。

 この分けて発表することになったのは、平成16年(2004年)頃からです。

 というのも、平成16年(2004年)7月18日の福井豪雨の時、筆者は福井地方気象台の台長で、その時に、福井県からの要望「新潟地方が発表している北陸地方情報は、新潟が中心の情報で福井県のことも触れて欲しい」を、気象庁本庁に上申したからです。

 新潟県で生まれ育った筆者にとっても、初めて体験した福井県の気象は、改めて新潟県とは違うことを感じていました。

 私が思っていた以上に、能登半島が気象に影響を与えていました。

 その上申が影響したかどうか不詳ですが、そのすぐあとから、北陸地方情報は、予測が可能な場合は、北陸西部(福井・石川・富山各県)と北陸東部(新潟県)に分けて発表するようになっています。

電力の50ヘルツと60ヘルツ

 日本は電力会社が10社あり、それぞれの担当地域が決まっています。

 そして、北海道電力、東北電力、東京電力が標準周波数50ヘルツで、北陸電力、中部電力、関西電力、中国電力、四国電力、九州電力、沖縄電力が60ヘルツで送電をしています(図)。

図 日本の商用電源周波数
図 日本の商用電源周波数

 これは、電気事業が始まった明治時代、関東ではドイツから50ヘルツの発電機を、関西ではアメリカから60ヘルツの発電機を輸入していたことが原因といわれています。

 それが現代まで根付いて、地域による周波数の違いを生みだしており、いまとなっては、どちらかに統一することは不可能になっています。

 筆者が若いころは、関東から関西に転勤すると家庭用電気製品が使えなくなるので買い替えるといったことが普通でした。

 しかし、現代の家庭用電化製品の多くはどちらにも対応しているので、神経質になる必要はなくなっています。

 ただ、猛暑などで電力需要が急増した時に、各電力会社で電気を融通するという話になった時には、静岡県の佐久間などにある周波数変換所で周波数を変換しないと融通できないという不都合が生じています。

 つまり、東京電力と東北電力は同じ50ヘルツなので容易に融通できますが、東京電力を中部電力では、50ヘルツと60ヘルツですので、変換装置の容量しか融通できないのです。

 新潟県は東北電力管内で、ほとんどの地域は50ヘルツですが、佐渡島は60ヘルツ、上越地方の糸魚川市と妙高市は50ヘルツと60ヘルツの混在地域です。

 ここでも、他とは少し違っています。

図の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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