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「時代のセンサー」としてのCMで、「物語」を感じさせる少女とは!?

碓井広義メディア文化評論家
筆者撮影

●新たな逸材として・・・箭内夢菜(やないゆめな)さん

CMには「時代のセンサー」のような機能があります。たとえば2年前の冬、永野芽郁さんがスキー場でアルバイトする女の子を演じていたCMについて、ある新聞のコラムで書きました。その永野さんを今、朝ドラ『半分、青い。』で毎日見ています。CMは時代の一歩先というか、半歩先を感じ取る、鋭いアンテナみたいなものなのです。

そしてまた一人、新たな逸材の登場かもしれません。雪が舞う森の中、ツリーハウスのベランダでレミオロメンの名曲「粉雪」を小さな声で歌っているのは箭内夢菜(やないゆめな)さんです。昨年、雑誌『Seventeen』のミスセブンティーングランプリを受賞しました。

彼女の持ち味は、美しさと親しみやすさの見事なバランスにあります。アイスクリームをひとさじ口にすると、ふわっと空中に舞い上がっていく夢菜さん。灰色の空と鮮やかな赤いワンピースの対比が印象的です。

かき氷とアイスの両方の良さをもつという新ブランド「蜜と雪」。その「ありそうでなかった」新感覚を伝えるには、「いそうでいなかった」透明感あふれる少女こそがふさわしいのでしょう。この箭内夢菜さんには、いずれ別の「物語」で再会しそうな予感がします。

●ひとりの女優として・・・長濱ねるさん

2016年4月、欅坂46はデビュー曲「サイレントマジョリティー」で、いきなりオリコン1位を獲得しました。同じ年の秋には、『徳山大五郎を誰が殺したか?』(テレビ東京系)でドラマデビューも果たしています。

この時、前記とは別の新聞の番組時評に「独特の湿度をもつ長濱ねるが要チェックだ」と書いたことを覚えています。ねるさんは、昨年末に出版された1st写真集『ここから』でも、少女と大人の女性を往き来する、絶妙な表情を見せていました。

今年の春だったでしょうか。そんなねるさんが渡邉理佐さんや渡辺梨加さんと一緒に、記者である綾野剛さんの取材を受けていたのが、ドコモのCM「ハピチャン」シリーズです。

「どうして携帯会社からハンバーガーをプレゼントされるのか」と逆質問する彼女たちに、じゃあ、もらいに行かないのかと綾野さん。すると3人は声をそろえて、「絶対、行きます」。って、行くんかい! しかも笑顔ではなく真顔。あくまでも淡々と、クールに答える様子が何ともおかしい。3年目を迎え、新たな「物語」が始まりそうなCMでした。

今度の日曜、7月8日の深夜1時05分から、日テレTANABATAプロジェクト『七夕さよなら、またいつか』が放送されます。

なんと、ねるさんの「ドラマ単独初主演」。日テレによれば、「究極のバーチャルリアリティ恋愛ドラマ」であり、「長濱ねる×鈴木おさむがスマホの時代に贈る、甘く切ない物語」なのだそうです。

まあ、どんな仕上がりになっているのかは、見てみなくちゃわかりませんが(笑)、とにかく、「女優・長濱ねる」の試金石となるかもしれないこのドラマ、オンエアを楽しみに待ちたいと思っています。

メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。1981年テレビマンユニオンに参加。以後20年間、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶大助教授などを経て、2020年まで上智大学文学部新聞学科教授(メディア文化論)。著書『脚本力』(幻冬舎)、『少しぐらいの嘘は大目に―向田邦子の言葉』(新潮社)ほか。毎日新聞、日刊ゲンダイ等で放送時評やコラム、週刊新潮で書評の連載中。文化庁「芸術祭賞」審査委員(22年度)、「芸術選奨」選考審査員(18年度~20年度)。

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