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台風が続く日本列島。音楽による『日本ニューオリンズ化計画』進行中

山崎智之音楽ライター
アラン・トゥーサン

10月11日に発生した台風26号は16日に伊豆諸島北部を通過。伊豆大島を直撃し、25人の死者と多くの行方不明者を出した(18日現在)。

さらに23日ごろには台風27号が西日本・沖縄に接近の可能性があり、気象庁は注意を呼びかけている。

例年と較べて、台風の上陸・接近回数だけを取り上げれば、決して多くはない。だが、豪雨や強風による被害の度合いは、例年以上のように感じるし、愛する者を失った人々の悲しみはいささかも軽減されるものではない。

そんな日本を元気にするために、ニューオリンズを代表するミュージシャン達が今秋、相次いで来日公演を行っている。

台風の町、ニューオリンズ

ニューオリンズは台風で知られる町だ。古くは1527年、パンフィロ・デ・ナルヴァエス率いるスペイン遠征隊がミシシッピ河で台風に見舞われた記録が残っているし、1915年のニューオリンズ台風では275人が死亡。1965年のハリケーン・ベッツィ、1969年のハリケーン・カミール、1992年のハリケーン・アンドリューなどカテゴリ4〜5(カテゴリ5が最大)の台風が何度となく町を襲ってきた。

2005年8月にはハリケーン・カトリーナによって、ニューオリンズの陸地面積の80%が水没するという大惨事が起きた。1,800人近くが死亡、都市部から農地までが台風の猛威に晒され、アメリカ経済全体が大打撃を受けている。

だが、壊滅的なダメージを受けながら、ニューオリンズの人々が毎回立ち直ってきたのは、音楽があったからだった。

ニューオリンズはアメリカの“音楽の都”として知られてきた。アフリカやフランス、キューバ、ハイチ系移民がさまざまな音楽を持ち込み、ジャズやブルース、ケイジャン・ミュージックやザディコなどあらゆる音楽がごった煮となったシーンは、郷土料理“ガンボ”を思わせる。歓楽街バーボン・ストリートは日が暮れると連日連夜お祭り騒ぎだし、毎年2月のマルディグラは世界最大級のカーニバルのひとつだ。

台風はニューオリンズの人々から住む家を奪い、経済に損害を与えた。だが、彼らから音楽の歓びと微笑みを奪うことは出来なかった。

日本を元気にするためにニューオリンズ音楽の巨星たちが来日

今秋、日本国民に微笑みを取り戻させるために、ニューオリンズ音楽の巨星たちが日本を訪れ、ライヴを行う。

9月末から10月初めには、ドクター・ジョンが来日公演を行った。ニューオリンズの重鎮であり、エリック・クラプトンやローリング・ストーンズとも共演するなど、ロックとの架け橋でもある“ヴードゥーの伝道師”。72歳と高齢でありながら、日替わりメニューで楽しませてくれた。TVCMソングでもおなじみの「アイコ・アイコ」や、ザ・バンドの映画『ラスト・ワルツ』で披露した「サッチ・ア・ナイト」などもプレイされた。

そして10月22日(火)・23日(水)ビルボードライブ東京、24日(木)ビルボードライブ大阪では、アラン・トゥーサンの来日公演が行われる。近年ではエルヴィス・コステロや中島美嘉とも共演するなど、幅広い活動で知られる彼だが、ドクター・ジョンよりさらに高齢の75歳ながら、そのピアノの腕前は艶気を増すばかり。ピアノ・ソロで奏でられるニューオリンズ音楽の神髄は必見だ。

また、イギリス人でありながらニューオリンズ音楽に魅せられたジョン・クレアリーは5月に続いて9月から10月にかけて長期のジャパン・ツアーを行っているし、雑誌『ブルース&ソウル・レコーズ』でもニューオリンズ特集が組まれて好評を得るなど、今、ニューオリンズが盛り上がっているのだ。

来年1月にはニューオリンズ・ファンクの担い手ファンキー・ミーターズも来日するなど、これからも音楽による日本ニューオリンズ化計画は続きそうだ。踊ってしまえばマルディグラ。ミシシッピ河の流れに、身も心も委ねよう。

●アラン・トゥーサン来日公演

10/22(火) 1stステージ開場17:30 開演19:00  /  2ndステージ開場20:45 開演21:30 ビルボードライブ東京

10/23(水) 1stステージ開場17:30 開演19:00  /  2ndステージ開場20:45 開演21:30  ビルボードライブ東京

10/24(木) 1stステージ開場17:30 開演18:30  /  2ndステージ開場20:30 開演21:30  ビルボードライブ大阪

問)ビルボードライブ

http://www.billboard-live.com/

音楽ライター

1970年、東京生まれの音楽ライター。ベルギー、オランダ、チェコスロバキア(当時)、イギリスで育つ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業後、一般企業勤務を経て、1994年に音楽ライターに。ミュージシャンを中心に1,300以上のインタビューを行い、雑誌や書籍、CDライナーノーツなどで執筆活動を行う。『ロックで学ぶ世界史』『ダークサイド・オブ・ロック』『激重轟音メタル・ディスク・ガイド』『ロック・ムービー・クロニクル』などを総監修・執筆。実用英検1級、TOEIC945点取得。

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