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女子セブンズ、悔しい8位

松瀬学ノンフィクション作家(日体大教授)

香港はアツい。悔しくなるほど、アツかった。日中の最高気温が30度。摩天楼に囲まれた香港島のスタジアムで、7人制ラグビー(通称セブンズ)の日本女子代表が過酷な一日を過ごした。

6月のワールドカップへの一里塚となる香港女子セブンズである。日本は1次リーグC組で初戦の香港に24-5で快勝したが、第2戦のカナダには0-54で大敗した。各組2位によるプレート(5-8位決定戦)の初戦の南アフリカには5-26で敗れた。

「すごく悔しいですね」と、浅見敬子ヘッドコーチは漏らす。「自分たちのやりたいと思ったラグビーができなかった。これまでシンプルに前に出るということをやってきたんですけど、ちょっと逃げたかな、という感じです。迷いがあったのかもしれません」

最後の7・8位決定戦では、ライバル中国に5-14で敗れた。参加12チーム中の8位で終わった。前半失った2つのトライは、敵陣でのラインアウトのミスとノックオンからつながれたものだった。ミスはともかく、その次のカバーリングが遅すぎる。

タックルはみな、よくいった。主将の中村知春や、風邪で体調不良の鈴木彩香ら、それぞれがからだを張った。終了直前、鈴木陽子から鈴木彩香とつなぎ、右隅に意地のトライを返した。よくぞ、とった。

確かにけが人続出で、チーム事情はよくなかった。浅見HCの言葉を借りると、「チャレンジングなメンバー」となる。だが、こういう時こそ、チームの成長具合がよくわかる。チームとしてどう機能するか、そこが勝敗を左右する。

日本女子の目指すスタイルは、アタックではテンポをはやく、リズムよく、クイックでボールをつないでいく攻めである。運動量と、立ち上がりや責任ポジションに戻るスピードがカギを握る。香港戦はよかった。でもカナダ戦では何もできなかった。なぜか。接点で圧倒されたからである。

もちろんカナダや南アフリカとはからだのサイズ、身体能力が違い過ぎる。でも、これは言い訳にはできない。では、どこで勝負するのか。ずばりスピードである。ランのスピードはともかく、フォロー、サポートのスピード、パスのスピード、そして声掛けのスピードである。

この日は、フォロー選手の声の量が少なく、タイミングも遅かった。スタンドからは、そう見えた。だからボールを持った選手が迷ったのではないか。これがないとチームは混乱するものだ。

できれば、フィジカルが強い相手にはポイントは少ないほうがいいに決まっている。極端にいえば、当たるな、ぶつかるな、ポイントをつくるな、だろう。でも、やはりタックルされる、ポイントは形成される。その際の倒れ方が甘い。サポートが遅い。何度、相手にターンオーバーされたことか。

もっとも中国との差は確実に縮まっている。日本のメンバーが万全なら、この日の中国には勝てた。中国は「縦」の動きや想定内のプレーには強い。でも「横」のスピードや速攻、崩しには驚くほど脆い。

浅見HCは手ごたえも感じている。「まったくこう、ネガティブなカタチでは終わっていません。チーム全体が成長しています」と。

来週はワールドシリーズの中国大会(広州)に参戦する。最後の中国戦で負傷した谷口令子、横尾千里の状態が気にかかる。これからはチームのコンディショングもより大事となってくる。いまが、リオデジャネイロ五輪に向け、階段をひとつ、もうひとつ上のステージのぼるための「試練」の時である。

【「スポーツ屋台村」(五輪&ラグビー)より】

ノンフィクション作家(日体大教授)

早稲田大学ではラグビー部に所属。卒業後、共同通信社で運動部記者として、プロ野球、大相撲、五輪などを担当。4年間、米NY勤務。02年に同社退社後、ノンフィクション作家に。1988年ソウル大会から2024年パリ大会までのすべての夏季五輪ほか、サッカー&ラグビーW杯、WBC、世界水泳などを現場取材。酒と平和をこよなく愛する人道主義者。日本文藝家協会会員。元ラグビーワールドカップ組織委員会広報戦略長、現・日本体育大学教授、ラグビー部部長。著書は近著の『まっちゃん部長ワクワク日記』(論創社)ほか『荒ぶるタックルマンの青春ノート』『汚れた金メダル』『なぜ、東京五輪招致は成功したのか』など多数。

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