『コロナ禍を超えて私達は戻ってきたと感じる埼玉スタジアム』浦和vs鹿島【浦和レッズ川柳試合レビュー】
■伝統の一戦らしい独特の雰囲気
これはもう、久しぶりの感触だな。
日曜昼、相手はアントラーズなので早めに行こう、と埼スタに到着したのが試合開始1時間半前。これもしばらくぶりに「今日は自由席は満席」と書かれたプラカードを見た。
いつもの南側自由席も、ほぼ階段通路に沿った端っこの席は埋まっていて、ようやく一つ残った席に座る。子供連れのファミリー、特にまだ小学校に上がってないような子供を連れてきている親がやたらと目につく。
また、アントラーズサポの勢いがすごい。私がスタジアムに入ったくらいから、ずっと声出し応援してる。たぶんレッズ相手の声出しが楽しくてしょうがないのだろう。また、レッズ側も、北側ゴール裏のコールにつられて、南側でも4歳か5歳くらいのコが「ウラワー! レッズ!」ってやったりしてる。
フルパワー 鹿島のサポと 子供たち
相手がアントラーズだと、コロナ前はだいたい必ず4~5万は集まったが、きょうの人出は、その時期に戻った感じで、いつもはそんなにいないバックアッパーもけっこう来てる。
先発メンバー発表のころは、もう思い切りヒートアップしてて、場内放送の声が良く聞こえない。おそらく「鈴木優磨」あたりでレッズ・サポの大ブーイングが聞けるだろうと期待していたのに、コールが聞き取りずらく、タイミングがすっきりと決まらなかった。
ただ、さすがに興梠の紹介の際の、アントラーズサポのブーイングは、近くにいたのでよく聞こえた。この興梠ブーイングで、ますます「浦和・鹿島」戦に向かうテンションが盛り上がって来た。
鹿島戦 飾る興梠 ブーイング
■リンセンがやっぱり心配
試合についていったら、前半は、一番目立ったのは西川。ということはほぼ攻められていたことになる。南側自由席の方に攻めてくるはずのレッズは、あんまり攻めて来ない。ただリンセンには2、3回チャンスは来てた。
どーも、やっぱりリンセンとレッズは相性が運命的な意味で悪いのかもしれない。テクニックだけ見たら、オシャレな横パスだせるみたいに、たぶんレベルの高い人なのだろう。それなりにポジショニングもよさそう。ところが点だけはなかなか入らない。
ここで1点決めれば、周囲の評価も、ましてやレッズサポの思い入れもぜんぜん違ってくるのに。アントラーズ戦で、しかもスコアレスの展開での1点となったら、他の試合の3~4点分だから。
マッチング リンセン・レッズは 中の下か
厳しい。後半、いきなりスコルジャはリンセンを岩尾にかえてきた。得意の「先発もサブも実力かわらないから、どんどん早めに投入しちゃうぞ」作戦だ。残念ながら、きょうもリンセン無得点。
それで65分くらいに、またカンテとモ―ベルグを出して、先発陣ほぼ入れ替え作戦にも着手。前半押されてた分を押し返し、攻勢に出る意図がはっきりする。
最近、すっかり魅せられてしまっている「酒井ののぼりとくだり」。きょうもたっぷり味わわせてもらった。ことに後半だ。全力疾走はそんなにしない。そのくせ、攻撃ではちゃんと前に来てゴール前の右サイドからクロスをあげ、守りとなると、後ろに戻ってガートを固めて、ゴール前でも相手ボールを跳ね返す。前と後ろを行き来する「近道」を知ってるみたい。
あるのかも 酒井専用 近道が
試合は、いってみれば相撲でいうがっぷり四つ。互いに寄って土俵際に持っていこうとするが、寄り切るほどの決定力はない。後半も88分頃、スーッと西川の前を通り抜けるアントラーズのパスが合ってヒヤッとしたり、アディショナルタイムの、カンテのもうあとわずかの惜しいヘディングシュートでガッカリしたり、お腹いっぱいにはなれそうな試合だった。もう、途中から、ちょっと「きょうはドローでいいか」と勝手に納得してしまったり。
■日常が遂に戻ってきた
最終的に4万5千あまりか。これだけ多くの人が、思いっきり声を出して自分たちのチームを応援する姿は、やはり美しい。シミる。かつては、こんなスゴいことを当たり前らやってたんだと、痛感させられる。特別な試合であるACL決勝より、かえって本来、ただのリーグ戦の一試合であるはずのきょうの方が、より強く感じる。スコアレスドローでも、これ見られたんだから、まあいいや。
コロナ禍を 越えて激闘 スコアレス
試合終わって、広場に出たら、なぜか行列の店が出るくらいキッチンカーはそこそこ繁盛していた。珍しい。今までは試合が終わったら足早に帰っていく人たちばかり目立ち、キッチンカーもほぼ店じまいの状況だったのに。
集客の多さとともに、試合終了が7時ごろの、ちょうどご飯時だったのもあるだろう。それにファミリー層か多かったから。
7時終わり キッチンカーは 稼ぎ時
動画:ニューヒーロー・早川!浦和レッズ川柳2023【4月編】
山中伊知郎
1954年生まれ。1992年に浦和に引っ越して来て、93年のJリーグ開幕時にレッズのシーズンチケットを取得。以後31年間、ずっとシーズンチケットを持ち続け、駒場、ならびに埼スタに通う。2021年より、レッズ戦を観戦した後、「川柳」を詠むという「レッズ川柳」を始める。現在、去年一年の記事をまとめた単行本『浦和レッズ川柳2022』(飯塚書店)が好評発売中。代表を務める「ビンボーひとり出版社」山中企画では、昨年9月、お笑い系プロダクション「浅井企画」の元専務・川岸咨鴻氏の半生を追った『川岸咨鴻伝 コサキンを「3億年許さん」と叱責した男』をリリース。11月上旬には『タブレット純のローヤルレコード聖地純礼』も発売。今年4月には、漫才協会在籍30年の浅草芸人・ビックボーイズ・なべかずおが半生を振り返る『たまらんぜ! 芸人人生七転び八転び』を出す。