『どこへ行く ピンチとチャンスが らせん形』浦和vs広島【浦和レッズ川柳試合レビュー】
■31年のホーム通い始まって以来の出来事
いつも通り、埼スタの南側自由席のバックスタンド寄りに席をとったら、いきなりビックリさせられた。何と場内係員が、
「こちら側の壁にハチの巣があります。ご注意ください」
と叫んで回っているのだ。おいおい、こりゃタダゴトじゃない。スズメバチとかだったらエライことじゃないか!座っていた観客の多くがあたりを見回したが、私を含めて、どうもハチの巣らしきものは見つからず。しかし、Jリーグスタートから31年通い続けて、こんな注意を耳にしたのは今回が初めて。もっとも本当にハチが飛んできて観客を刺すような大騒ぎだが、それはなかったので、いつの間にか、ハチの巣の話も忘れてしまった。
それより、残り3試合になりながら、まだJ1残留が決まっていないチームの現状の方が心配だ。
ハチの巣を 駆除する前に 勝ち点3
お客さんは集まっている。特にアウエー席のサンフレッチェサポは本拠地も遠いのに上の方までビッシリ埋まっている。試合開始30分前でも、すでに応援の声はマックスに近い。そりゃそうだろう、優勝かかってんだから。しかもこの期におよんで、リーグ戦は2連敗。サポーターが気が気じゃないのは、想像できる。
■定石通りの展開へ持ち込む
試合開始とともに、攻めるのは一方的にサンフレッチェばっかり。ほとんど南側のゴールには来ないで、北側のほうばっかりでゲームが進む。それでも失点ゼロだったのは、DFの力というより、西川の影響が強い。いれかわりたちかわり放たれたシュートは10数本。それをまあハジいたり、キャッチしたり、とにかくゴールには入れないナイスセーブの連続。これはもう西川のワンマンショーだ。
秋空に ナイスセーブの 乱れ打ち
打っても打っても点が入らないサンフレッチェの選手のたちのイラダチ、なんとなく伝わってくる。
こういう時は逆に、攻める側にフッと心のスキが生まれて、ずっと責められている側に思わぬチャンスが訪れるのはよくある話。まさにその定石通りの展開というべき一瞬がやってくる。パスが前に飛び出してきた関根とピッタリ合って、関根はGKと一対一。ところが、「これは決めてくれるだろ」となったところで、見事にシュートミス。ありゃりゃ、せっかくやっときたチャンスなのに、これをつぶしてしまうのか、とガッカリ。
が、さらにストーリーは続く。ほとんど前と同じような流れでパスが飛び出してきた松尾に合ったところで、また一対一。これはちゃんとゴール。
西川ですよ。西川のファインセーブのお膳立てがあったからこそ、立て続けのチャンスも生まれたのだ。あのゴールのアシストは関根でも、西川にもアシストポイントあげたいくらい。
アシストを 関根とともに 西川に
後半になると、ほぼ攻守は五分五分といった感じで、両チームにだいたい同じくらいのチャンスが巡ってくる。ただ、レッズも相手GKの大迫がファインセーブしたり、シュートがバーに当たったりで、なかなか追加点は取れないし、サンフレッチェも決められない。
イメージとしては、らせん階段をグルグル回っているみたいで、結末がちっとも見えて来ない。
どこへ行く ピンチとチャンスが らせん形
その流れが止まったのが、レッズに2点目の得点だ。松尾のキックが、まさになんかの拍子に角度が変わってゴールに吸い込まれる。南側からは遠いゴールで、私の周囲の観客も、いったい何が起きたのか、よくわからなかった。「オウンゴールかな」「松尾のシュートがそのまま入っちゃったか」とオーロラビジョンで見て、ようやく「リンセンが触っていた」のを知る。なかなかゴールが決められなかったリンセンに突然訪れたラッキーだったか。
ラッキーが 頭をかすめる ブライアン
もうこうなると、きょうの勝利、つまりはJ1残留決定はほぼ確定。とはいえサンフレッチェの攻撃は決して衰えたわけではなく、何度も相手のシュートミスで救われ、また西川のナイスセーブもありの無失点。終了ちょっと前には、原口元気の復帰後初得点もあって、レッズ側はちょっとした「お祭り」状態だ。
最終的に3-0の、やや一方的なスコアになったものの、実際に観戦した人間としては、せいぜいうまくいって引き分け、負けてもおかしくない内容だった。終始、わたしにとってのヒーローは西川だね。GKが試合に与える影響力の強さを、これほど感じさせてくれることはなかった。快勝しての帰り、ハチの巣のことはまったく忘れていた。
ハチの巣を ナイスセーブが 吹っ飛ばす
動画:『雷雨と監督交代の夏』浦和レッズ川柳2024【7月、8月、9月編】
山中伊知郎
1954年生まれ。1992年に浦和に引っ越して来て、93年のJリーグ開幕時にレッズのシーズンチケットを取得。以後31年間、ずっとシーズンチケットを持ち続け、駒場、ならびに埼スタに通う。2021年より、レッズ戦を観戦した後、「川柳」を詠むという「レッズ川柳」を始める。
代表を務める「ビンボーひとり出版社」山中企画では、どん底地下芸人から中野区議会議員に転身している井関源二さんの単行本『井関が、中野区から日本を変える』と、元放浪少女で、群馬県・沼田の市会議員に転身している今成あつこさんの『日本の洗濯は沼田から!』をリリース。11月16日には、沼田で井関さん、今成さんと、元お笑い芸人で西東京市議の長井秀和さんをまじえ、『地方議員大集合! inぬまた』というトークライブを開く。