『遅い秋 PKだって 勝ちは勝ち』浦和vs柏【浦和レッズ川柳試合レビュー】
■いつもと違った北ゴール裏
雨が降るんだか降らないんだかわからないような、どっちつかずの天気。超満員の路線バスで浦和美園まで行って、またそこから歩くコースはキツいので、「雨降ったら、降ったでいいや」と開き直って自転車で埼スタに向かう。幸い、雨にはあたらずに行けた。
いつの間にかこの試合、J1残留争いの「裏天王山」になってしまった。まさかレッズが16位、レイソル17位で雷雨中止のやり直し試合を迎えるとは。
試合開始1時間前。すでにレイソルサポはハイテンション。今日の試合の重要性は当然わかってるから。
気が付けば 赤も黄色も 土俵際
先発メンバー発表で、レイソルの中でレッズサポのブーイングが大きかったのは「井原監督」。まだまだ細谷くらいじゃダメなんだな。レッズ側はリンセンとグスタフソンが先発。北側ゴール裏のレッズサポ、きょうはあえて選手入場で旗を振らず、拍手、声援で選手たちを迎える。これもまた「きょうは頼むぞ」という決意表明の仕方なのだろう。かえって凄味がある。
旗振りも なしで迎える 七時半
平日夜の割にお客さんも多い印象で、3万超えたかと思いきや、あとの発表は2万6千。
それでもバックスタンドなどは、そこそこいっぱいだった。
■決戦らしい緊迫した展開
試合が始まって、さっそく展開されたのが、いつも通りのゴールの周りには来るけれど、そこでボール回しをするばかりで、なかなか中に切れ込んだりシュートを放ったりできないシーンの連続。南側自由席の私たちも、身近でその様子を見ているのでやきもきする。
レイソルもレイソルで、決め手のない攻撃が続く。
これを、互いにスキを見せない緊迫した戦いとみるか、下位同士の決め手のない攻防と見るかは、いろいろだろう。私は「スキを見せず緊迫した、下位同士の決め手のない戦い」という、両方が合体した試合と感じた。
そりゃ、緊迫はする。1点とって先制できるかが天地の違いなのだから。両チームとも勝ち点1で満足できる立場じゃない。一、二度レッズもチャンスは作ったもののレイソルDFに跳ね返され、やや不安なレッズDFも、とりあえずボロを出さない。
またやるか ゴール前でも パスサッカー
エンド変わった後半は、レイソルにゴール前まで攻めて来られる場面がやたらと目立つ。どうにか最後のところで止めている感じ。
渡邊凌磨は相変わらず活動量がハンパなく動き回るものの、それが得点につながる匂いはなかなかしないし、大久保もドリブルで鮮やかに切れ込んでくる、なんてこともほぼない。CKでも、あんまり背の高い選手もいないし、ゴールへの期待感は高くない。リンセンは一本、惜しいシュートはあったものの、相手GKにキレイに阻まれてしまった。
ようやく後半半ばから関根、サンタナ、中島、原口元気と続けざまに投入して、「なんだよ、こっちがネームバリュー的にはよっぽど先発っぽいメンバーじゃない」とフト思ったものの、だからって、それで点が取れるはずもなし。
メインより サブが豪華な 八時半
結果論ではなく、後半30分を過ぎたくらいからは確信していた。この戦況で勝敗が決まるとしたらPKしかないな、と。どちらも決め手のない中、たぶん普通にゴールは決められないだろう。点が入るとしたらPKしかない。無謀に攻めてカウンター食らって負けるくらいなら、これから残留争いを見越してとりあえず勝ち点1だけでも積み上げといた方がいい、と無難に考えるかもしれない。
相撲でいえば、ガップリ四つに組んで、双方寄ったり寄られたりを繰り返しつつ、相手を土俵の外に出すほどのパワーもない状態だ。
それだけにレイソルの攻撃陣がレッズのゴール前にやってきた時は怖かった。点取られるなら仕方ない、なんとかPKとられるのだけは勘弁してくれよ、と。また、とられかねない場面がけっこう続出してたのだ。レッズが敵陣で攻めてる時は、「これはPKとっても、とられる心配はない」と安心したり。
アディショナルタイムに入って、やっぱりスコアレスドローか、とまずは納得したところで、出ましたね、相手DFのハンド。オーロラビジョンの「PK確認中」の動画は明らかに腕に当たってるのが見えた。試合終了直前に、予想通りというか、希望通りの決着が見られて、ようやく安堵して家に帰る。10月下旬になっても残暑が続き、秋の到来はグズグズして遅い。レッズもそれにつられるようなグズグズな試合が多い。
が、とりあえずは勝った。どうやら残留争いからも一歩抜け出せた。
よかったよかった。
遅い秋 PKだって 勝ちは勝ち
動画:『雷雨と監督交代の夏』浦和レッズ川柳2024【7月、8月、9月編】
山中伊知郎
1954年生まれ。1992年に浦和に引っ越して来て、93年のJリーグ開幕時にレッズのシーズンチケットを取得。以後31年間、ずっとシーズンチケットを持ち続け、駒場、ならびに埼スタに通う。2021年より、レッズ戦を観戦した後、「川柳」を詠むという「レッズ川柳」を始める。
代表を務める「ビンボーひとり出版社」山中企画では、どん底地下芸人から中野区議会議員に転身している井関源二さんの単行本『井関が、中野区から日本を変える』と、元放浪少女で、群馬県・沼田の市会議員に転身している今成あつこさんの『日本の洗濯は沼田から!』をリリース。好評発売中だ。