Yahoo!ニュース

「恥のないプレーを」。日本代表・木津武士、経験者の自覚で秋のツアーへ。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
ワールドカップイングランド大会にも出場。(写真:ロイター/アフロ)

ラグビー日本代表が、ジェイミー・ジョセフ新ヘッドコーチ就任後初のツアーを開始。11月5日には東京・秩父宮ラグビー場でイングランド大会4強のアルゼンチン代表と、以後は欧州でジョージア代表、ウェールズ代表、フィジー代表とテストマッチ(国際間の真剣勝負)をおこなう。

新体制のもとでは10月に2度、候補合宿を開催。強化責任者の薫田真弘・男子15人制ディレクター・オブ・ラグビーが主導し、50名弱のスコッドを絞り込んだ。ツアーへ挑むのは32名。昨秋のワールドカップイングランド大会出場者は12名のみで、初選出は17名。

希少なワールドカップ組の1人は、木津武士。身長183センチ、体重114キロの28歳だ。巨躯同士がぶつかり合うスクラムで最前列中央に入る、フッカーというポジションを務める。今回のツアーでは共同キャプテンの堀江翔太、長谷川慎フォワードコーチの所属するヤマハから初選出の日野剛志らと定位置を争う。

東大阪市の小阪中学校時代は、ラグビーと同時に相撲でも実績を残した。大阪や近畿の土俵を制し、15歳の頃には9つの相撲部屋、18の相撲強豪高校、11のラグビー強豪高校から声がかかっていた。

初めて日本代表に呼ばれた東海大学時代は、イングランド大会のジャパンでキャプテンだったリーチ マイケル(今回は辞退)と同級生だった。裏表のない性格からか、リーチは木津を「何でもストレートに言ってくれるし、面白い」と信頼し、相談を持ち掛けていた。

限られた準備期間や不透明なメンバー選考など不安要素が指摘される今度の新生日本代表にあって、29日、決然たる覚悟を示した。

以下、一問一答(途中から複数記者に囲まれる共同取材にて。編集箇所あり)。

――日本代表、始まります。

「始まりますねぇ。フッカーには堀江さんと日野さんがいますがそこに負けへんように、ジェイミーの信頼を勝ち取るプレーができたら、と思います」

――日野選手が所属するのは、開幕8連勝中のヤマハ。スクラムを指導する長谷川慎コーチもジャパンに帯同します。

「そこ(チームのすべきことをライバルが先んじて知っているという)のアドバンテージはありますけど、どこかでチャンスをいただけるとは思う。その時にはしっかりアピールして、『お、木津もええな』と見てもらえるプレーができたら…」

――サンウルブズの一員としてスーパーラグビーでプレーしたのち、そのままトップリーグへ。各選手のコンディション作りは難しそうです。ただ、勝手な見立てですが、木津選手はコンディションを維持されているような…。

「どうですかねぇ。そら、疲れてますよ、皆。

ずっとラグビーをするのがしんどいと思うこともあります。この先もテストマッチが終わったらトップリーグが終わって、その次は…。考えたらゾッとする部分はあります。だから、まずはそう考えへんようにしている。

あと、僕のなかでは、2019年(ワールドカップ日本大会)までは第一線でやっていくのが1つの目標なので。代表、サンウルブズと、常に一番高いレベルの場所でプレーしていけるように、毎回、毎回、全力でやって、最終的に2019年に繋がっていけたらいいですね。

僕の場合、監督が変わっていくなかでも何だかんだ代表に残らせてもらっている。そこは自信を持って、どの監督にもハマれるような選手になっていきたい。毎年、そう思っていますね」

――過密日程下でのコンディション作りはどうされていますか。

「空いた時間にどれだけリカバリーするか、どうやって休むか、それはプロフェッショナルとして考えています。いまもシーズン中なので難しいんですが、毎週試合があるのは楽しいことでもある。そこ(試合)に向けて週のアタマから、週のアタマから…(スケジュールを考える)。もう、遊ぶ年でもないので」

――今回の日本代表は、限られた準備期間で結果が求められています。

「新しい選手が入っているからどうとか、言い訳を探すのは簡単。まだラインアウトも合わせていない(合宿前)。確かに、時間はない。でも、そんなん言うててもしゃあないので。選ばれた選手が責任を持って、恥のないプレーをするのが大事だと思います」

――テストマッチ経験者として、初選出組の多いチームにどう関わっていきたいですか。

「今回はキャップ(テストマッチ出場の証)ホルダーではない人も多い。僕がその立場だった時は、私生活や練習の取り組みについて色々と教えてもらった。だから、経験のある人間はその部分でどんどん引っ張っていきたいとは思いますね。

やっぱ、アガるんですよ、初キャップの時って。それでどうしても、普段のプレーができなかったりする。そして今回は強いアルゼンチン代表が相手。僕らでさえ緊張するところ。メンタルの部分で、サポートができたらと思います。日本代表に選ばれているということは、相応のプレーができている。自信を持ってもらうことが大事です」

――今回は最初から順にアルゼンチン代表、ジョージア代表と、スクラムに命をかけるチームとの対戦が組まれています。

「ヤマハの組み方(に近いまたは同種のシステム)を練習し始めているので、そこにハマれるようにしていくしかない。フロントローは姿勢をしっかり取って、4~8(後方5選手)の力を前に伝えるだけ、と。それはすごい、いいことだと思います」

――最後尾両脇のフランカーが、中央方向へ押し込む形ですね。

「あれをすることで1、2、3(最前列)の腰の位置を真っ直ぐにして、ひとつの方向へ押す…というのが目的だと思う。(最前列の)ケツが割れたら、そこを相手に突かれる。まずはそのケツの部分を抑えるのはすごくいいと思いますね。

バインド、後ろからの圧がめちゃすごいんです。(導入部分の確認をしただけで)こんなにガチガチにまとまるんだ…と感じました。練習でヤマハの1、3番と組んだ時、神戸製鋼の人よりもサイズが小さいのに、小さいからこそのフィット感やまとまりがあった。あれがちゃんと組めたら…」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

すぐ人に話したくなるラグビー余話

税込550円/月初月無料投稿頻度:週1回程度(不定期)

有力選手やコーチのエピソードから、知る人ぞ知るあの人のインタビューまで。「ラグビーが好きでよかった」と思える話を伝えます。仕事や学業に置き換えられる話もある、かもしれません。もちろん、いわゆる「書くべきこと」からも逃げません。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

向風見也の最近の記事