ここ3年ともワールドシリーズ優勝の投手を迎え入れた球団は、その投球よりも「運」にあやかりたい!?
12月11日、カンザスシティ・ロイヤルズは、ウィル・スミスと1年契約を交わしたことを発表した。ESPNのジェフ・パッサンやジ・アスレティックのケン・ローゼンタールによると、1年500万ドルに最高100万ドルの出来高がつくという。
スミスは、34歳のリリーバーだ。「メン・イン・ブラック」には出演していないし、ロサンゼルス・ドジャースでマスクをかぶってもいない。今シーズンは、通算100セーブと通算100ホールドの「100-100」を達成した。それについては、こちらで書いた。
◆「セーブとホールドの「100-100」をウィル・スミスが達成する。左腕では史上初」
来シーズンは、メジャーリーグ12年目となる。その最初の2シーズン、2012~13年はロイヤルズで投げ、2013年の途中にスターターからリリーバーに転向した。そのオフ、青木宣親(現・東京ヤクルト・スワローズ)と交換に、ロイヤルズからミルウォーキー・ブルワーズへ移籍した。
ここ3年は、ワールドシリーズ優勝メンバーになっている。2021年がアトランタ・ブレーブス、2022年がヒューストン・アストロズ、2023年はテキサス・レンジャーズだ。2022年は、夏にブレーブスからアストロズへ移り、ポストシーズンの登板はなかったが、ワールドシリーズのロースターには入っていた。
3年続けて、いずれも違うチームの選手としてワールドシリーズ優勝は、スミスしかいない。2年連続の選手たちについては、こちらで書いた。
◆「アストロズは今世紀初のワールドシリーズ連覇を逃したが、この選手は史上初「1人3連覇」の可能性あり」
もしかすると、スミスは、とんでもない「運」の持ち主なのかもしれない。
けれども、ロイヤルズがそこに目をつけ、スミスと契約を交わした、ということではないだろう。
昨オフ、ロイヤルズは、アロルディス・チャップマン(現FA)を1年375万ドルの契約で迎え入れた。そして、6月末にチャップマンをレンジャーズへ放出し、コール・レイガンズとロニー・カブレラを獲得した。
レイガンズは、2016年のドラフト全体30位だ。メジャーリーグ2年目の今シーズン、レンジャーズではリリーフ17登板の24.1イニングで防御率5.92、ロイヤルズでは先発12登板の71.2イニングで防御率2.64を記録した。サンプル数は少ないものの、移籍後の奪三振率と与四球率は11.18と3.39だった。カブレラは、まだ18歳の外野手。今シーズンは、移籍の前後とも、ドミニカン・サマーリーグでプレーした。
チャップマンとスミスは、どちらも左のリリーバーだ。夏のトレード市場で、必ずと言っていいほど、需要はある。ロイヤルズは、スミスについても、チャップマンと同じシナリオを描いている可能性もある。ロイヤルズのシーズン勝ち越しは、ワールドシリーズ優勝を飾った2015年を最後に途絶えている。今シーズンは、2005年と並ぶ、ロイヤルズ史上最多の106敗を喫した。
もっとも、来シーズン、ロイヤルズのポストシーズン進出は、あり得ない話ではない。レイガンズとボビー・ウィットJr.が投打それぞれの柱になっても、それだけでは不十分だろうが、ロイヤルズは、FA市場に出ている先発投手を手に入れようとしているらしい。ニューヨーク・ポストのジョン・ヘイマンは、ルーカス・ジオリトやマーカス・ストローマンらに興味、と報じている。また、ローゼンタールによると、セントルイス・カーディナルスに入団したソニー・グレイに、ロイヤルズも契約を申し出ていたという。
補強が功を奏すれば、ロイヤルズにも地区優勝のチャンスはありそうだ。ここ2シーズンとも、ア・リーグ中地区を制したチームの勝率は、他の地区優勝チームよりも低かった。今シーズン、ミネソタ・ツインズは、勝率.537で地区優勝。他の5地区のトップは、いずれも勝率.555を超えていた。また、ここ3シーズンのア・リーグ中地区は、いずれも違うチームが1位になっている。この地区に、ア・リーグ西地区のアストロズ、ナ・リーグ東地区のブレーブス、ナ・リーグ西地区のロサンゼルス・ドジャースのようなチームは、存在しない。