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乗客がちょっと歩いて割引と時間短縮 - Uber Express Poolとは

松村太郎ジャーナリスト/iU 専任教員
進行中の経路に合わせて乗客が少し歩き、料金と時間を節約する新しいアイディア

ライドシェアサービスのUberは、米国で「Uber Express Pool」というサービスをスタートさせました。Uber Poolは複数の同じ方面に向かおうとしている乗客が1台のUberに乗り合わせる「ライドシェア」の本質ともいえるサービスですが、これをより迅速かつ低料金にしよう、という取り組みです。

Uber Poolは、1人もしくは1グループで1台を占有する通常のUber Xの半額近い料金で利用できるかわりに、最大3人までが乗り合わせる可能性があるサービスです。

もし自分が最初の乗客であれば、途中で1人もしくは2人の乗客を拾います。そのあとから乗ってきた人を先に降ろすこともあります。長距離をUber Poolで利用する場合、途中で拾った乗客を降ろして、また他の乗客を乗せる可能性もあるわけです。

乗客を拾ったり降ろす度に、時間をロスすることになります。目的地の路地までクルマが行くまでに一方通行や信号待ちなどの時間が加算され、その路地から出るために再び一方通行や信号待ち……。確かに安い料金で利用しているので文句は言えませんが、Uber Poolを利用する際に早く着くかどうかは運次第で、時間に余裕があるときしか利用できませんでした。

そこで登場したのがUber Express Poolです。

通常の乗り合い予約をする際、よりスムーズに乗降できるスポット提案され、応じれば割引される。
通常の乗り合い予約をする際、よりスムーズに乗降できるスポット提案され、応じれば割引される。

ユーザーは通常通りUber Poolを予約するのですが、Expressを利用する場合、乗るクルマがスムーズに停車できる位置まで歩いていき、目的地付近でも降ろしやすい場所で降りて歩くことを促されます。

これによって、利用者はより短い待ち時間と、2ドルからとこれまでの半額程度から利用できる料金、そしてより早い到着時間というメリットを得ることができます。ドライバーにとっても、乗客をスムーズに乗り降りさせ、目的地までの時間を短縮することで、より効率的な営業ができるようになります。

料金の割引というインセンティブがつき、利用する人も増えそう。
料金の割引というインセンティブがつき、利用する人も増えそう。

ちなみにこれまでUber Poolを利用していた際にも、1ブロック歩いて他の乗客の到着時刻を早めてよう、と促されることがありました。しかし今回のExpress Poolは低料金というインセンティブがついたため、多くの人が利用するようになることが期待できます。

Uberから良いニュースが聞かれないまま2017年を終えようとしています。

カリフォルニア州との間で自動運転自動車の実験に関するトラブルがあり、企業のガバナンスの問題から創業者がCEOを辞任し、5600万件もの情報漏洩を1年隠蔽し、しかもハッカーと10万ドルの取引で口止めをし、ソフトバンクからの出資も20%減額されそう……。

ユーザーの間でも、今年はUberアカウントを削除する動きがたびたびありましたが、必ずしもUberの企業やアプリの問題だけでなく、トランプ大統領のイスラム諸国からの渡航制限に対するストライキへの不参加など、社会問題や政治と結びついて標的になっていました。

それでもUberがアメリカからなくならないと思う理由は、すでにUberはアメリカ人の都市での生活に欠かせないサービスになってしまったからです。政治問題と紐付いて批判の対象になっているあたりも、その裏付けと見ています。もちろん代わりとなるサービスはいくつもあり、そちらに代替されるかもしれません。しかしUber的なものは、米国の都市生活からなくならないでしょう。

そしてUberがまだまだ優位性を保つことができるのは、テクノロジーの面で進歩を続けてサービスに反映され続けているからでしょう。

また、UberやLyftなど、街の中でクルマを走らせて仕事をしている人たちの役割は増し続けています。運ぶ対象が人だけではなくなりつつあり、Amazonをはじめとした物流系も、街中で動き続ける人たちをインフラとして活用し始めているからです。

ジャーナリスト/iU 専任教員

1980年東京生まれ。モバイル・ソーシャルを中心とした新しいメディアとライフスタイル・ワークスタイルの関係をテーマに取材・執筆を行う他、企業のアドバイザリーや企画を手がける。2020年よりiU 情報経営イノベーション専門職大学で、デザイン思考、ビジネスフレームワーク、ケーススタディ、クリエイティブの教鞭を執る。

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米国カリフォルニア州バークレー在住の松村太郎が、東京・米国西海岸の2つの視点から、テクノロジーやカルチャーの今とこれからを分かりやすく読み解きます。毎回のテーマは、モバイル、ソーシャルなどのテクノロジービジネス、日本と米国西海岸が関係するカルチャー、これらが多面的に関連するライフスタイルなど、双方の生活者の視点でご紹介します。テーマのリクエストも受け付けています。

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