5月は生命保険の見直し時、浮いた保険料は貯蓄や投資、物価が上がって増えた生活費にも
5月は生命保険の見直し時です。立場に合わせた見直し方法を紹介しましょう。
新年度が始まって約1か月。4月から環境が変化した方は、もう慣れましたか? 日本は学校や会社、自治体などの年度はほとんど4月始まりです。つまり、進級、進学、就職などで立場や住む場所が4月に変化する人が多いということです。立場が変われば、生命保険で確保しておきたい保障も変化します。新しい立場や環境に慣れ、落ち着いてくる時期に、加入している保険はこのままでいいのか、ぜひ見直しを行いましょう。
特に見直しをおすすめしたいのは、子どもが学校に入学したとき、大学生になったり、就職したりしたとき、子どもを持つ人が引っ越したときです。生命保険で保障を確保したいのは、原則、子どもがいる人と、保険を使った相続税対策をしたい人です。
子どもがいる人は生命保険の見直しが必須
子どもがいる人は、自分に万一の際の子どもの養育費や教育費を備える必要があります。相続税がかかるほどの資産を持っている人は、生命保険の非課税枠を使って相続税を減らしたり、遺族に相続税支払いの資金を残したりできます。この2つは、生命保険の死亡保障で備えます。これ以外にも、医療費に備えるために生命保険会社が提供する医療保険に入っている人や、加入を検討している人もいるでしょう。いずれも、4月から転職した、就職したときは見直します。
生命保険の中には、保障に加えて貯蓄や投資の側面を持つ商品もありますが、今回は死亡保障と医療保障の必要性をもとにした見直しについて考えます。また相続税対策として生命保険を使う人は限定されるので省くことにします。
死亡保障の考え方と見直し方
子どもの進学時に原則、減らす
1年当たりの子ども1人当たりの生活費は年齢にもよりますが数十万円です。生計維持者が亡くなると、公的年金から遺族年金がもらえますが、平均的に月10万円前後、年間では100万円程度です。遺族の収入に遺族年金を加えると、どれくらいになりますか? 遺族が働いたり、遺族年金をもらったりしても生活費が足りないなら、その分を子どもが自立するまでの期間、死亡保障で備えます。
例えば、足りないと思う生活費の金額が月5万円なら、1年では60万円、子どもが生まれたばかりの0歳で大学進学を想定しているなら、22年間の合計で60万円×22年間=1320万円。0歳の時点では1320万円の死亡保険金を確保したいことになります。
その後、小学校に入学すれば自立までの期間は16年に短くなるので、60万円×16年=960万円でよいことに。このように、子どもの成長にともない、確保しておきたい死亡保障額は減っていきます。2人以上の子どもがいる人は、下の子どもが自立するまでの期間で考えます。
ただし、すでに必要な保障額相当の貯蓄を持っているなら、生命保険で備える必要はありません。貯蓄額は家庭により違いがあり、また子どもが小さく、親の年齢が若いほど少ないことが想像されるので、この記事では貯蓄はゼロの前提で保障額を考えています。ある程度の貯蓄がある人は、その分を差し引いて保障額を考えてください。
保障額には教育費も上乗せ
生活費に加えて考えておきたいのが教育費です。事前に準備しておきたいのは大学や専門学校などの高等教育機関の費用です。進学先によりかかる費用にはかなり幅がありますが、国・公立を想定すると1人250万円、私立なら1人350万円(これで足りない分は奨学金などを活用する前提)を目安に、保障額に加えます。
その際、学資保険に入っているなら学資保険から受け取れる満期金相当額を引くことができます。学資保険には入っておらず、これから貯めていく予定なら、見直しの際に、貯まっている分を引いて保障額を減らします。
例えば、子どもが2人、0歳と3歳、足りないと思う生活費が月5万円、子どもはそれぞれ満期金100万円の学資保険に入っていて大学進学を想定しているなら、22年間の生活費の不足分と2人の子どもの教育費ですから、1320万円+250万円(国・公立の想定)×2人分-100万円×2人分=1620万円。これが現時点で確保しておきたい死亡保障額です。これを子供の成長に合わせて見直して減らしていきます。
賃貸住宅なら生活費は家賃を考慮
気をつけたいのが住居費です。亡くなった生計維持者が住宅ローンを組んで買った持ち家なら、住宅ローンがなくなりますから、住居費は不要となり、生命保険の保障で備えたいのは、生活費の不足分と教育費です。賃貸住宅なら家賃も含めた生活費で計算します。家賃の分、持ち家より賃貸住宅の人の方が保障額は多めになるでしょう。
加入する保険の種類を確認
見直し作業を面倒に感じる人も多いでしょう。死亡保険を確保する掛け捨て保険には、収入保障保険と定期保険があります。
収入保障保険は、保険金を年金形式で受け取る仕組みなので、保障額は加入から満期までの期間でだんだんと減少していきます。収入保障保険に入っているなら、保障額と保障期間が適切なら、その後の減額を自分で行う必要はありません。ただし、保障額が多すぎるなら年金額を減らすことで減額できます。
一方、定期保険は、保障期間10年、保険金額は1000万円などと契約し、保障期間の10年はいつ亡くなっても1000万円です。当初は、適切な保障額だったとしても、子供の成長にともない多すぎるケースが出てくる場合があります。保障期間が何年かも確認しましょう。
例えば期間10年の定期保険なら、子どもが大学生になるまで続けたい場合は更新することになります。通常、定期保険は自動更新が可能ですが、更新の際には、その時の年齢で保険料が計算されるので保険料が上がります。ただし、多くの保険会社で更新の際には保険金額を減額できるので、保険金額を減らすことで、その分の保険料を安くできます。
定期保険は、10年や20年などの期間を決めて入るタイプと、60歳までなどの年齢で満期を決めるタイプがあります。
定期保険で死亡保障を確保している人は、減額を前提に見直しを行いましょう。毎年でなくても、中学に進学した、高校に進学した、大学生になったなど大きな節目でかまいません。
いくらまで減額できるかは保険会社により異なりますので、加入者向けのフリーダイヤルなどで確認します。
そして、子どものための死亡保障は、子どもが自立したら解約します。
医療保障の考え方と見直し方
住んでいる自治体の医療費助成を確認
引っ越した人や、子どもが進学した人は、自治体が行う子どもの医療費助成を確認しましょう。
子どもの医療費は、公的医療保険である健康保険の保険証を提示することで原則2割から3割の自己負担ですみます。さらに、この自己負担の分を助成してくれるのが自治体による子どもの医療費助成です。自己負担の医療費がゼロになったり、安くなります。自治体により、また子どもの年齢により異なります。
無料や安くなる期間は小学校入学前までだったり、中学卒業までだったり、中には高校生まで対象にする自治体も。
住んでいる自治体の子どもの医療費助成が充実しているなら、別途、民間の医療保険で保障を確保する必要性は小さくなります。
学費を準備する目的で入る学資保険に特約で子どもの医療保障を付けているなら、外しても問題ないでしょう。
加入する健保組合の給付を確認
就職や転職した人は、加入する健康保険の内容を確認してください。健保組合によっては、国の給付に上乗せして支給があります。その場合、自分で民間の医療保険に入る必要性は小さくなりますから、すでに入っているなら解約する、加入を検討しているなら入らないという結論を出すことができます。
健保組合からの上乗せ給付は特にないけれど、会社を通して保険料が割安なグループ保険に入れるなら、個人で保険会社と契約するよりも安くなりますから、必要度に応じて判断します。
年に一度は、どんなときにいくら、保険から受け取れるかを確認
民間の保険に入って備えたいのは、社会保険ではカバーできない部分や、給付額を自分で選べない社会保険に上乗せする形で自分仕様の保障を追加したい場合です。ただし、社会保険も民間保険も、給付金や保険金を受け取れるのは、条件を満たしたときです。給付の条件を満たさなければ、イザというときの備えにとたくさんの保険に入って多額の保険料を払っていても、受け取ることはできません。
どんなときに、いくらもらえるのかを年に一度は確認しましょう。5月はそのタイミングです。
見直しで浮いた保険料は、貯蓄や投資に回す、値上がりで支出が増えた生活費に充てるなど有効に使いたいですね。