大津市が食品ロス削減のためにドギーバッグを推奨。解決するべき2つの課題と持つべき2つの心構え
食品ロスの問題
消費者庁、文部科学省、農林水産省、経済産業省、環境省が連携して「食品ロス削減国民運動(NO-FOODLOSS PROJECT)」を進めており、ここ最近になって、多くの自治体が食品ロス削減に向けて取り組んでいます。
2016年度は、約9割の都道府県が予算の有無にかかわらず何かしらの取り組みを実施していただけに、食品ロス問題について触れる機会が多くなっているのではないでしょうか。
つい先日もYahoo!ニュースのトピックス<シャリ食べ残し すし店対策も>で食品ロス問題が取り上げられました。
私もここ最近、以下のような記事を書いたばかりです。
このような状況にあって、京都新聞に書かれているように、滋賀県の大津市が全国でも珍しくドギーバッグの推奨を始めました。
食品ロスを削減する手段の一つとしてドギーバッグを紹介する自治体はありますが、推奨するまでに至る自治体はほとんどありません。
ドギーバッグの問題点
食品ロスを削減するために、ドギーバッグを推奨するのはよいことですが、飲食店において料理を持ち帰る習慣がない日本では、改めて以下の課題を考えていく必要があります。
- ドギーバッグの準備
- 責任の所在
ドギーバッグの準備
大津市は容器の種類は特に問わないと言及していますが、弁当を販売している飲食店でない限り、持ち帰りの容器は新しく用意する必要があります。ドギーバッグなので立派な容器でなくても構いませんが、新しく準備するには当然のことながら費用がかかりますし、常に準備して必要な時に提供しなければならないので手間もかかります。
飲食店での食べ残しは一般廃棄物であり、回収するには費用がかかります。従ってドギーバッグで持ち帰ることによって食べ残しが減れば、もちろん、この回収費用も減ります。
店舗の規模によって大きく異なりますが、飲食店では通常一般廃棄物の回収に1ヶ月数万円を費やすものです。
食べ残しを持ち帰ることによって、この費用がどれくらい減るかによって、飲食店がドギーバッグを推し進める温度は変わってくるのではないでしょうか。
飲食店はもちろん、食べ残されることを嬉しいとは思っていませんが、ドギーバッグを用意することでこれまでよりも費用も手間もかかってしまうのであれば、二の足を踏んでしまいます。
もしも、飲食店がドギーバッグを購入する際に自治体から補助を受けたりできるのであれば、ドギーバッグを準備する抵抗感はより少なくなるのではないでしょうか。
責任の所在
ドギーバッグで持ち帰った料理で食中毒が起きた場合、飲食店に責任の所在がないことを明確にすることが必要であると考えています。
食中毒のリスクについては、店ではなく客の「自己責任」であると記載されていますが、これがどの程度であるかが問題となります。
ひとたび食中毒が起きると、飲食店は営業停止になって数日クローズしなければなりません。それに加えて、評判が著しく落ちてしまいます。
いくら客に責任があると言ったところで、ある飲食店で持ち帰った料理を食べて具合が悪くなった人がいると知ったら、よほどその飲食店に思い入れがある客でない限り、訪れることはないのではないでしょうか。
飲食店にとって最も脅威となるのは、食中毒です。廃業にもつながりかねない食中毒のリスクを負うことは、簡単にはできません。自治体の強力なバックアップが必要です。
SDGsを意識
大津市長の越直美氏は先の記事中で、以下のように話しています。
「SDGs」で言及されている食品ロスは以下の通りです。
食品ロスを削減は、世界規模で人々が自然と調和して暮らしていくための長期的な施策のうちの一つとなります。
次は家庭ごみの調査
大津市は、8月には家庭ごみに食品廃棄がどれだけあるか、抽出調査を行うということです。
日本では年間1700万トンの食品廃棄物があり、食品ロスは621万トンに上り、その中で家庭から排出されるのは282万トンもあります。それだけに、外食で持ち帰りを促進することも大切ですが、家庭から排出される食品廃棄物についても削減しなければなりません。
飲食店の食品ロス削減の次に、家庭ごみの削減に取り組むのはよい動きであると言えるでしょう。
感謝と関心
食べ残しを減らすのはもちろんよいことですが、根本的な問題として、そもそも食べ残さないようにすることも必要であると私は考えています。
それには、人々がこれまでよりも、食材そのもの、生産者や流通業者、調理した人やサービスした人などに感謝の念を抱くこと、さらには、食品ロス問題に関心を持ち、自身で何かできることがないかを考えることが、何よりも大切です。