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昭和レトロが魅力!ひとり旅で訪ねたい「ひなびた温泉地」(東日本編)

高橋一喜温泉ライター/編集者

ひとりでの温泉旅(=ソロ温泉)に適した温泉地と、そうでない温泉地がある。もちろん、旅の目的や個人の好みにもよるが、忙しない日常から離れて一人で静かな時間を過ごすのであれば、観光客が多い有名温泉地よりも、歴史はあるけれど、ひなびている温泉地のほうがふさわしい。

ひなびた街並みは一見「寂れている」という印象を受けることもあるが、見方を変えれば「レトロで落ち着く」と魅力的に映る面もある。

そこで、今回はひとり旅で訪ねたい「レトロでひなびた温泉地」を東日本エリアに絞って5カ所紹介したい。

下風呂温泉(青森県)

下北半島北端、津軽海峡に面した港町の温泉地。「最果ての温泉地」といった風情が旅の情緒を誘う。おもに3つの源泉があり、いずれも乳白色が美しい濁り湯。どの温泉施設もかけ流しである。日帰り温泉の「海峡の湯」では、2つの硫黄泉「大湯」と「新湯」を同時に楽しめる。イカやホタテ、ウニ、あんこうなど海産物も美味。アクセスは大変だが、わざわざ訪ねる価値のある名湯である。

台温泉(岩手県)

花巻温泉郷の一角を占める台温泉は、山の谷間に10軒ほどの旅館と日帰り温泉が並ぶ静かな温泉地。台温泉の源泉を引く近くの花巻温泉は超巨大温泉ホテルが鎮座するが、台温泉は対照的に湯治場風情の落ち着いた温泉地である。小規模の温泉が並ぶが、なかでも中嶋旅館は宮大工の手による築100年の木造建築が目を引く。基本的にどの宿も硫黄分を含んだ源泉が掛け流しである。

岩瀬湯本温泉(福島県)

9世紀に開湯したとされる山あいの温泉地。数軒の宿と共同浴場があるだけの静かで小さな出湯だが、漫画家のつげ義春もお気に入りの温泉地だけあって、ひなびた風情がかえって魅力となっている。旅館の「源泉亭湯口屋」と「ひのき風呂の宿 分家」は茅葺屋根が目印の歴史的建造物。静かな環境でひとり、自分自身や湯と向き合いたいという人には絶好の環境である。

湯宿温泉(群馬県)

新潟との県境の三国峠の手前にある小さな温泉地。歓楽要素は何もなく、共同浴場や湯治宿が並ぶ静かな温泉地で、「寂れている」と受け取る人もいるかもしれないが、「鄙びている」と受け取るほうが正解。熱狂的なファンをもつ、つげ義春の『ゲンセンカン主人』の舞台となった街でもある。「ただただ湯と向き合いたい」というひとり客にもおすすめの温泉地である。

角間温泉(長野県)

渋・湯田中エリアは10以上の温泉地がひしめく一大温泉郷。そのひとつ、角間温泉は小さな宿が寄り添うように立つ静かな温泉地だが、木造の旅館や共同浴場など旅情を誘う昭和レトロな空間が魅力。まるで時間が止まってしまったかのよう。みんなでワイワイと楽しむのには向かないが、1人で非日常の時間を感じるには最適の温泉地だ。各宿の浴場のほか、宿泊客限定で3つの共同浴場を利用できる。温泉三昧にはもっていこいだ。

温泉ライター/編集者

温泉好きが高じて、会社を辞めて日本一周3016湯をめぐる旅を敢行。これまで入浴した温泉は3900超。ぬる湯とモール泉をこよなく愛する。気軽なひとり温泉旅(ソロ温泉)と温泉地でのワーケーションを好む。著書に『日本一周3016湯』『絶景温泉100』(幻冬舎)、『ソロ温泉』(インプレス)などがある。『マツコの知らない世界』(紅葉温泉の世界)のほか、『有吉ゼミ』『ヒルナンデス!』『マツコ&有吉かりそめ天国』『スーパーJチャンネル』『ミヤネ屋』などメディア出演多数。2021年に東京から札幌に移住。

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