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ノルウェー観光船で集団感染 隠蔽疑惑・警察捜査へ 経済優先で気にゆるみか

鐙麻樹北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会理事
現時点で感染者39人を出したロアール・アムンセン号(写真:ロイター/アフロ)

北欧ノルウェーのクルーズ船「フッティルーテン」(Hurtigruten)でクラスターが発生した。

7月31日、ロアール・アムンセン号の4人の乗員が新型コロナに感染したと同社はプレスリリースを流す。

8月3日には156人の乗員のうち34人の感染を確認。多くはフィリピン出身者で、3人はフランス、ドイツ、ノルウェー出身。

5人の乗客の感染も確認された。

問題となっている2本のクルーズに参加していた乗客は合計386人。

ノルウェー公衆保健研究所はこれら乗客が居住する69の全国各地の自治体に追跡作業を依頼した。北極圏トロムソではおよそ40人の乗客が隔離中。

感染者は現時点で39人へと増加した。

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フィヨルドや大自然が豊富なノルウェーではクルーズ船が重要な移動手段で観光産業となっている。

日本からの旅行者もフッティルーテンを利用することが多い。

政府が規制厳格化へ

8月3日、ホイエ保健・ケアサービス大臣は船の運航規制を厳格化すると記者会見で発表。

フッティルーテン社は全ての沿岸急行船の運航を中止した。

隠蔽の疑い

今回の感染拡大の原因として、フッティルーテン社が船内での感染の疑いを隠そうとした複数の行為が指摘されている。

船に感染者がいたと判明直後、公衆保健研究所はすぐに乗客に連絡をするようにフッティルーテン社に要請。しかし、それから2日間も同社は乗客に連絡をとろうとしなかった。

発覚した時点で下船した乗客に告げていれば、全国各地での感染拡大の可能性をもっと早くに防げただろうとされている。

フッティルーテン社は「公衆保健研究所からそのような要請があったとは知らなかった」としており、責任放棄ともみえる姿勢はさらなる批判を浴びた。

フッティルーテン社は状況は自分たちのコントロール下にあるから乗客には連絡しなかったと現地メディアに回答。公衆保健研究所の要請は、なんらかの連絡不備で同社の上部に届いていなかったと説明した。

乗客には病院で働く医療従事者もいた。

フッティルーテン社が乗客にすぐに連絡をしなかったことから、自分が隔離対象だとメディアで知った乗客も。しかし時すでに遅く、下船後にすでに各地へ移動していた人もいる。

批判を受けて謝罪

3日、フッティルーテン社は記者会見を開き「社内の運営が弱体化し、過ちを犯した」と謝罪した。

一方で隠蔽疑惑は否定し、原因は「社内でのコミュニケーションがうまくいっていなかったから」と説明している。

一連の報道を受けて、企業レベルか個人レベルで感染予防対策の違反があったのではないか、警察は捜査をすることを決めた。

保健大臣「信頼低下」

ホイエ保健・ケアサービス大臣は3日の記者会見で、同社に対して「信頼は低下した」と厳しい批判を露わにした。

「(コロナ渦での観光業界の)規制緩和を強く求めていた者たちのなかにはフッティルーテン社もいた。だからこそ、このような事態になったことを悲しく思う」とノルウェー国営局NRKに答えている。

コロナ赤字を埋めようと観光客の誘致に必死になっていた観光業

ノルウェー観光業を支えてきたブランドでもあるがゆえ、集団感染はすでに外国メディアでも報じられている。

ノルウェーでは長い夏休み休暇を迎え、政府は感染拡大を抑えられていることから様々な規制を緩和。ノルウェー人の多くは国外旅行を我慢して国内旅行を満喫し、欧州からは外国人観光客も訪れていた。

3月から続く赤字を埋めようと、夏の観光客誘致に必死になるあまり、感染予防対策の意識のゆるみが露呈したケースとなった。

Text: Asaki Abumi

北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会理事

あぶみあさき。オスロ在ノルウェー・フィンランド・デンマーク・スウェーデン・アイスランド情報発信16年目。写真家。上智大学フランス語学科卒、オスロ大学大学院メディア学修士課程修了(副専攻:ジェンダー平等学)。2022年 同大学院サマースクール「北欧のジェンダー平等」修了。多言語学習者/ポリグロット(8か国語)。ノルウェー政府の産業推進機関イノベーション・ノルウェーより活動実績表彰。北欧のAI倫理とガバナンス動向。著書『北欧の幸せな社会のつくり方: 10代からの政治と選挙』『ハイヒールを履かない女たち: 北欧・ジェンダー平等先進国の現場から』SNS、note @asakikiki

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