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『呼び出し先生タナカ』で歌唱力最下位からユニットデビュー。女優・森日菜美のバラエティへの本気度は?

斉藤貴志芸能ライター/編集者
東宝芸能提供

『呼び出し先生タナカ』で歌唱力テストの下位4人により結成された女子ユニットに、最下位から名前を連ねた森日菜美。『機界戦隊ゼンカイジャー』で人気を呼んだ女優で、今回は元HKT48の村重杏奈、コスプレイヤーのえなこ、インフルエンサーのなえなのと並ぶ中で、唯一音楽活動の経験がなかった。正統派の系譜の東宝芸能の所属ながら、グラビア、特撮と独自の路線を歩んできたが、バラエティにはどんな想いで臨んでいるのか?

私は泣いてイジられて活きるのかなと(笑)

――『呼び出し先生タナカ』では泣き虫キャラになっていますが、ガチ泣きなんですか?

 一度、収録終わりに泣きながら、スタッフさんに相談に駆け寄ったことがあったんです。いつも自分が出たいところで出ていけない。これからどうしたらいいんだろう……と苦悩を話したら、「そんなに泣くんだ」と言われました。

――それはテレビに映ってないときの話ですよね。

 そうです。そしたら、いつの間にか田中(卓志)さんにも泣き虫キャラを受け入れてもらうようになって。収録中も気持ちが盛り上がったら泣いて、イジっていただいてこそ、私は活きるのかなと思いました。キャラが定着したのはありがたいですね。ずっと、さまよっていたので(笑)。

――では、狙って泣いてる部分もあると(笑)?

 まあ、そうですね(笑)。オイシイところは確かにちょっと狙いつつではありますけど、求められることをちゃんとやろうと頑張っています。泣くのがあざといという声もあるので、バランスは課題だと思っています。

――自分でオンエアを観ると、どう思いますか?

 こんなに泣いている姿を全国の皆さんに見られていると思うと、恥ずかしいです(笑)。でも、名前を覚えてもらうことが一番大事なので。

フジテレビ提供
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どこで出るか探っていたら収録が終わったり

――話が戻りますが、スタッフさんに相談に行ったのは、バラエティでの出方に悩んでいたわけですね?

 はい。『呼び出し先生タナカ』には去年の6月から不定期に呼んでいただいて、全国放送のバラエティは初めてだったんです。自分のキャラが掴めなかったり、番組中にどこで出ていくか探っているうちに、収録が終わってしまったり。

――女優さんが入っていくのは、難しかったかもしれませんね。

 あの番組では、私たち生徒役には台本がないんです。いつ何が起こるかわからないので、瞬時にどれだけ対応できるかが軸になっていて。そうなると、やっぱり陽キャの方たちが目立つし、一方で、陰の方がボソッと言ったひと言がウケたりもする。私はどっちなんだろうと、ずっと迷っていたんです。最近、キャラが定着してきてからは、どんどん楽しめるようになりました。

――収録後にラーメン屋で涙目になっている写真をSNSに上げるのも、恒例になりました。

 あれは最初、そんな気は全然なかったんです。収録終わりにお腹がすいて、「ラーメンを食べて元気を出そう」というくらいのテンションで載せました。確かに、食べながらマネージャーさんと反省会をしていると、涙ポロリとなるんですけど、それをイジっていただけて。この写真が求められているのかなと思いました(笑)。

フジテレビ提供
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来世でアイドルになれたらと思っていました

――歌唱力テスト下位メンバーによるユニットでデビューすることになりましたが、もともと歌の仕事には興味あったんですか?

 昔から女性アイドルを見るのは好きで、実家にアイドルグループのDVDがあったりします。

――元乃木坂46の齋藤飛鳥さん推しでしたっけ?

 そうです。東京ドームでの卒業コンサートにも行って、とんでもなくかわいかったです。

――他に推しの変遷はありました?

 小・中学生の頃はAKB48さんの大ブームで、私はずっと大島優子さんがかわいいなと思いながら、音楽番組を観ていました。あと、フェアリーズさんも大好きでした。あんなバリバリに踊れるのが凄かったです。

――自分もアイドルになりたい、とは?

 来世ではなりたいと思っていました(笑)。現実では全然そんなレベルでなくて、ダンスの覚えは悪いし、歌もテンポがズレてしまって。自分には向いてないと思っていました。

――今回のユニットデビューに当たり、ダンスや歌のレッスンもあったんですよね?

 基礎から教えてもらいました。でも、他の3人は元アイドルやソロで歌手デビューしている方たちで、初めて挑戦するのは私だけだったんです。不安もプレッシャーもありました。

東宝芸能提供
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MVをコピーしたつもりがただの陽気な子に

――カラオケで歌うことはありました?

 しょっちゅう行ってました。歌うことは好きなので。でも、あいみょんさんとかYUIさんとか女性のシンガーソングライターさんの曲を歌うと、キーが全然ズレちゃうんです。私の声が特徴的というか「鼻が詰まっているみたい」とよく言われて(笑)。高い音が出ないので、男性の曲を歌うことが多いです。

――学校の合唱コンクールとかでは?

 後ろのほうで口を大きく開ける係でした(笑)。

――『呼び出し先生タナカ』の歌唱力テストでは、『夏祭り』を歌って最下位という結果でした。

 ビックリしました(笑)。『夏祭り』ってカラオケで盛り上げる曲じゃないですか。学校の音楽のテストだったら真剣に歌いますけど、カラオケ気分で歌ったら、田中さんに「真面目にやれ」とイジられました(笑)。

――振りみたいなものも付けてましたが、音程よりノリでいこうと?

 音程も合ってないと点数が付かないので、低いところはちゃんと歌おうとしましたけど、WhiteberryさんのMVを観ると、ずっとこうやって(体を振る)歌っているんです。それをコピーしたつもりが伝わらなくて、ただの陽気な女の子みたいになってしまいました(笑)。

東宝芸能提供
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人一倍の努力をしないと何もできません

――歌のレッスンも、最初のほうははかどらなかったり?

 ドから高いドまで、鍵盤で出してもらった音に合わせるところから始まって、それすらできない状態でした。ペットボトルにストローを入れて、ブクブクさせながら声を出すだけで音程が取れるようになるらしくて、それを試しにやってみたり、YouTubeで音程の取り方を調べたりもしました。でも、1人でやっていても合ってるかわからないので、マネージャーさんの力を借りて先生を付けていただいて、個人レッスンも受けました。

――腹式呼吸もやりました?

 やりました。お腹から声を出すって何なんだろうと。あと、音の強弱で「ここは強く」とか意識して歌ったり。最初はどうなることか、本当に不安でしたけど、やっぱりレッスンをしていただくと、人は育つものですね(笑)。

――上達した実感があったわけですか。

 私は頑張らないと普通のキーで歌えないことを知りましたけど、今回の『はろー!NIPPON!!』という曲は、奇跡的に私のキーにピッタリだったんです。レコーディングのスケジュールを見たら、私だけ3~4時間取られていましたけど、スムーズに進んで1時間半くらいで終わって。「私の歌、いけるのかな」と思っちゃいました(笑)。

――自分の才能を見つけたような?

 いやいや、才能はなくて、人一倍努力しないと何にもできない人間ですから。これからの人生も不安ですけど、とりあえずレコーディングは乗り越えられたので、人生も乗り越えられますかね(笑)。

――音域自体が広がった手応えも?

 確かに、カラオケでmiwaさんの曲を歌ったら、前は絶対に声が出なかったのが、無理すれば出るようになりました。今まで挑戦もしなかったキーが出ると、嬉しいですね。お芝居でも今後、普段と違う声を出さないといけないことがあったら、そこにも活かせるかなと思いました。

ダンスで首が据わってないのが課題でした(笑)

――ダンスのほうはどうでした?

 歌より大変でした。小学校の体育くらいしか、やったことがなかったので。人とテンポがズレるとか、首が据わってないとか(笑)、問題点が多くて。

――大人で「首が据わってない」って、どういうことですか(笑)?

 たとえばジャンプしても、アイドルさんは絶対に顔が画面に収まっていますよね。私はすぐ上や下を向いて、はみ出してしまうんです。上を向くと、白目をむいていたり(笑)。気づかないうちにそうなっているので、クセを直すのが一番大変でした。今まで何気なく見ていたアイドルさんたちが、どれだけ凄かったのか、改めて尊敬しました。

――しかも、4人で合わせないといけないわけですよね?

 スケジュール的に4人が揃う機会がなかなかなくて、3時間くらいで1曲全部の振り入れをしたんです。みんなはすぐ覚えられたのに、私はアップテンポに付いていくだけで必死。撮ってもらった動画を観ると、私だけ振りを覚えるのに精いっぱいで、かわいさとか技術的なものが何もなくて。村重さんは本当にかわいく踊るし、えなこさんもなえなのちゃんもそれぞれの魅力があって。私はどうしたらいいのか、葛藤がありました。

――家でも練習したんですか?

 細めの全身鏡があるので、それを見ながら練習しました。母の前で踊って「どう?」と聞いたら、「あなただけ、それで大丈夫なの?」と不安にさせてしまって(笑)。でも、かわいく見せるということで、女性らしい曲線を振付の中で意識しましたし、顔を画面に残すようにして、首が据わってきました(笑)。

新橋でサラリーマンのために流してほしい

――ユニットの他のメンバーとは、もともとどんな関係だったんですか?

 シゲちゃん(村重)とえなこちゃんは、『呼び出し先生タナカ』が始まった頃から何度か一緒に呼んでいただいてました。なえなのちゃんは顔を合わせる機会が少なかったので、仲良くなれるか不安でしたけど、ああ見えて、みんなに気さくに話し掛けてくれて。私となえちゃんが妹組、シゲちゃんとえなこちゃんがお姉さん組という感じで、4人で会話するとツッコミがいません(笑)。でも、他愛ない会話をしながら、仲睦まじくやっています。

――元アイドルの村重さんは、バラエティとは違う顔を見せたりもしますか?

 レッスンでは引っ張ってくれる存在です。振りを覚えても、たくさん移動するフォーメーションが一番難しくて。横1列に揃うはずがガタガタになっていたりすると、「ここは1列だよ」と声を掛けてくれるので、みんなの意識が高まります。私は自分のことで精いっぱいなので、周りが見えている凄さを感じました。えなこちゃんからは人前に出る姿はこうあるべきと学んだり、ユニットを組んで以来、いろいろ刺激をもらっています。

――『はろー!NIPPON!!』の曲も気に入りました?

 通勤に疲れたサラリーマンさんが聴いたら、「明日も頑張ろう」と背中を押されるような曲だと思います。新橋とかで流してほしいと、みんなで話してました(笑)。それくらい明るい曲で、聴いた人に元気になってほしいので、歌の収録もみんなでハッチャけて、笑顔を絶やさずに撮りました。

フジテレビ提供
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レポートで文字数が足りない分は何を書くか(笑)

――日菜美さん自身、大学を留年中でレポートに追われる中、この曲を歌って頑張ろうと思うのでは?

 本当に追われています(笑)。7月末にはテストもあって、ユニットも女優もやりながらで、嬉しい悲鳴を上げています。

――専攻している経済学には強いんですよね?

 そう思いますよね? でも、簿記の授業で頭で計算しないといけないところを、電卓を叩いてトントンと音を奏でています(笑)。

――SNSで消費者行動論の授業を受けていると書かれていました。

 生産者と消費者の関係とか、企業の棒線グラフがバンと出て「違いは何でしょう?」とか、レポートの課題が出ます。5年分の財務諸表を調べて、その企業のどこがどうなったと書きなさいと言われても、「何を言っているんだ?」となりません(笑)? 自分で選んだ学科なんですけど。ありがたいことに兄も経済学部だったので、「これはどういうこと?」と聞きながら書いています。でも、いつも字が足りません。800字書かないといけないのに、600字で終わってしまって「あと200字、何を書けば?」となったりします(笑)。

提出期限の日だったことに寝る前に気づいて

――寝る時間はあるんですか?

 お休みもいただいているので、それは全然あります。ただ、仕事で疲れて帰ってきたら、その日の23時59分までの課題を出していなかったり(笑)。計画性がなくて、普段から大学のサイトを見ていればいいのに、寝る前に見てハッとなって、締め切りに追われています。残り何分とかでバーッと書いて、「これは絶対内容が違うな」と思いながら、とりあえず出しています(笑)。

――そうこうありながら、大学には行って良かったですか?

 良かったです。親との約束でもあったので。「好きなことをやるのはいいけど、大学は卒業してね」という。頑張りたい目標ではありますし、入学当初と比べて環境が全然変わりました。大学で「『タナカ』の泣き虫の人ですか?」と声を掛けられることがあって、嬉しいです。

東宝芸能提供
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体も張りますし激辛も食べます

――今は『呼び出し先生タナカ』でのユニット活動がありますが、日菜美さんの軸はあくまで女優ですか?

 憧れているのが夏菜さんです。朝ドラのヒロインもやったのに、『(本音で)ハシゴ酒』でダウンタウンさんとお酒を飲んで話していたりする姿を見ると、この二面性は凄いなと思うんです。井桁弘恵さんや堀田茜さんを見ていて、自分もこうなりたいと目標が定まってきました。

――つまり、バラエティでも女優でも活躍できるようになりたいと。

 東宝芸能の女優さんは映画やドラマで輝いている方ばかりなので、違う道を進みながら、最終的には女優だからこそバラエティでも頑張る姿を、見せられたらと思っています。

――『世界の果てまでイッテQ!』の堀田茜さんみたいに、体を張った仕事もしますか?

 全然張りますし、何でもやりたいです。激辛も好きなので食べますし、実家が農家なので野菜の仕事もしたいです。お昼の番組の顔になりたいとか、いろいろありますけど、女優も頑張りながらやっていけたら。

知名度を上げてオーディションも勝ち取れるように

――女優業でも、『機界戦隊ゼンカイジャー』のフリントの次の大きな役が、そろそろ欲しいところですね。

 『ゼンカイジャー』が終わって、もう2年ですからね。実力不足でオーディションに受からない苦悩もあって。バラエティで知名度を上げて、お芝居のオーディションも勝ち取るのが理想です。そこでまた路線が変わると思うので、演技力も磨いておきます。

――バラエティで培ったものを、演技にもフィードバックできるかも?

 それもありますし、バラエティに出ている女優さんを見ていると、お芝居とは全然違う素の自分を出せていて、なかなかできないことだと思うんです。私も地道に努力して、まずはこのユニットが売れることが、今の一番の目標です。

――ユニットへの意欲は高いんですね。

 もちろんです。タナカ先生が作詞、フジテレビさんがバックアップしてくれて、たくさんの方々が集まってできたので。1人1人の方への感謝を忘れずに、ユニットをバズらせたいです。

――そんな夏に、個人的なお楽しみもありますか?

 キュウリは好きなんですけど、夏は好きじゃないんですよね(笑)。キュウリは毎日食べています。父が実家で育てていて、いっぱい届くので。そのまま食べてもおいしいんですけど、『リュウジのバズレシピ』を見ながら、料理にアレンジしています。

――いいんですけど、わりと地味なプライベートですね(笑)。

 でも最近、女性マネージャーと完全プライベートでユニバ(USJ)に行くことが決まりました。遊園地の絶叫系が好きで、ワーッと叫びたくて。それで、かき氷を食べたりもしたいです(笑)。

東宝芸能提供
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Profile

森日菜美(もり・ひなみ) 

2001年3月30日、東京都生まれ。

2014年に「東宝芸能創立50周年記念オーディション」に合格。2016年に映画『校庭に東風吹いて』で女優デビュー。主な出演作はドラマ『機界戦隊ゼンカイジャー』、『遺留捜査』、映画『しあわせのマスカット』、『恋は光』など。『ぐるり東京 江戸散歩』(TOKYO MX)でMC。『呼び出し先生タナカ』(フジテレビ系)発の女子ユニットで活動。

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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