最も正確な最新の「宇宙全体の地図」が公開される!
どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。
今回は「史上最も正確な宇宙地図が公開される」というテーマで動画をお送りしていきます。
これまでの観測技術の進歩により、非常に遠方にある天体の姿を捉えられるようになったおかげで、かなり高精度でこの宇宙の姿が理解できるようになりました。
そんな最新の観測での理解が反映された超高精度の「宇宙地図」が、今回誰でも気軽に楽しめるように無料で登録も不要のウェブページで公開されたので、解説したいと思います。
●最新地図の基本情報
新たに公開された地図では、「スローン・デジタル・スカイ・サーベイ(SDSS)」と呼ばれるプロジェクトによる過去20年間以上の観測で得られたデータが用いられています。
この地図に表記されている無数の小さな点は、全てが億単位、あるいは兆単位の恒星が集まった恒星の大集団である「銀河」です。
最新地図の最下部には私たちの住む天の川銀河があり、地球から見て横に90度、縦に10度の範囲にある実に20万個の銀河の正確な位置や見た目の色の情報が反映されています。
この宇宙はあまりに広いため、光の速度は秒速約30万kmもあるにもかかわらず、地球から非常に遠く離れた天体から放たれた光は、地球に辿り着くまでに億年単位の時間がかかります。
そのため今この瞬間に地球に届いて観測された遠方の天体から放たれた光は、発信源の天体の
何億年も前の姿や情報を反映していることになります。
また地球から遠くにある天体から放たれた光ほど、光が地球に届く過程で宇宙膨張の影響を受けて波長が伸び、元の光よりも赤みがかって見えます。
この効果は「赤方偏移」と呼びます。
この地図では最下部の天の川銀河を原点として、そこから距離が離れた上部ほど、赤方偏移の度合いが大きく、かつ過去の情報を遡っていることが示されています。
このように天の川銀河からの各銀河の位置も正確に反映されています。
●宇宙はどんな姿をしているのか?
ではこの地図に反映された、最新の理解に基づいた宇宙の姿をより詳しく見ていきましょう。
地球から距離が近い場所には、青い見た目の「渦巻銀河」が多数存在しています。
渦巻銀河は星が高密度で集まった円盤と、より星が高密度で集まった少しふくらみのある「バルジ」と呼ばれる構造を持ちます。
私たちが住む天の川銀河や、近所にあって巨大なアンドロメダ銀河も、大きく分けて渦巻銀河の一種です。
より正確には天の川銀河は「棒渦巻銀河」に分類されます。
そして特に近傍の宇宙では、銀河が高密度で集まった領域とそうでない低密度領域がはっきりと分かれて存在することが見て取れます。
銀河が高密度で集まった泡の表面のような領域は「銀河フィラメント」、低密度で泡の内部のような領域は「ボイド」と呼ばれ、このように宇宙をマクロなスケールで見たときの泡状構造を、「宇宙の大規模構造」と呼びます。
そこから少し遠く離れた領域では、黄色い「楕円銀河」が多く観測されています。
これは楕円銀河が渦巻銀河と比べて非常に明るく、遠くにあっても観測しやすいためです。
楕円銀河は星々が平面上に集まった渦巻銀河と異なり、球体が潰れた形である楕円体の領域に星々が集まっています。
また、銀河全体として統一的な回転方向を持っている渦巻銀河と異なり、楕円銀河を構成する星々の運動方向には統一性がほとんどないことも知られています。
そこからさらに離れた領域では、宇宙膨張に伴う赤方偏移によって赤みがかった姿で見える楕円銀河が多数発見されています。
この領域になると渦巻銀河は暗くてかなり検出されにくくなっていき、近傍宇宙で顕著に見られた泡状構造も見にくくなっていきます。
70億~80億年前の姿が見える天体が位置する距離では、地球から非常に遠いために、通常の銀河(赤い点)が徐々に観測されなくなっていきます。
その代わりに見えてきた青い光を放つ天体は、宇宙で最も明るい天体とも呼ばれる「クエーサー」です。
クエーサーには銀河が存在するものの、その正確な光源は銀河に属する無数の恒星の光ではなく、銀河中心に存在する超巨大なブラックホールの周囲にある降着円盤やジェットといった超高エネルギーの現象であると考えられています。
非常に活発なブラックホールの周囲にある円盤やジェットは銀河に属する無数の恒星全体から放たれる光よりも遥かに強い光を放つため、地球から超遠方にあるクエーサーですらも観測することができてしまいます。
また、クエーサーの光源は非常に高温であるため、より近傍の宇宙で見られる通常の銀河からの光よりも波長が短い光を優位に放ちます。そのためかなり遠い宇宙からでも青い姿で捉えられています。
さらに遠く、120億年前の姿が見える天体が位置する距離では、クエーサーから放たれた光ですらも赤く見えてしまうほどの強い赤方偏移が起きています。
●宇宙で最初の星はどこにある?
この地図で一番上の模様は、宇宙マイクロ波背景放射です。
これは約138億年前の宇宙誕生の瞬間から約38万年後に放たれた光です。
それ以前の宇宙では光が直進できなかったため、この宇宙背景放射が「宇宙最古の光」であると考えられています。
光による観測で、宇宙背景放射以前の情報を得ることは原理的に不可能です。
私たちが光で観測可能な天体から放たれた光は、全て背景放射よりも後に放たれています。
宇宙の晴れ上がりから数億年間は、宇宙に星が存在しない真っ暗な「暗黒時代」が続いていたとされています。
この暗黒時代を終わらせた、宇宙で最初の世代の恒星は「ファーストスター」と呼ばれています。
初期の宇宙ではほぼ水素とヘリウムしか存在せず、その後星の核融合でより重い元素が生成され、その星が死ぬことで宇宙の重い元素の割合が増えていきました。
つまり自身より以前に星が死んだことのない、最初の世代の恒星であるファーストスターには、水素とヘリウムしか含まれていません。
このような特徴を持ったファーストスターが見つかれば、宇宙の歴史を理解する上で極めて重要な情報を与えてくれるはずです。
そのため世界中の科学者たちが、あのジェイムズウェッブ宇宙望遠鏡を筆頭に、様々な手段を駆使してこの地図の黒い領域のどこかにあるファーストスターを求めて日々研究を行っています。
ということで今回は、最新の宇宙地図を用いながら、現在理解されている宇宙の姿について解説しました。