開幕2連戦で3本塁打、打率.571の江越選手が1軍へ《阪神ファーム》
3年ぶりの本拠地開幕となった阪神ファーム。19日は雨天中止でしたが、20日は好天に恵まれ、8対4で勝利。きのう21日は午前中まで雨が残っていたものの無事に行われて12対1の大勝!江越大賀選手が2試合連続のホームランを放ちました。昨年、彼が放った8本の先頭打者ホームランはウエスタン・リーグの新記録となっています。しかも、きのうは初回に初球を打っての先頭打者アーチで、さらに2回は2打席連続の2ラン!
ファームとはいえ、開幕2試合で早くも3発です。また大学や社会人との交流試合、教育リーグも合わせると、ここまで8試合に出場。そのうち13日の教育リーグ・広島戦(由宇)と、15日の大阪商業大学戦でも1本ずつ出たので、8試合で5本ということになりますね。
21日は2連発の他にタイムリー二塁打もあり、中日との2試合で7打数4安打5打点、打率.571として、きょう22日に1軍へ“昇格”。ウエスタン・ソフトバンク戦が行われているタマスタ筑後ではなく、京セラドームでオリックスとのオープン戦に臨んでいます。伊藤隼太選手が筑後へ行きました。
きょう行われたウエスタン・ソフトバンク1回戦は、1対0で阪神が勝っています。これで開幕から3連勝。(以下敬称略)投手は岩田が5回を投げ2安打無失点、以降は谷川が2回、斎藤と尾仲が1回ずつで3人とも無安打の完封リレー!しかも無四球でした。打線は熊谷、俊介、山崎が2安打ずつ、途中出場の荒木が1安打です。
0対0で迎えた8回に、先頭の代打・荒木が左前打して二盗。ここでキャッチャーからの送球をショートが捕れず、ボールは外野へ。センター釜元は捕球したつもりだったようですが後ろに残ってしまい無死三塁となって、1死後に熊谷がセンターへ犠飛を打ち上げ1点を先取。その裏を斎藤が、9回は尾仲が三者凡退で片づけました。
中日2連戦で20安打20得点!
それでは、きのう21日のウエスタン・中日戦の結果をご紹介しましょう。チームは9安打ながら、選んだ四球が8つ、相手エラーも4つあって12得点。前日と同じく先制、中押し、ダメ押しという試合です。投手陣は才木浩人投手の前に岩崎優投手が3イニングを投げました。なお、また写真が偏ってしまって今回は後半のみになっています。ご了承ください。
《ウエスタン公式戦》3月21日
阪神-中日 2回戦 (鳴尾浜)
中日 010 000 000 = 1
阪神 120 060 03X =12
◆バッテリー
【阪神】岩崎‐○才木(1勝)-牧 / 長坂-片山(9回表)
【中日】●鈴木翔(1敗)(3回0/3)-清水(2回)-福(1回)-ブリトー(1回) / 杉山-石橋(6回~)
◆本塁打 神:江越2号ソロ、3号2ラン(鈴木翔)
◆二塁打 神:島田、江越、荒木
中:溝脇、近藤
◆打撃 (打-安-点/振-球/盗/失) 打率
1]左:江越 (4-3-4 / 1-1 / 0 / 0) .571
2]指:荒木 (4-2-2 / 1-0 / 0 / 0) .500
〃打捕:片山 (1-1-0 / 0-0 / 0 / 0)1.000
3]中:島田 (4-1-0 / 0-1 / 0 / 0) .375
4]三:陽川 (4-1-0 / 1-1 / 0 / 1) .286
5]右:板山 (3-1-1 / 0-2 / 0 / 0) .143
6]一:藤谷 (5-0-1 / 2-0 / 0 / 0) .222
7]捕:長坂 (3-0-0 / 2-2 / 0 / 0) .286
〃投:牧 (0-0-0 / 0-0 / 0 / 0) ―
8]二:熊谷 (4-0-1 / 0-0 / 0 / 0) .125
9]遊:小幡 (3-0-1 / 1-1 / 0 / 0) .000
※片山、正確には打指捕
◆投手 (安-振-球/失-自/防御率) 最速キロ
岩崎 3回 54球 (3-2-2 / 1-1 / 3.00) 140
才木 5回 58球 (3-2-1 / 0-0 / 0.00) 151
牧 1回 13球 (0-1-0 / 0-0 / 0.00) 147
※球速はチーム計測による数字
《試合経過》※敬称略
まず攻撃から。1回は江越が鈴木翔の初球をレフトへ2試合連続の第2号!この先頭打者ホームランで先制すると、2回には2死から四球を選んだ小幡を一塁に置いて左中間へ第3号2ラン!3回は板山が一ゴロエラーで出ただけ。4回は先頭の長坂が四球を選んだところで投手交代。ついで熊谷の犠打、江越の四球、荒木の左前打などで2死満塁と攻めますが、ここは追加点なし。
5回は陽川が左前打、板山は四球、藤谷の遊ゴロで根尾が送球エラー、これで無死満塁となり、暴投で陽川が生還しました。次の熊谷は三ゴロでもう1点、小幡の遊ゴロで根尾が今度は捕球エラー、藤谷も還って(打点あり、小幡はプロ初打点)、なおも1死満塁は続き江越がレフトへタイムリー二塁打!さらに荒木も左中間へ2点タイムリー二塁打!打者10人で3安打ながら6点を取っています。
6回と7回は三者凡退でしたが、8回は先頭の代打・片山が右前打を放ち、捕逸で二塁へ。島田は四球を選び、暴投でそれぞれ進塁すると陽川も四球で無死満塁になり、板山が右前タイムリー!ライトのエラーで島田も還って、陽川は三塁へ進み藤谷の二ゴロで併殺が崩れる間に生還。この回も3点を加えました。
ついで投手陣。先発の岩崎は1回、先頭の根尾に四球を与え、石川駿にサード内野安打を許しますが後続を断って無失点。しかし2回は溝脇にライトフェンス直撃の二塁打を浴び(板山が好返球を見せるもセーフ)、次の二ゴロで1死三塁として8番・杉山に右犠飛。1点を返されました。3回は死球ヒットがあったものの0点に抑えています。
2人目は才木。まず4回を三者凡退に切って取り、5回は先頭に四球を与えて1死後にボークも取られますが無失点。6回はモヤに左前打、2死後に近藤の左翼線二塁打で二、三塁となるも、杉山は中飛。才木はベンチ前で外野陣の戻りを待ち、感謝の握手。7回は陽川のエラーで先頭を出しながら根尾のゴロを自ら捕って二塁へ送球!1-6-3の併殺で2死とします。石川俊の左前打のあとは遊ゴロでチェンジ。8回は6球で三者凡退でした。9回は牧が登板して三者凡退でピシャリ!
「焦らず、まず自分のやるべきことを」
才木投手は「きょうは結構低めにストライクを取れたり、空振りやファウルを取れたりしている印象があったので、真っすぐ自体はすごくいい方向にきていると思います」と振り返りました。課題にしていた追い込んでからの変化球の精度は?「きょうはどっちかというと、カウントを取りにいく時の変化球で打たれたりしたので、カウントを取れる変化球、カーブやスライダーの精度をもうちょっと上げていったらいいかなと」
守備でも助かった場面がありましたね。「そうですね。外野にも内野にも、すごく助けられたところが多かった」。自分でも。「え?ああ。自分で言うのもあれですけど、体が勝手に動いちゃった(笑)」。7回に併殺を取ったところです。自画自賛と書いておく?「あ~いや、書かないでください(笑)。でも本当に助けられました」
開幕ローテの最後の枠が未定である状況。そこを狙って?「もちろん、はい。まだ決まっていないので、チャンスがあるところは狙っていきたい。でも焦って、また調子を落としたりケガをしたりするのはダメだと思うので。焦らずにしっかり自分のいい形でいけるようにできたら一番いいかなと思っています。その中で開幕ローテーションに入れてもらえるようなことがあれば頑張りたい。まずは自分のこと、今やるべき課題をしっかり見直していきたいと思います」
取り組みの成果が出ている牧投手
次に、9回1イニングを三者凡退で締めた牧丈一郎投手。前回、16日のジェイプロジェクト戦で投げた時に「全部で力まず、リリースの瞬間だけ力を入れる」投げ方に取り組んでいると言っていました。今回はさらにそれが顕著に出ていた感じがします。先頭打者にはまだ少し硬さが見えたものの、三振を奪った2人目からは足を上げているあたりに力みはありませんね。
先頭はカウント3-0になって「フォアボールを出さないように」という思いだったそうで、4球目がストライク、5球目で三飛に打ち取りました。「去年は、スリーボールからフォアボールを出さないピッチングができたので」。それなのに、16日は2死からストレートの四球を与えてしまった自分に怒っていたんでしょう。「きょうはよかったです」と笑顔の牧投手。
ところで、ほどよく脱力できている理由はどこに?「二段フォームで間ができているんだと思います」。足を2回上下させてから踏み出す、いわゆる二段モーションですかね。きっかけは「安藤コーチと話をしていて」、その中で出てきた案みたいです。これが完成形というわけではなく「今、いい感じなので続けていきたいと思います」と話していました。
そうそう!試合に勝った時、ピッチャーはまずキャッチャーと手を合わせ、次に内野陣、外野陣を迎えてタッチし、監督やコーチ、ベンチの選手、スタッフの皆さんとタッチしますよね。鳴尾浜の場合はそこから整列してヒーロースピーチとなるわけです。でも牧投手は終わった瞬間に、野手と反対方向へ行こうとしました。あれは何だったの?「間違えた…。先に整列しようと思って」。そんな間違いもあるんですねえ。
3安打4打点の江越選手、外野陣の守り
試合後のヒーロースピーチは江越選手です。「きょうは応援ありがとうございました。1軍の開幕まで約1週間となりました。僕自身もそこに入っていけるように、またあすからしっかりアピールしていきたいと思います。これからも応援よろしくお願いします」という内容でした。
平田監督が「江越は見事だね!止められないよ。今の江越は菅野でも止められない。止められるやつはセ・リーグにはいない」と大絶賛で「1軍は見えているし、まだ1週間あるので、もっともっと矢野監督を悩ませてほしいね」と話していた直後に昇格が決まったんでしょうか。ぜひ京セラドームで暴れてきてほしいですね。
江越選手は「打席の中でタイミングだけ意識して、それがいい結果になっているので、今やっていることをしっかり続けていきたい」と言います。調子が上がってきた?「そうですね。調子もそうですけど、どうしても2ストライクから何とか粘ってというのが課題でもあるので、そこがここ何試合かはできていると思う。いいことは続けて、でもまだまだ他にもやることはあるので、しっかりそこをやっていきたい」
自分ではフルカウントからスライダーを打った2打席目の方がよかった?「そうですね。1打席目はピッチャーもストライクを取りに来るところでタイミングを合わせられた。それもよかったのはよかったんですけど、それよりも2打席目。追い込まれてからボール球をしっかり見て、捉えられたっていうのが自分の中ではよかったなと思います」
普通にこなせることが何よりの守備
開幕まで1週間、と自身もスピーチで言っていましたね。「ファームとはいえ結果を残せるように。練習では形をしっかり」。センターのポジション争いも熾烈です。「1年間は長いので、アピールし続けることが僕には大事だと思うんで。まずは今しっかりやらないと」。最後に、守備のことを聞いたら「守備は普通です」とサラリ。
この日、状況や動きをしっかり把握できているからこそ、“普通に見えた”いい守備がたくさんありました。中村豊守備走塁コーチは「外野、みんないいですよ。隙がない。しっかり集中できている。江越の能力と人間性も素晴らしい」と大きく頷きます。そして「板山のあの返球!」と。2回、先頭の溝脇選手が放ったライトフェンス直撃の打球に対し、板山祐太郎選手のクッション処理も二塁送球も見事だったと言えるでしょう。
「板山は3年間(1軍とファームを)行ったり来たりして、いろんなことを学んできたと思いますよ」と中村コーチ。でも板山選手本人は「普通です」と、江越選手同様の返事でした。点差や場面、打者と投手、打球、すべてを見て考えて相当な集中力でしょうね。「それはもちろん!当然のことなので」。そんな“普通”に、注目したいと思います。奇しくも、この日に引退を表明したイチロー選手の守備を思い出しました。
気を抜かずに心と体の準備を
最後は片山雄哉選手。プロ初安打は8回、カウント2-1から4球目の真っすぐを打ってライト前へ運んだものです。試合終盤に訪れた公式戦初出場は先頭の代打。しかも平田監督が「物おじせずブリトーに向かっていけるのは、あいつぐらいじゃないか?大したもんだよ。なかなか打てんよ」というブリトー選手に対し「差し込まれないよう自分のスイングができれば、と準備していました。外国人ピッチャーは力もありますが、そのへんは自分の中で集中して対処できたと思います」とのこと。
次はスタメンですね。「少ないチャンスというとこで、でも転機が来るかもわからないから。どこで(出ろと)言われてもいけるように気を抜かず、心と体の準備をしていきたい。それが最終的に、いい結果になればいいと思います」
この日、チームは試合後に着替えて荷物を出し、遠征へ出かけました。教育リーグでもタマスタや由宇へ行っていますが、試合後の移動は新人選手にとって初めてのこと。斎藤投手は「トラックに積んだ荷物は今夜出せないですよね?あすの朝ですか?何時ですか?」と小豆畑眞也サブマネージャーやドライバーさんに質問。自分で持っていきたいけどバッグには入らないから、運搬してもらうスーツケースに入れた物があるようです。行ったり来たりして悩んでいたけど、解決したんでしょうか。
片山選手も着替えて大急ぎでバスのところへ来た時に、我々が囲んで取材させてもらいました。しかも既に乗り込んだ先輩方も多く、気持ちは焦っていたかも。すみません。汗だくになりながら答え、それでも「いいですか?もう大丈夫ですか?」と確認してバスへ。きょうは出番がなかったけれど、また平田監督をうならせるような全力プレーを見せてきてください。
<掲載写真は筆者撮影>