中国内陸部で高さ100メートルの砂の壁出現 黄砂は29日に日本へ飛来
黄砂と言えば、日本では空が黄ばむくらいの現象ですが、大陸では人の命を奪うほど恐ろしい天災を引き起こします。
25日(日)に撮影された、中国・内モンゴル自治区の下の砂嵐の映像を見ると、私たちの抱く黄砂のイメージとは大きくかけ離れているのが分かります。
高さ100メートル近い巨大な砂の壁が押し寄せ、砂嵐にすっぽり覆われた町は一面赤茶色に染まり、視界はほとんど効かない状態となりました。交通事故も発生し、当然ながら大気汚染レベルも急上昇しました。
巻き上げられた砂は西風に乗って、27日(火)に北京に、28日(水)には北朝鮮や韓国に到達しました。
なぜ春に黄砂?
春が黄砂の季節なのは、砂漠に積もった雪が解け、次々と発生する低気圧の風によって飛ばされるからです。
中国でもっとも砂嵐が発生する月は4月で、3月と5月がそれに続きます。それぞれの月の平均発生数は4.3回、3.6回、2.8回で、砂嵐の年間発生数の約80%が春に起きています。
黄砂の起源は、ゴビ砂漠やタクラマカン砂漠、黄土高原などです。特にゴビ砂漠は「黄色いドラゴン」と呼ばれ、春になると砂を口から吐き散らす迷惑な存在なのです。
黄砂の被害
砂漠に近いモンゴルや中国では、黄砂は強風を伴う現象のため被害は深刻です。特に規模の大きな砂嵐は「黒風暴(カラブラン)」とおどろおどろしい名前が付けられています。その破壊力は莫大、視程も50メートル以下で、多数の死者行方不明者が出ることも珍しくありません。
被害は砂の発生源から離れるほど小さくなります。しかし韓国では、精密機器工場に入り込んだ黄砂が製品の不良を起こしたり、日本でも航空機の欠航を引き起きたりしたこともあるようです。
今年は多い砂嵐
黄砂は春の風物詩とはいえ、今年は勝手が違うようです。中国の気象局によると、今年の春は2013年以来でもっとも頻繁に砂嵐が発生しており、例年の2.1倍に達しているというのです。
特にひどい砂嵐が3月中旬に起きたものです。14日にゴビ砂漠で発生した砂嵐がモンゴルで10人の命を奪い、その翌日には北京で「過去10年で最悪の砂嵐」を発生させ、不気味に色づいた空を見つめ「世界の終わりのようだ」とつぶやいた人もいたほどでした。
なぜ多い?
なぜ今年は砂嵐が多いのでしょうか。
それは砂の発生源の天候に関係があります。2月後半が高温や少雨となったため、雪解けが早く進み、砂が飛びやすい状況であったこと、さらに3月には低気圧が次々に発生したことなどが背景にあります。
加えて、近年の砂漠化の影響も無視できません。ゴビ砂漠は世界でもっとも拡大している砂漠とも言われています。このため中国では、黄砂による経済被害が年々拡大しているのです。
29日は黄砂に注意
一般に黄砂が日本に運ばれるまでの時間は、ゴビ砂漠が起源なら2~3日、タクラマカン砂漠なら5~6日といいます。
今回の黄砂も日本にもやってくるようです。気象庁の予想によれば、29日(木)、つまり昭和の日には九州や中国地方、さらに北海道の一部に黄砂が達する恐れがあるそうです。アレルギーや呼吸器疾患などをお持ちの方は、特にご注意ください。
※参考文献※
「黄砂とその健康影響について」 (環境省) PDF