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国内で使える、肉用芯温計ベストバイ2021

松浦達也編集者、ライター、フードアクティビスト

前稿ではデジタルクッキングスケール(電子はかり)の2021年のベストバイを探ってみた。めったに買い替えが発生しないキッチンツールだけに、メーカー側にもアップデートの声が届かないということなのかもしれないが、アップデートに対する認識が弱すぎた。地味ながら信頼できるツールを作り続けるのは大切だが、その「信頼」を得るための条件や生活者の料理との向き合い方は日々変わり続けている。

とりわけこの10年ほどすごい勢いで進化を続けているのが、「加熱」用ツールだ。アメリカではこの数年、家庭用の超高機能コンベクションオーブンが低温調理器でブレイクしたAnovaやJUNEなど、数年前までなら100万円ほどもしそうな機能を備えた、超高機能スチームコンベクションオーブンが約10万円で各社がリリースしている。

うっかりいま「スタートアップ各社」と書きそうになったが、Anovaはもはやスタートアップと呼ぶにはふさわしくなかった。もともとAnovaは2013年にクラウドファンディングのKickstarterでブレイクしたスタートアップだったが、2017年にスウェーデンの家電メーカー、エレクトロラックスに2億5000万ドル(約260億円)で買収されている。

話を戻そう。アメリカ人の肉への執着は尋常ではない。アメリカは肉を中心とした「加熱調理市場」なのだ。そもそも、週末のBBQに人生を賭けるほどの気合を見せるアメリカ人の肉への執着は半端ではない。コンテストではBBQグリルの中に下ごしらえした肉を突っ込んで、温度とスモークをコントロールしながら数十時間も加熱し続ける。

そんな土壌があるから、繊細な肉の加熱ができる低温調理器も、家庭用コンベクションオーブンも生まれるし、肉用の芯温計もBBQグリルやオーブンの中に温度計(の針)を伸ばすタイプが開発されるなどそのすそ野も広い。

連投で注文をつけるようで恐縮だが、ぜひ日本の計測機器メーカーにもキャッチアップしていただきたい。少なくとも食材に刺すタイプの温度計を発売しているメーカーは海外との差を知っているはずだ。

僕自身10年ほど前は、肉を焼くときに火の入り具合を確認するため、国産メーカーのプローブ(棒針を刺すタイプ)温度計を使っていた。。よくフレンチの肉焼きシェフが金串を肉に刺したものを下唇の下に当てて、火の入り加減を確認しているが、原理としては同じだ。

ただし、大きく違うのがフレンチのシェフが使う金串は内部の温度を刺してからすぐ反映するが、当時僕が使っていた芯温計はすぐには温度が反映されなかった。温度表示はじわじわと上がるが、15秒ほど待たなければ温度表示が安定しないこともあった。

よほど巨大な塊肉なら別だが、肉焼きの仕上がり間際にこの15秒はドキドキして心臓に悪い。しかもこの機種はプローブが太い。温度が安定するまで肉に突っ込んでおくと肉の中に直径数mmの丸い穴が開いてしまう。

だから当時知人にアメリカ製の芯温計を買ってきたもらったときには驚愕した。肉に刺すとみるみる温度が上がって数秒も立たずに温度が安定する。おまけに全部ではないが、先端が細いプローブの温度計もある。

先端が太いものもあったが、それはプローブが2本ついている上にアプリで温度をスマートフォンに飛ばすことができるタイプの温度計だった。スマホで加熱のカーブが可視化されるので、「肉の芯温は最終的に58度まで上げたいので、この加熱カーブだと55度で加熱を止めたほうがよさそう」などどう加熱するべきかがわかる。

進化した温度計にもさまざまなタイプがある。僕が使うのは以下のようなタイプの温度計だが、それぞれに適性があり、向き不向きがある。

以下それぞれのタイプ適性を踏まえながら解説したい。

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編集者、ライター、フードアクティビスト

東京都武蔵野市生まれ。食専門誌から新聞、雑誌、Webなどで「調理の仕組みと科学」「大衆食文化」「食から見た地方論/メディア論」などをテーマに広く執筆・編集業務に携わる。テレビ、ラジオで食トレンドやニュースの解説なども。新刊は『教養としての「焼肉」大全』(扶桑社)。他『大人の肉ドリル』『新しい卵ドリル』(マガジンハウス)ほか。共著のレストラン年鑑『東京最高のレストラン』(ぴあ)審査員、『マンガ大賞』の選考員もつとめる。経営者や政治家、アーティストなど多様な分野のコンテンツを手がけ、近年は「生産者と消費者の分断」、「高齢者の食事情」などにも関心を向ける。日本BBQ協会公認BBQ上級インストラクター

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