教員増員を口にしない文科省大臣・副大臣は働き方改革を本気で考えているのか
萩生田光一文部科学大臣(文科大臣)は9月11日に就任後初の記者会見にのぞみ、教員採用試験の倍率が低下していることを質問されて、「学校現場が大変だということが、(学生には)もう学生時代からかなり先入観として持たれてしまう一面もあります」と倍率低下の理由について述べている。
ここで「先入観」という言葉を使ったことが、「先入観などではなく現実だ」と現場の教員からは反発もでている。学生が現場の大変さを懸念しているといった意味合いにもとれなくはないが、「先入観」という言葉は現場感情を逆なでするものでしかない。大臣の認識不足を表すものと受けとられても仕方ないだろう。
ともかく、そのあとに働き方改革にもふれ、「教員の皆さんができるだけ子どもたちと向きあって、本来の授業に大きな力を注ぐことができるように、周辺の事務作業ですとか、アンケートですとか、本当に細かいことで多くの時間を取られている一面もあります」との認識を示している。この大臣の認識は正しく、教員が子どもと向きあう時間を「余計な仕事」のために削られてしまっているのは事実である。
それを解決するために、「これからも必要があればそういうマンパワー投入してもですね、より充実した授業ができるように、しっかり体制をつくって」と述べてもいる。ただ記者会見録では、この「マンパワー」とは「授業以外の仕事を担うスタッフ」としか読めないのだ。
大臣のいう「マンパワー」には、どうも「教員」はふくまれていないようだ。この日の会見録のどこにも、「教員の増員」に類する言葉を見ることはできない。教員の働き方改革においては、教員の増員も大きなテーマである。にもかかわらず、萩生田大臣はスルーしているのだ。
そして9月13日には、この日に文科副大臣に就任した亀岡偉民、上野通子両氏の記者会見が開かれている。その席で上野副大臣は、「教師の仕事は昔にくらべ、量も増え内容も煩雑になっている」としながらも、やはり「教員の増員」にはいっさい言及していない。
それどころか上野副大臣は、「教師の質の担保と働き方改革のはざまで、現場は悲鳴を上げている」として、教職課程のカリキュラムの仕組みや4年制の可否などの議論が必要と訴えている。働き方の問題は教員の質に原因がある、とも受け取れるような発言ではないだろうか。
大臣にしても副大臣にしても、働き方改革は必要としながらも、そのために最も必要な「教員の増員」にはふれようとしない。焼け石に水にしかならないような細かい仕事を請け負うスタッフの投入を口にしたり、はたまた働き方改革と教員の質を混同させるような発言しかしていないのだ。本気で働き方改革に向き合う姿勢がみられない大臣と副大臣の発言に、今後の働き方改革の行方が懸念されるばかりである。