【超速報】年金の財政検証、結果はどうなった
27日夕方に、社会保障審議会年金部会が開催され、5年に1度行われる年金の財政検証の結果が公表された。この公表は、社会保障審議会年金部会の会合でお披露目されるのが恒例となっている。
参議院選挙前に検証結果が出なかっただけに、その内容は、政府にとって都合の悪いものだったのか、それとも正直に国民に示せたといえるのか。公表したての検証結果を紹介する。
会合で配付された資料はすべて公表されている(参考:第9回社会保障審議会年金部会)。
ただ、専門知識がないと容易に読みこなせないし、今回はこれまで以上に、厚生労働省の事務局が誤解されないように(やや誘導的な)文言を細かく図表に付している。
そこで、年金の財政検証で重要な数値を、社会保障審議会年金部会の配付資料の中から抜き出してみよう。次の表を見れば、主要な検証結果はこれ一つで見渡せる。
見どころをいくつか紹介しよう。
まず、政府が国民に一番目にとめてほしいと思っているのは、ケースIからIIIである。そこでは、所得代替率が50%を超えている結果となっており、公的年金はいわゆる「100年安心」といえる結果になっている、というわけだ。所得代替率が50%を割ると、「100年安心」でないとの批判が出てくるが、そうではないと言いたげである。「所得代替率」という専門用語と「100年安心」の意図についての解説は、拙稿「年金の検証、またも安倍内閣の鬼門になるか」を参照されたい。
ただ、経済成長率が長期にわたり下がると、ケースIVからVIのような結果になる。その3つのケースでは、所得代替率は50%を割っている。この表では、注にあるように、敢えて「仮に財政バランスが取れるまで機械的に給付水準調整を進めた場合」の値を載せている。
社会保障審議会年金部会の配付資料では、ケースIVからVIの所得代替率は「50.0%」と記されている。というのも、マクロ経済スライドによる調整で2043年度に所得代替率が50%に到達した後は、注にあるように「給付及び負担の在り方について検討を行う」のであって、50%を割るまで給付水準調整を行うかどうかはわからないからであろう。
ケースIVからVIについても、配付資料上は所得代替率が50%を割らないことになっており、「100年安心」と言いたげである。しかし、所得代替率が50%に到達した後で、給付水準を50%のまま維持すると、年金財政では確実に積立金が払底する。それは、年金財政の収支が合わない(均衡しない)からである。年金財政に責任をもって議論するなら、そのことまで見通して考えるべきで、上の表にあるように「仮に財政バランスが取れるまで機械的に給付水準調整を進めた場合」の値がそれに相当する数字だろう。
ケースVIは、所得代替率が最も低く、年金積立金は2052年度に枯渇し、それ以降は毎年入る年金保険料と税だけを財源にして年金給付を行うという完全賦課方式になることを、厚生労働省も認めている。これは、5年前の2014年の財政検証でもそうだった。低成長ケースでは、年金積立金が底をつくことがあることを認めている点は、正直であり、厚生労働省の良心というべきだろう。
ただ、今回の財政検証での説明ぶりは、かなり気を使っているようだ。全体的にみると、ケースVIは極端に低成長のケースという雰囲気を醸し出している。6ケースの中で唯一マイナス成長のケースとなっている。だから、「ケースVIのような経済成長率にならないように努めれば、こうした悪い状況に陥らずに済む」と言いたいのだろう。
今後、今回の検証結果をもっと精査してゆく必要があり、それを踏まえて国民的な議論を経て、持続可能な年金制度の確立のための年金改革に着手してゆかなければならない。