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トラウトの骨折により、エンジェルスは沈んでいくのか。過去2シーズンの場合は…

宇根夏樹ベースボール・ライター
左から、マイク・トラウト、トレーナー、フィル・ネビン監督 Jul 3, 2023(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 7月3日、マイク・トラウト(ロサンゼルス・エンジェルス)は、5打席目を終えることができなかった。2球目に対してバットを振った際に――打球はファウルとなった――左手首を痛め、ミッキー・モニアックと交代した。次の投球をモニアックが空振りし、トラウトに三振が記録された。

 検査の結果は、有鉤骨の骨折。ジ・アスレティックのサム・ブラムは、手術が必要だろう、と報じている。同様の怪我に見舞われた選手の例からすると、1ヵ月から2ヵ月の離脱となりそうだ。7月4日、エンジェルスは、ジョー・アデルをAAAから再昇格させた。

 トラウトが定位置としていたセンターは、モニアックが守ることになるはずだ。7月4日の試合は、左から右へ、テイラー・ウォード、モニアック、ハンター・レンフローが外野に並ぶ。

 過去2シーズンとも、トラウトは、長期にわたって離脱している。2021年は、5月17日がシーズン最後の出場となった。昨シーズンは、7月13日から8月17日まで、30試合を欠場した。痛めた箇所は、それぞれ違う。2021年が右のふくらはぎ、2022年は腰だ。

 2021年のエンジェルスは、5月17日までの40試合が18勝22敗(勝率.450)、5月18日以降の122試合は59勝63敗(勝率.484)だった。昨シーズンは、最初の88試合が38勝50敗(勝率.432)、トラウト不在の30試合が13勝17敗(勝率.433)、復帰後の44試合は22勝22敗(勝率.500)だ。

 勝率の推移を見る限り、トラウトがいなくなると、エンジェルスはそれまでよりも勝てなくなる、とは言えない。離脱前と離脱中を比べると、各スパンの長さは違うものの、2021年の勝率は.450→.484と上昇し、2022年は.432→.433とほぼ変わっていない。

 ただ、過去2シーズンは、どちらも、トラウトが離脱する前から、エンジェルスは勝てていなかった。それまでの勝率が低かったので、トラウトがいなくなっても、さらに沈んでいくことはなかった、という見方もできる。また、2021年の場合、勝率はトラウト離脱後のほうが34ポイント高いが、それでも、このスパンも59勝63敗と負け越している(.001=1ポイントとして表記)。

 今シーズンの状況は、過去2シーズンとは異なる。7月3日までの87試合は、45勝42敗(勝率.517)だ。地区首位と6ゲーム差の3位、ワイルドカード・レースの3番手――正確には2番手タイに2チーム――とは3ゲーム差の5番手に位置している。

 仮に、ここからトラウトが復帰するまでのスパンも、エンジェルスが今までと同じ勝率を記録した場合も、ポストシーズン進出の望みは薄れていく可能性がある。他チームの勝敗にもよるが、上にいるチームとのゲーム差が変わらなければ、レギュラーシーズンの残り試合が少なくなるにつれ、追い抜くのは難しくなる。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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