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「SHOGUN 将軍」エミー賞での万感快挙 真田広之の功績と実力、そして人間力 #専門家のまとめ

斉藤博昭映画ジャーナリスト
エミー賞で作品賞と主演男優賞を受賞した真田広之(写真:REX/アフロ)

9/15(日本時間:9/16)に開催された、アメリカのテレビ業界、最大の祭典、第76回エミー賞で、「SHOGUN 将軍」がドラマシリーズ部門の作品賞、監督賞、主演男優賞、主演女優賞に輝いた。同作のプロデューサーで主人公の武将・吉井虎永役を演じた真田広之は、作品と主演男優の2冠。過去75回のエミー賞で日本人俳優の受賞はゼロなので、まさに歴史を作ったわけだが、ここまでの道のりは決してイージーではなかった。真田の努力と人柄も、ハリウッドでの成功の要因だったことが、いくつかの記事から実感できるはずだ。

ココがポイント

言葉使いから座り方などの細部にまでこだわり、舞台美術や小道具のスタッフも、日本の文化を理解している日本人を起用する
出典:Real Sound 2024/9/14(土)

映画と並行して人気ドラマシリーズにも次々に出演(中略)。この経験から後に「SHOGUN 将軍」に繋がるドラマ制作の舞台裏を学んだのだろう
出典:シネマトゥデイ/Yahoo!ニュース 2024/6/28(金)

この年齢だからこそ演じられる役があるわけで、そうした年齢の役は僕にとって“デビュー戦”だと思って取り組みます
出典:Safari online 2024/2/28(水)

・前夜の取材で「シーズン2」は日本での撮影も考えていると答える

エキスパートの補足・見解

日本でトップスターの地位を築き上げていた真田広之が、アメリカへ渡ったのは、2003年の『ラスト サムライ』がきっかけ。「ロサンゼルスへ移住した当時はマネージャーもエージェントもおらず、生きていけるかどうかもわからなかった」というから驚きだ。そこから英語をパーフェクトに習得しつつ、時には不本意だと思われる役もこなしながら、ハリウッドでの実績をじっくり積んでいく姿を筆者も見守ってきたので、今回のエミー賞受賞はじつに感慨深い。

真田はこれまでも、俳優として参加した作品で、日本の描写に明らかな違和感があった場合、丁寧に指摘してきた。「SHOGUN 将軍」ではプロデューサーという立場から、その使命をフルに発揮し、全世界に「日本の様式美」を届けることができた。それだけでもひとつの夢の達成だろう。動画でもわかるとおり、英語で直接コミュニケーションできるようになったことも大きいが、何よりこれだけの地位に就きながら、インタビューでもつねに謙虚で誠実に対応する姿から、信頼感を得ているのは間違いない。

そして今回のエミー賞受賞も、真田広之にとってはひとつの通過点。年齢を重ねながら、かつて誰も通ったことのない道を切り拓いていきそうだ。

「SHOGUN 将軍」ディズニープラスで配信中
「SHOGUN 将軍」ディズニープラスで配信中

映画ジャーナリスト

1997年にフリーとなり、映画専門のライター、インタビュアーとして活躍。おもな執筆媒体は、シネマトゥデイ、Safari、スクリーン、キネマ旬報、VOGUE、シネコンウォーカー、MOVIE WALKER PRESS、スカパー!、GQ JAPAN、 CINEMORE、BANGER!!!、劇場用パンフレットなど。日本映画ペンクラブ会員。全米の映画賞、クリティックス・チョイス・アワード(CCA)に投票する同会員。コロンビアのカルタヘナ国際映画祭、釜山国際映画祭では審査員も経験。「リリーのすべて」(早川書房刊)など翻訳も手がける。連絡先 irishgreenday@gmail.com

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