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新学期スタート、教員不足に怯える学校

前屋毅フリージャーナリスト
(写真:アフロ)

 4月になって、いよいよ新学期がスタートする。しかし、子どもたちを指導する教員の数はほんとうに足りているのだろうか。

|文科省調査では把握できない教員不足

「昨年度は、うちの学校では初任で担任をやっていた先生が新学期が始まって10日で辞めたんですが、正式に辞表を提出したのが7月でしたから、5月1日時点では居ることになっていたんでしょうね。時間講師(非常勤)が7月に来たんですが、それまでは他の教員が時間をやり繰りしながら、そのクラスの授業をしている状態でした」と話したのは、東京都の公立小学校の教員だった。

 文科省が同省としては初めてとなる「『教師不足』に関する実態調査」を今年1月に発表しているが、昨年度(2021年度)5月1日時点における全国小中学校での教員の不足人数は1701人となっている。そのなかで東京都の場合は、「0」となっている。

 しかし実際には、先の教員の学校のようなケースもある。実際には勤務していないにもかかわらず、辞表が出ていないために在籍していることになっている。いわば「幽霊教員」であり、不足人数が「0」となっているのは数字のマジックでしかない。

「1年ももたないで辞める初任者は少なくないし、年度途中で病気の長期休みから退職してしまう教員も珍しくありません」と、別の小学校教員が言った。人を集めやすいといわれる東京でさえ、教員を補充するのは簡単ではない。たちまち、学校は教員不足となる。

 その辞める日が、たまたま5月1日を過ぎていれば、文科省調査で「教員不足」に勘定されないことになる。新学期が始まってたったの1ヶ月足らずにもかかわらず1701人も教員が不足しているのも尋常とはいえないが、不足の人数がそれだけに留まっていないという現実は、とても無視できるものではない。

 ある中学校の教員は、「長期休みだけでなく、体調を崩して休む教員も多いのが現実です。新型コロナウイルス感染症の影響で休む教員も増えています。教員不足は常態化しています」と言う。そして、「その抜けた分を補える教員がすぐに見つからないのも現実です」と続ける。学校は、年中、教員不足の状態なのだ。

 辞めた教員、休んでいる教員の〝穴〟は、ほかの教員の負担としてのしかかる。ただでさえ多忙を極めているにもかかわらず、さらに負担が増えるのだ。それが体調不良につながり、休職や退職につながりかねない。まさに悪循環である。

 そんな現状に接したら、初任で早々に身を引きたくなっても無理はない。教員志望者が減るのも当然かもしれない。

 そうした現状が、前述の文科省調査では把握されていない。文科省や各自治体、各教育委員会が根本的な教員不足の解消に取り組まないかぎり、2022年度の新学期がスタートしても、学校現場は教員不足に怯えつづけなければならない。

 そんな状態で、希望に胸を膨らませて新学期を迎える子どもたちの期待に応えられるのだろうか。

フリージャーナリスト

1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。立花隆氏、田原総一朗氏の取材スタッフ、『週刊ポスト』記者を経てフリーに。2021年5月24日発売『教師をやめる』(学事出版)。ほかに『疑問だらけの幼保無償化』(扶桑社新書)、『学校の面白いを歩いてみた。』(エッセンシャル出版社)、『教育現場の7大問題』(kkベストセラーズ)、『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『全証言 東芝クレーマー事件』『日本の小さな大企業』などがある。  ■連絡取次先:03-3263-0419(インサイドライン)

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