イギリスで観測史上初めて40度突破
今から19年前のこと、ヨーロッパを空前絶後の大熱波が襲いました。普段は夏でも過ごしやすく、エアコンがほとんどついていない国々を直撃したものですから、死者数は7万人を超えました。今ヨーロッパ西部では、この時の気温を上回るような高温が所々で観測されています。
イギリス初の40度台
直近の記録からいくと、現地時間19日(火)12時50分にイギリスのヒースロー空港で40.2度が観測されました。これは英国における、国内最高気温記録です。これまでの記録は2019年にケンブリッジで出た38.7度でしたから、一気に1.5度も上回ったことになります。今後日暮れまでに、さらに記録が塗り替えられる可能性があります。
この熱波で、イギリスでは空軍の滑走路が溶けたり、線路が歪む恐れから電車が運休したと伝えられています。またバッキンガム宮殿では、赤色の制服と黒色の大きな毛皮帽をかぶった直立不動の近衛兵が、係の人からペットボトルの水を口に運んでもらう珍しい光景も見られました。余計なお世話かもしれませんが、夏服の検討も必要かもしれません。
イギリスにおける家庭のエアコン普及率はたった3%という調査もあります。命の危険が非常に高い状態です。当局は史上初めて猛暑が原因で「国家非常事態宣言」を発令し、気象庁もまた、史上初めて高温に関する「赤色警報」を発表して、人々に警戒を呼び掛け続けています。イギリスでは警報が色別でランク分けされており、赤はもっとも上のランクです。
熱中症感が続出のイベリア半島
さらに、ヨーロッパ南部の国々ではもっと恐ろしい高温が出ています。
14日(木)にはポルトガルで47.0度まで気温が上がって、7月としては前例のない高温となったほか、同じ日隣国スペインのマドリードでは40.7度まで上昇して、この地点の歴代1位の高温記録に並びました。ポルトガルとスペインでは、たった1週間で約1100人が熱中症で命を落としたと伝えられています。
頻発する山火事
高温、強風、乾燥の3条件が整ったスペインやフランスなどでは、大規模な森林火災が発生、多くの人々が避難を余儀なくされています。
列車に火の手が迫り、運転を見合わせたほか、ポルトガルでは消火作業に当たっていた飛行機が墜落し、パイロット1人が命を落としています。また下の写真のようにフランスのリゾートでは山火事の煙を背景に水着姿の人々が海水浴に興ずるという、何とも恐ろしい光景も見られました。
熱波の原因
この暑さの原因は何でしょうか。
一つはヨーロッパ大陸に高気圧が居座り、その周囲を流れる時計回りの風が、アフリカ北部の熱風を北に運んだこと、都市化、さらに温暖化の影響も指摘されています。ある研究では、ヨーロッパではこれまでに10年に1度の確率でおこる高温が今では3倍に、50年に1度の確率の高温は、なんと5倍の確率で発生するようになっているそうです。
暑さはいつまで
この暑さはいつまで続くのでしょうか。
高気圧が東にずれることで、高温のエリアも東にシフトしていきます。幸い、ロンドンやパリでは20日(水)の気温は10度以上下がる見込みですが、一方ベルリンでは平年の気温を15度も上回る40度が予想されています。
熱波に名前を
ヨーロッパでは昨年2021年も厳しい暑さとなり、イタリア南部シチリア島では欧州の最高気温記録となる48.8度が記録されたばかりでした。激しくなる熱波に、新たな試みで立ち上がっているのが、スペイン南部の都市セビリアです。
セビリアは熱波を3つのランクに分け、もっとも上位のランクの熱波には人名をつけることを決定しました。名前はスペイン語のアルファベットの逆順に並んでおり、最初の熱波にはZoe、続いてYago、Xenia、Wenceslao、Vegaとつけていくそうです。
世界気象機関は熱波への命名に賛同していないようですが、名前をつけることで人々の注目を引き、暑さへの警戒を高める一定の効果はあるように思えます。
※追記※
19日15時12分に、コニングスビーにおいて気温が40.3度まで上昇し、英国の国内最高気温記録となりました。