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伊シチリアで48.8度 ヨーロッパの観測史上最高気温

森さやかNHK WORLD 気象アンカー、気象予報士
高温記録が出た火のシチリア島の山火事の様子 (11日)(写真:ロイター/アフロ)

イタリアと言えば、その国土はブーツの形をしていますが、そのつま先で蹴られているように見えるのがシチリア島です。地中海最大の島で、映画ゴッド・ファーザーの舞台としても知られています。

この島の南東部に位置するシラクサという町で11日(水)、気温が48.8度まで上昇しました。シラクサは、その歴史的建造物や遺跡がユネスコの世界遺産に登録されています。

これまでの欧州の最高気温記録は、1977年7月10日にギリシャのアテネで観測された48.0度ですから、この48.8度という値が公式なものとなれば、ヨーロッパの観測史上もっとも高い気温として記録されることになります。

今夏の気温の推移

ヨーロッパ南部では今夏高温が続いていますが、いったいどれほど暑いのでしょうか。シチリア島のパレルモと、ギリシャ・アテネの気温の推移を見てみましょう。

パレルモとアテネのここ一カ月の最高気温の推移 (筆者作成)
パレルモとアテネのここ一カ月の最高気温の推移 (筆者作成)

パレルモの7月から8月の平均最高気温はおよそ30度ですが、特に7月後半からはそれを上回る日が続き、8月上旬には40.7度という高温が記録されています。

また同じく地中海に面するギリシャのアテネでは、平均最高気温が34度ほどのところ、7月下旬から8月上旬にかけては40度以上の異常な高温が続き、一時43度が記録されました。

想像を絶する山火事

過去30年で最悪とも言われる熱波の影響で、イタリアやギリシャでは大規模な山火事が数多く発生し、連日世界的なニュースとなっています。先日は観光地として知られるアテネのアクロポリスの背景が、周辺の山火事の炎で一面真っ赤に染まる映像を目にしました。

ギリシャ全土では、8月7日までの10日間に、ほぼ淡路島の面積に当たる570平方キロが焼失しました。これは例年のこの時期の34倍に相当するそうです。(2008年から2020年にかけてのこの時期の平均と比較)

またガーディアンによると、イタリアでは今年6月15日から8月上旬までの間に44,442件の山火事が発生したそうです。昨年の夏は26,158件であったので、すでに2倍近くに達しているといいます。

北米の山火事

今夏は北米でも記録的な山火事が発生していて、現在アメリカのカリフォルニア州では、州の観測史上最大となる「ディクシー・ファイアー」が延焼を続けています。

また6月末にはカナダ西部リットンで、国内最高気温記録の49.6度が観測された翌日に村の9割が燃えてしまう火災が発生するという痛ましい出来事が起きました。

こうした状況を見るにつけ、地球が悲鳴を上げている、そんな風に感じてなりません。

(↑凄まじい勢いで燃えるディクシー・ファイアーの様子)

NHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

NHK WORLD気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、横浜で育つ。2011年より現職。英語で世界の天気を伝える気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に新刊『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)、『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)、『竜巻のふしぎ』『天気のしくみ』(共立出版)がある。

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