Yahoo!ニュース

フィリピン首都で史上最高38.8度、世界的な異常高温

森さやかNHK WORLD 気象アンカー、気象予報士
25日、猛暑のマニラの光景。子供はプール、大人は洗濯。(写真:ロイター/アフロ)

日本はかつてないほど暑いゴールデンウィークを迎えていますが、一方でフィリピンの首都では過去最高気温が記録されました。

27日(土)、マニラで気温が38.8度に達し、これまでの同市の記録であった1915年の38.6度を上回り、過去最高記録となりました。

フィリピンで最も暑い時期は、雨季が始まる前の4月から5月です。この時期、太陽高度が日に日に上がりますので、さらに気温が上がる恐れがありそうです。現在のフィリピンの国内最高気温記録である42.2度(1912年)も、もしかすると塗り替えられるかもしれません。

クーラーのない教室

酷暑のため、フィリピンの公立学校の授業が一時的にリモート授業となっているそうです。過去には生徒が学校で熱中症になり気を失った事例もあり、フィリピンではもっとも暑い時期に学校が休みでないことに疑問が投げかけられていました。

昨年行われた公立学校の先生を対象とした調査では、ほとんどの教室にエアコンがなく、87%の学生が授業に集中できず、暑さが原因で学校を欠席する生徒も増えているといった事情が明らかになっています。

世界的な異変

昨年2023年、世界の平均気温は統計史上もっとも高くなりました。過去12万5千年間をさかのぼっても、これほど暑かった年はなかっただろうと推測する研究者もいます。

下の表は、ここ2か月間に生まれた世界の気温記録の例です。

過去2か月間の気温記録の例。Maximiliano Herrera氏、The Washington Postの情報をもとに筆者作成。
過去2か月間の気温記録の例。Maximiliano Herrera氏、The Washington Postの情報をもとに筆者作成。

また、陸地だけでなく世界の海水も過去最高水温を更新しています。

原因は何か

今の異常高温の原因は何か。人為的な温暖化やエルニーニョが主に指摘されます。しかしこれらだけが原因で、ここまで急激に暑くなるのだろうかと、専門家も首をかしげています。


○ キレイな空気
そこで、船舶の燃料規制によって大気がきれいになり海上の雲が減少、これにより太陽光が反射されにくくなったという説が数々の研究者の間で話されています。

実際、人間が排出する汚染物質が雲の形成に影響を与えて、太陽光を反射する雲が増え、結果的に気温を下げる効果があるという、いわゆる「トゥーミー効果」が前々から知られています。

○ 海底火山の噴火

また2022年に噴火したトンガの海底火山により大量の水蒸気が放出され、それが温室効果をもたらした可能性も考えられています。この説に関しては、水蒸気が放出された一方で、噴火で温室効果のあるガスも同時に放出されたため、その影響が相殺されたはずだという反論もあります。

○ 太陽活動

さらに、現在太陽活動が非常に活発であることから、その影響も考えられますが、太陽活動と地球の気温の関係についてはまだまだ不明な点が多いようです。

高温の背景が少しでも明らかになることを期待しつつ、この状況が一時的であることを願うばかりです。

NHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

NHK WORLD気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、横浜で育つ。2011年より現職。英語で世界の天気を伝える気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に新刊『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)、『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)、『竜巻のふしぎ』『天気のしくみ』(共立出版)がある。

森さやかの最近の記事