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メキシコで5月の過去最高51.1度記録 太陽活動との関係は

森さやかNHK WORLD 気象アンカー、気象予報士
水位の下がったダムと姿を現した16世紀の教会(メキシコ、2月)(写真:ロイター/アフロ)

4月の皆既日食に続き、いま北米はレアな自然現象に沸いています。11日(土)にはアメリカ南部のフロリダ州でもオーロラが空を彩りました。

時をほぼ同じくして、メキシコでは記録的な高温が報告されています。東部のガリナスでは9日(木)、気温が51.1度まで上昇し、メキシコおよび北米全体の5月の最高気温記録となりました。

熱波と干ばつにより、メキシコでは現在160件の山火事が発生しています。

農作物への被害も激しく、砂糖キビ、トウモロコシ、トウガラシなどといった作物にも被害が出ています。

その影響は世界的に有名なフイフォン社の「シラチャソース」という辛味調味料にも及んでいます。トウガラシの収穫量の減少、加えて干ばつで実が熟さなかったため、トレードマークである真紅の赤色が出ないという理由から、一時出荷がストップしたようです。世界の辛い物好きは、肩を落としています。


世界の高温記録

メキシコの暑さもさることながら、アメリカ南部、カリブ海諸国、さらに大西洋を隔てたアフリカ大陸、はたまた広くアジアでも高温記録が続出しています。

日本も観測史上もっとも暑い4月となりましたが、この先一か月も、気温はかなり高い状態が続くと予想されています。

太陽活動と高温の関係

フロリダのみならず、能登半島や西日本までオーロラが見られたとニュースになっていますが、こうした低緯度オーロラが見られるのも、いま太陽が活動期に入っているためです。太陽は11年サイクルの中でもっとも活発な時期に向かっています。

そこで疑問がわいてきます。太陽活動が活発になると気温は上がるのでしょうか。

NASAによると、はっきりとはそうと言えないようです。太陽活動の極大期には、地球の上層に届く太陽エネルギーも大きくなるものの、大気中で散乱、反射されるなどして地球の気温に与える影響は小さい可能性があるそうです。まだ不明なことも多く、今後の研究が待たれるとのことです。

地球の表面温度の変化(赤。太線は11年平均)と地球が受け取る太陽エネルギー(黄色。太線は11年平均)。出典: climate.nasa.gov
地球の表面温度の変化(赤。太線は11年平均)と地球が受け取る太陽エネルギー(黄色。太線は11年平均)。出典: climate.nasa.gov

(上のグラフは、地球の温度変化と地球が受け取る太陽エネルギーの変化を表したものです。1950年ごろまでは、太陽エネルギーと地球気温とに相関関係があるようにも見えますが、それ以降は太陽エネルギーの増減にかかわらず、地球気温は右肩上がりで上昇しているのが分かります。)

不吉だったオーロラ

その昔、人々はオーロラを不吉な現象だと信じていました。特に赤いオーロラは血を連想させるため、戦争の前兆や神の怒りなどととらえていたようです。

今でこそ、科学が謎を解明し、赤く輝く空をニコニコ見上げられる時代になりました。しかし、地球がいまだかつてない高温化に直面する今、今回世界で見られた珍しいオーロラ現象に何かの意味があるのではないかと、ふと頭をよぎってしまいます。

(↑フロリダ州の空。ヤシの木とオーロラの組み合わせが斬新。)

NHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

NHK WORLD気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、横浜で育つ。2011年より現職。英語で世界の天気を伝える気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に新刊『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)、『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)、『竜巻のふしぎ』『天気のしくみ』(共立出版)がある。

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