【Paris Design Week】コロナニモマケズ パリデザインウィーク 開催中
ヴァカンスが明けて初めのパリの恒例行事といえば、インテリア・デザインにまつわるイベントで、その筆頭がMaison&Objet(メゾン・エ・オブジェ)です。シャルル・ド・ゴール空港近くの巨大な見本市会場を舞台にしたこのイベントに世界中からバイヤーらが駆けつけることでパリ市内もにぎわいを見せるのですが、新型コロナ禍の今年はイベントそのものが中止になりました。四半世紀続く歴史のなかで異例のことです。ちなみに昨年9月のイベントでは、5日間の開催期間中およそ78,000人の入場者数を数えました。
そのかわり、ことしは「デジタルフェア」と題して9月4日から18日までインターネットで数多のアイテムにアクセスできるシステムが開発されています。わざわざ海外から足を運ぶ必要がなくなったととるか、やはり実物が集結するイベントとは比較にならないというべきか…。いずれにしても、このようなスタイルが新しいビジネスのひとつの方向性になることは間違いないでしょう。
【体験できるデザインフェア】
こんなふうに、あらゆるものがネット上で展開されるいま、今年で10年目を迎える「パリデザインウィーク」のほうは新型コロナ禍にもめげずに実現しました。オペラ界隈、サンジェルマン・デ・プレ界隈、マレ地区などで250のギャラリーやショップが参加し、新作を発表したり、デザイナーとのコラボ企画を展開したりしています。会期は9月3日から12日までで、各所の入場は無料。その道のプロたちはもちろん一般の人たちもデザイン散歩の感覚で、普段なら敷居が高くて遠慮してしまうような場所にも気軽に足を踏み入れてみることができるのです。
今回注目の展示をいくつかご紹介します。
こちらは、国立公文書館の博物館でもあるHotel de Soubise(オテル・ドゥ・スビーズ)での特別展示。
18世紀の邸宅建築の2つの空間を舞台にして、デザイナーPierre Gonalons(ピエール・ゴナロン)の世界が展開されています。23歳で自身のスタジオを設立し、ラリック、クロエ、ピエール・フレイなど有名ブランドどのコラボレーションをしているパリ在住のデザイナー。ちょっとポップな色の取り合わせがある一方で、大理石の塊を大胆に生かすなど、配色の奔放さとマチエールの贅沢さが共存しているところが特徴的です。
【自然志向のインテリア】
そしてこちらはMaison DADA(メゾン・ダダ)。
写真右の男性Thomas Dariel(トマ・ダリエル)と左の女性Delphine Moreau(デルフィーヌ・モロー)のフランス人二人が2016年に上海で立ち上げたブランドで、現在はパリと上海の両方に軸足をおいて活動しています。既成概念にとらわれないコンテンポラリーなインテリアデザインで、洋の東西をとわずファンを獲得。今回のBOTANICAというテーマは、人に温かく寄り添う、あるいは包みこんでくれるような、まさに時代が求める感覚を形にしたような世界観です。ちなみに、「上海のほうの購買力は確実に回復している」と、プレスを務めるソフィーさん。対してヨーロッパの展開はゆっくりですが、今回の会場に訪れる人達からはかなり前向きなエネルギーを感じたそうです。
【次の時代を見据えて】
また、北マレの大きなギャラリーには、有名デザイン学校の卒業作品や、若手クリエーターのブランドが集結していました。
出展者も見る人も全員がマスク姿という異例の今シーズン。とはいえ、難しい時勢にもめげず、次なる世界の風景を発想する力、そして具体的に形にして発表する力は健在なのだ、と、気持ちもカラフルにしてくれるようなデザインウィークになりました。