なぜレアルは“154億円”でベリンガムを確保したのか?エムバペの移籍騒動とシステムチェンジの挑戦。
若き才能が、ビッグクラブでの挑戦を決めた。
レアル・マドリーは今夏、ジュード・ベリンガムを獲得している。移籍金1億300万ユーロ(約154億円)をボルシア・ドルトムントに支払い、19歳のイングランド代表MFを確保した。
マドリーにとって、高額な移籍金での選手獲得だった。
エデン・アザール(移籍金1億ユーロ/2019年夏加入)、ガレス・ベイル(移籍金1億100万ユーロ/2013年夏加入)、クリスティアーノ・ロナウド(9400万ユーロ/2009年夏加入)…。近年、アタッカーの獲得に大金を投じてきたマドリーだが、ベリンガムを引き入れて中盤を補強している。
■ベリンガムの成長
ベリンガムは、2020年夏、移籍金3000万ユーロでバーミンガム・シティからドルトムントに移籍。そこから考えると、およそ3倍の額で、この度の移籍が成立している。
3年で、ベリンガムの価値は非常に高まった。その理由は、彼の成長度合いにある。
「ベリンガムには、執念と賢さがある。ただ、成熟しているというだけではない。礼儀正しく、インテリジェントで、常に正しい反応をする」とはドルトムント時代にコーチとしてベリンガムを指導したレネ・マリック氏の言葉だ。
「トレーニングでは、適したプレーをするだけではなく、意図を明確に理解してチームメートに伝えていた。正しい答えを言うだけではなくて、正しい質問ができる選手だった。だから現在のレベルまで、これだけ早く達したのだと思う。才能があり、なおかつ自分を、プレーを理解するのに時間がかからないんだ」
ベリンガムはドルトムントで2020−21シーズン、ブンデスリーガ29試合に出場して1得点3アシストを記録。21−22シーズン(32試合3得点8アシスト)、22−23シーズン(31試合8得点5アシスト)と数字を伸ばしていった。
■ベリンガムの移籍と布陣変更
22−23シーズンには、ブンデスリーガの最優秀選手に選ばれた。そのベリンガムにマドリーが期待するのは、中盤の労働、そして得点力である。
マドリーは、カリム・ベンゼマ、マルコ・アセンシオ、マリアーノ・ディアス、アザールが昨季限りで退団した。ベリンガム、フラン・ガルシア、ブラヒム・ディアス、ホセルを加えて新たなチームビルディングが行われている。
マドリーは、このプレシーズンで、システムを変えてプレーしている。従来の【4−3−3】ではなく【4−4−2】を選択。カルロ・アンチェロッティ監督は布陣を変更して、主力の退団、とりわけベンゼマの移籍をカバーしようとしている。
2018年夏にクリスティアーノ・ロナウドが退団して以降、マドリーはベンゼマが得点源になってきた。ベンゼマは18−19シーズン(リーガ21得点)、19−20シーズン(21得点)、20−21シーズン(23得点)、21−22シーズン(27得点)、22−23シーズン(19得点)とゴールを量産してきた。
■エムバペの加入の可能性
「プレシーズンツアーは疑惑を残した」(8月4日付スペイン『マルカ』紙)という見出しが踊ったように、このプレシーズンでは、マドリーに課題が出た。ミラン戦、マンチェスター・ユナイテッド戦で勝利を収めた一方で、バルセロナとのクラシコ、ユヴェントス戦では敗れている。
そして、これがキリアン・エムバペの移籍問題にかかわってくる。パリ・サンジェルマンと2024年夏まで契約を残しているエムバペだが、今夏移籍を志願しており、パリSGのプレシーズンツアーには参加しなかった。移籍先の希望、その最優先はレアル・マドリーであると言われている。
パリSGは先日、ゴンサロ・ラモス(ベンフィカ)を確保した。また、ウスマン・デンベレ(バルセロナ)の獲得を決定的としている。だが、さらなる補強を望んでおり、そのためにはエムバペの売却が必要になる。
ベリンガムの加入でマドリーの戦力が強化されたのは間違いない。あとは、エムバペがどうなるかーー。マーケットを注視する日々は続く。