なぜ三笘薫はブライトンで活躍しているのか?“671億円”で選手を売却しても強い理由。
スポーツ的側面で結果を出して、それを金銭面の成功につなげる。あるべき形が、そこにはある。
近年、欧州で躍進しているのがブライトンだ。昨季、プレミアリーグを6位でフィニッシュ。クラブ史上初となるヨーロッパリーグ出場権獲得を果たした。
ただ、ブライトンに課題がないわけではない。
「122年のクラブの歴史において、我々は初めて欧州の舞台でプレーする。それは収益につながるが、同時にコストがかかってくる。お金を稼ぐ、というだけの問題ではない」とはポール・バーバーCEOのコメントだ。
「うまくやればやるほど、我々の選手たちは他クラブに引き抜かれてしまう。しかし一方で、我々は高いレベルを維持するための選択肢を得る。そのバランスを見つけなければいけない」
■主力の売却
ブライトンは今夏、モイセス・カイセド(移籍金1億1600万ユーロ/約183億円/チェルシー)、アレクシス・マクアリステル(移籍金4200万ユーロ/約66億円/リヴァプール)、ロバート・サンチェス(移籍金2300万ユーロ/約36億円/チェルシー)といった選手たちを売却している。
この数年でいえば、マルク・ククレジャ(移籍金6530万ユーロ/チェルシー)、
イヴ・ビスマ(移籍金2920万ユーロ/トッテナム)、レアンドロ・トロサール(移籍金2400万ユーロ/アーセナル)、ニール・モペイ(移籍金1180万ユーロ/エヴァートン)、ベン・ホワイト(移籍金5850万ユーロ/アーセナル)、ダン・バーン(移籍金1500万ユーロ/ニューカッスル)らが引き抜かれた。
ブライトンはこの4年で、選手の売却益で4億2445万ユーロ(約671億円)を得ている。
■強いチームの維持に向けて
では、そのような状況で、どのように強いチームを維持するのか。再び、バーバーCEOの言葉だ。
「すべてはアカデミーから始まる。我々のアカデミーにおいては、最高の環境が用意されている。そして、移籍のマーケットで、賢く動くべきだ。我々は無限にお金を使えるクラブではない」
「我々は若い選手を探している。彼らをここで、あるいは他クラブにレンタルして育てるんだ。また、我々は少しスケールの小さいリーグを注視している。そちらの方が、コストパフォーマンスが高くなる可能性があるからだ。この数年、そのように働いている」
2018年夏には、ロワイヤル・ユニオン・サン・ジロワーズを買収した。そこにレンタルされ、まさに頭角を現したのが、三笘薫だ。
三笘は2020年夏に川崎フロンターレからブライトンに移籍。イギリスでの労働許可証発給問題があった影響もあるが、2020―21シーズン、サンジロワーズにレンタル放出された。
「たられば」であるのを百も承知で言えば、三笘が一気にプレミアリーグに行っていたら、現在の活躍があったかは分からない。ベルギーリーグで揉まれる期間を設け、スピードやプレー強度に慣れる時間があったから、最終的にブライトンで爆発した。
■ブライトンの育成
また、近年、カンテラ(育成組織)においてはホワイト、R・サンチェス、ソリー・マーチ、タリク・ランプティ、ルイス・ダンク、エヴァン・ファーガソンといった選手を輩出している。
ホワイトやR・サンチェスは、カンテラ出身なので、いわば移籍金ゼロで獲得した選手だ。彼らの売却値を見れば、費用対効果(コストパフォーマンス)が計り知れないのは明らかだろう。
「カイセドのことを引きずってはいない。私は、現在のメンバーを誇りに思っている」
「我々は成長を望んでいる。すべてはクラブの功績だ。ビッグクラブが、我々の選手を買おうとするかも知れない。しかし、我々の魂やスピリットを買うことはできない」
「我々はスカッドを完成させる必要がある。ここに来たい、という選手が欲しい。我々はブライトンだ。昨シーズン、素晴らしい成績を残した。リヴァプールと同等、チェルシーより良い成績だった。ブライトンでプレーしている選手には、それを誇りに思ってもらいたい」
これはロベルト・デ・ゼルビ監督の言葉だ。
ブライトンでプレーする誇りーー。指揮官が語るように、それがブライトンの本当の強さの源なのかもしれない。