新型コロナウイルスで飲食店閉鎖 余剰食品10倍増、受取施設の14%閉鎖 日本だったら?
新型コロナウイルスによる日米の感染者数および死亡者数
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関し、日本国内の感染者数は、2020年3月24日7時の時点(厚生労働省発表)で感染者数1,128名、死亡者数42名となった。
米国では、2020年3月23日時点(米・疾病対策予防センター発表)で感染者数33,404名、死亡者数400名となっている。
米・フィラデルフィアでは3月17日以降、飲食店での飲食中止
米国・ペンシルベニア州の都市フィラデルフィアでは、2020年3月17日付で、必要とされるビジネスを除いて営業中止となった。フィラデルフィアは人口150万人以上、全米で5番目に大きい都市だ。市の通達により、飲食業に関しては、持ち帰りや配達のみ営業となった。スーパーマーケットなどは営業許可されているが、3月17日以降、フィラデルフィアにある数百におよぶレストランが営業中止、もしくは営業を制限された。
米国最古のマーケットでも飲食部門は持ち帰りと配達のみの営業に
フィラデルフィアには、1893年2月22日創業、米国で最古のマーケット、リーディングターミナルマーケット(Reading Terminal Market)がある。1階にある飲食店のレストラン部分は閉鎖し、持ち帰りのみとなった。ただし、グローサリー部門は営業している。
フードバンクなどに救済を求める食品の量が普段の10倍に
WHYYの記事(2020年3月21日付)によれば、フィラデルフィア市内にあるフードバンクなど、余剰食品を引き取る団体に救済を求める食品の量は、3月17日以降、普段の約10倍にも膨らんだ。
米国内には約210のフードバンク団体があり、商品としては流通できないものや、企業が寄贈した食品などを引き取り、食品を必要とする組織や人たちへとつなぐフードバンク活動を行っている。
フィルラデルフィアにはPhilabundanceという大規模なフードバンクの他に、規模の小さな団体がある。たとえばフードコネクト(Food Connect)やフィリー・フード・レスキュー(Philly Food Rescue)、シェアリング・エクセス(Shareing Excess)、フーディング・フォワード(Fooding Forward)などの非営利団体が、余剰食品を引き取り、必要とする人たちへとつないでいる。
2週間で250人以上のボランティアがキャンセルに
しかし、引き取りを必要とする食品の量が普段の10倍に膨らむ一方で、フードバンクのボランティアは激減している。新型コロナウイルスの影響だ。
前述のHYMMによれば、大規模フードバンクのPhilabundanceは、2週間で250人以上ものボランティアがキャンセルになったそうだ。
公式サイトでは食品・資金・ボランティアの提供を募集しており、公式Twitterアカウントでも、膨大な量の食品の箱詰め作業の映像と共に、ボランティアへの参加を広く呼びかけている。
350施設のうち50施設が3月19日までに閉鎖
大規模フードバンクのPhilabundanceは、ウイルスの飛散を防ぐための配送システムや集荷システムを導入し、実践している。だが、寄贈された食品を受け取る側の350施設(agencies)のうち、14%にあたる50施設は3月19日までに閉鎖されてしまった。なぜかというと、このような施設は高齢者によって運営されており、彼らは新型コロナウイルスに抵抗できるだけの免疫力を持たず、脆弱だからである。
つまり、寄贈できる食品は普段の10倍量も生じているが、フードバンクで即戦力となるボランティアが数百人単位でキャンセルになり、食品を受け取る側の施設も7分の1が閉鎖してしまっている、ということになる。
Fooding Forwardによれば、フィラデルフィアには、健康を保つために必要な食料を確保できない人(フードセキュリティに欠ける人)が5人に1人の割合で暮らしているという。食料を必要とする人は確実に存在しているが、その手元まで届けるための施設や人が、コロナウイルス感染症の影響で確保できない状況のようだ。
フィラデルフィア市長は休校で食品が必要な子どもにTwitterで呼びかけ
それでも、フィラデルフィアでは、関係者が協力しあって、食べ物を必要とする人に届けようと努力している。
フィラデルフィア市長のJim Kenney氏は、公式Twitterで、休校になって給食のない子どもたちがどこで食べ物を無償で受け取ることができるかを知らせている。
平日の午前9時からお昼の12時まで配布しており、どこで配布されるかのリストはフィラデルフィア市の公式サイトに掲載している。
日本でも休校措置が取られたが、茨城県つくば市では希望者には給食を提供すると宣言し、市長が公式Twitterで投稿していた。
米国最大の都市ニューヨークでもフードバンクのボランティア不足
米国内の他の都市ではどうだろうか。
米国最大の都市、ニューヨークは、感染者数が米国最多の州となっている。
ニューヨーク市の公式サイトを見ると、フィラデルフィア同様、必要なサービスは営業を継続させ、それ以外は止めている。食品の製造やグローサリーは営業可能、レストラン・バー・カフェについては「持ち帰りか配達のみ」としている。
ニューヨークのフードバンクは、食事が必要な人に対し、スープキッチン(無料食堂)やパントリー(余剰食品の提供)の場所や時間帯を公式サイトで呼びかけており、フィラデルフィアのフードバンク同様、「もっとボランティアが必要」だとして参加を呼びかけている。
また、ニューヨーク市の公式サイトでは、食べ物を必要とする子どもたちへ、3月23日から市内400カ所で無料の食事配布を始めるとし、平日の午前7時半から午後13時半まで実施としている。朝食も含めて、1日3食だ。
日本の今後は?
フィラデルフィアでは、寄贈可能な食品の量が10倍に増えたものの、それを必要とする人へつなぐフードバンクのボランティアが数百人単位でキャンセルされ、食品を受け取るための施設も7分の1がクローズという事態が生じている。生きていくために食べ物や水は必要だが、それを必要な人へと届けるのは「人」なのだ。その「人」の動きが制限されている。
日本でも、2020年3月23日、東京都知事の小池百合子氏が「ロックダウン(都市封鎖)などの措置を取らざるを得ない可能性もある」と見解を示した。
米国だけでなく、欧州でも、不要不急の外出を避ける生活は、市民の心の準備の間も無く始まった。
日本でも、政府が2月末に突如として休校要請を出したため、すでに発注作業を終えている全国の学校給食関係の事業者は大変なことになった。それを受けて、農林水産業が、食品事業者とフードバンクとをつなぐ役割を宣言した。フードバンク関係者の中には「連日、事業者からの申し出はないというメールを受け取っている」という人もいる。
農林水産省が3月16日に発表した、休校措置により余剰となってしまった学校給食の食材の販売サイト、食べて応援、学校給食キャンペーンは、3月17日にはアクセスが殺到したせいか、終日、つながりにくい状況だった。3月24日の午前11時現在、売り出されている食品は、ボロニアカツ250個入り11,070円(税込)や、小松菜500g20束、5,400円(税込)の2品目のみとなっており、「水産品」や「その他」をクリックすると、スマホからもPCからも「メンテナンス中」と表示される。お菓子や畜産品は全部売り切れ。販売単位や価格が業務用向けだが、寄付よりも事業者に収益が入るので、なかなかいい取り組みだと思う。今後が期待される。
日本全国には100程度のフードバンクがあり、3,700以上の子ども食堂がある。が、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、子ども食堂の中には閉鎖したところもある。ニューヨークやフィラデルフィアのように、毎日、必要な人たちへ食事を提供できてはいない。フードバンクの活動も、米国同様、ボランティアに大きく依存している。そればかりか、日本の食料支援は、米国に比較すると、民間や非営利団体に大きく依存し過ぎている。
人が「鎖国」状態にならざるを得ない現状で、食品の輸出入まで閉ざされたら、食料自給率37%の日本の食生活はどうなるのだろう。食料の入手が困難な人(フードセキュリティに欠ける人)だけではなく、すべての人が今から考えておく必要があるのではないだろうか。
関連情報
Local food rescuers save tons of produce from going to waste (WHYY, March 21st, 2020)
米国のCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)の状況(米国疾病対策予防センター)
Food Bank For New York City公式サイト 「COVID-19への対応について」
ニューヨーク市公式サイト「子どもたちへの無償の食事提供について」
食品ロスと貧困を救う「フードバンク」は資金不足 持続可能なあり方とは
休校でも給食は希望者へ提供するつくば市の英断 給食が命綱の子どもが日本全国にいる
フィラデルフィアの大型フードバンク、Philabundanceの公式サイト「COVID-19について」
フィラデルフィア市 2020年3月17日付「Non-essential businesses to close until further notice」
フィラデルフィア市 2020年3月14日付 「Find free meals for students while schools are closed」