休校でも給食は希望者へ提供するつくば市の英断 給食が命綱の子どもが日本全国にいる
政府が突如示した、全国小中高校の休校方針の要請。すでに3月分を発注していた給食の食材業者は、加工食品を安価で販売したり無償で配布したりする事例も出ている。給食で余った食材を学童で使うという事例もある。しかし、休校方針の要請が急過ぎて、生ものの食材は、もうどうしようもない。家畜のエサにする、という対応も出ているが、本来は、人が食べるものだったはずだ。
茨城県つくば市は「登校可能、希望者に給食提供」
そんな中、茨城県つくば市の英断に注目が集まっている。休校にはするが、登校は可能で、希望者には給食を提供する、というものだ。
岡山県井原市は、中学と高校は休校にするが、共働き家庭の負担を考慮して小学校は休校せず、給食も提供することに決定した。
京都市は、特別支援学校では給食を実施する。
どの自治体の対応も、低学年の児童や支援が必要な子ども、共働き家庭など、弱い立場の子どもや、休校により負担を被る保護者への配慮が伝わってくる。
休校自体実施しない自治体も
一方、小中高校を通して休校を実施しないと決めた自治体もある。
群馬県太田市は、保護者の負担が増えるとして、休校は実施しないと決めた。
石川県金沢市も、議論や周知の期間がないとして、休校要請を拒否した。
そもそも学校保健安全法では、学校を休業するかしないかは学校の設置者の権限としている。名古屋大学大学院准教授の内田良氏は、2月28日付の記事で、
と述べている。本来、教育委員会が決めるべきことなのだ。
千葉市は保護者対応不可の場合、学校で低学年児童を受け入れ
千葉市の対応も早かった。保護者が対応できない場合、小学校低学年(1・2年)の児童は学校が受け入れ、自習を可能としている。
学校給食しか食べるものがない子どもがいる
突然の休校要請に対し、学校給食の現場は対応する余裕がない。そこで発生する食品ロスも相当なものだろう。給食現場で働く人たちや、給食の食材を納入する人たちにも混乱を起こしてしまっている。
しかし、何より気になるのは、学校給食しか食べるものがない子どもたちがどの地域にもいることだ。筆者がフードバンクのセカンドハーベスト・ジャパン(東京都台東区)で働いていた時、その事実を知って衝撃を受けた。
理由は様々だ。経済的困窮の場合もあれば、親自身の障害や精神障害、あるいは虐待の場合もある。
「そんなの今の日本にいるはずない」と主張する人もいるだろう。国のトップが「今の日本に夕飯の米(コメ)がない家はない」という趣旨を発言するのも耳にした。自分の周りしか見ようとしない人はそう思うだろう。
筆者も、食品メーカーに勤めていた時代は知らなかった。フードバンクの職員になって、初めて現場を知ったのだ。今の日本では「見えない」貧困イコール貧困が「存在しない」ではない。見えないのは、見せないから、あるいは見えないような場所に居るからだ。
たとえば、首都圏の家庭で、親が、その親(子どもにとっての祖父母)からネグレクト(育児放棄)を受け、自分の子どももネグレクトしているケースがあった。「ご飯にゴキブリが炊き込まれても平気でいる親がいる」という話は、首都圏の、ある社会福祉協議会から聴いた言葉だ。
様々な理由から、親が食事を作らず、給食しか食べるものがない小学生は、ご飯を食べに学校へ行く。
しかし、その学校が1ヶ月以上、閉鎖したら・・・
コロナウイルスの関係で、休業しているこども食堂もある。その子たちは、どこで今日のご飯を食べればいいのだろう?
台湾の休校対応が称賛された理由とは
台湾の休校措置は既に終了しているが、彼らの休校宣言は、単に呼びかけて終わり、ではなかった。あらかじめ、休校により負荷がかかるであろう共働き家庭に配慮し、看護休暇が取れるようにし、企業が有給休暇を拒否したら処罰されるようにした。
上じゃなく、下を見て!社会的に弱い立場にある子どものことを考えて
上司ばかり見ている社員のことを揶揄して「ヒラメ社員」と呼ぶことがある。今、上ばかり見ている人は、企業に限らないかもしれない。
本来、政治は、社会的立場の弱い人を配慮する施策を取るべきでは?
SDGs(持続可能な開発目標)も、「誰一人取り残さない」という理念を掲げている。
今回、給食の食材は、残念ながら食品ロスになってしまうことが推察される。しかし、ロスよりも気になるのは子どもたちの命だ。給食に毎日の食事を依存している子どもが確実に存在することがわかっている以上、その子たちに食事を届けることはできないだろうか。
認定NPO法人グッドネーバーズ・ジャパン(東京都大田区)は、休校措置により食べ物に困窮するであろう、ひとり親家庭への食料提供を発表している。また、ワタミは、今回の臨時休校要請を受け、小学生・中学生・高校生を対象に、1食税込200円で弁当を提供すると発表している。
もちろん、給食の現場で働く人たちの負担も考えなければならないが、食がなければ子どもたちの心身の健康をむしばむばかりか、命を失うことにもなりかねない。