西日本だけでなく東日本も梅雨前線に警戒 21年前には「6.29水害」
九州を中心とした大雨
令和2年(2020年)の梅雨は、梅雨の中休みを挟んで最盛期となっています。
6月27日(土)は、前日に引き続き、本州付近に停滞している梅雨前線に向かって暖かく湿った空気が流れ込んだことから、九州北部を中心として各地で大雨を観測しました。
福岡県久留米市では、1時間雨量がこれまでの記録を更新する92.5ミリを観測しました。
ここ3日間での大雨は、九州では400ミリを超える所があり、東北地方から北陸、山陰地方でも所により100ミリを超えています(図1)。
梅雨前線の停滞
梅雨前線は小刻みに北上したり南下しますが、大きくみれば本州付近にしばらく停滞する見込みです(図2)。
このため、本州、四国、九州は雨や曇りの梅雨空となります。
また、梅雨がないとされる北海道でも、低気圧が次々に通過して雨の日が多くなり、蝦夷梅雨(えぞつゆ)と呼ばれる雨の日が多い天気となる予想です。
今年の梅雨のこれまでの特徴として、梅雨前線付近のどこででも雨が降るのではなく、局地的に激しい雨が降る地域(雨に警戒)と、晴れている地域(紫外線と熱中症に警戒)が混在していることがあげられます。
6月28日(日)の梅雨前線は、西日本付近で少し南下し、東日本付近で少し北上しますので、強い雨域が東日本に移ります(図3)。
東日本も雨に警戒が必要です。
また、西日本でも、一時的に南下した梅雨前線が北上することで再度大雨の可能性が出てきます(図4)。
気象庁では5日先までに警報を発表する可能性があるかどうかを、早期注意情報として発表しています。
この早期注意情報によると、九州では28日(日)、29日(月)、30日(火)も、大雨警報を発表する可能性が「高」または「中」です(図5)。
九州を中心に大雨警報が発表される可能性が高い状態はしばらく続きます。
強い雨が降った地域に、あまり時間をおかずに再び強い雨が降ると大災害が発生する可能性がさらに高くなります。
梅雨末期に豪雨が発生することは珍しくありませんが、末期でなくても大災害が発生することがあります。
今から21年前の6月29日がそうでした。
「6.29水害」
今から21年前の平成11年(1999年)は、6月23日から7月3日にかけて梅雨前線の活動が活発となっています(図6)。
特に、6月28日から29日の中部地方から九州地方では、1時間に100ミリ近い激しい雨が降り、期間降水量は、九州地方から中部地方の山沿いで600ミリを超えています(図7)。
このため、各地で土砂災害や浸水被害が発生し、死者・行方不明者39名、浸水家屋2万棟という大きな被害が発生しました。
このときの大雨は、「平成11年6月豪雨」と呼ばれることがありますが、中でも、6月29日午前の福岡県福岡市、同日午後の広島県広島市・呉市の災害は、新しい都市災害として注目されています。
福岡県ではJR博多駅の地下街に濁流が流れ込んで1名が死亡するなど、地下街が水浸しとなっています。
地下街への浸水によって都市機能が麻痺するという、新しい都市型水害の被災例といわれました。
このため、この時の大雨を「平成11年福岡豪雨」と呼ぶことがあります。
また、広島県では新興住宅地で土石流が発生し、30名以上が亡くなったことから、新しい都市型土砂災害の被災例といわれ、「平成11年広島豪雨」と呼ぶことがあります。
「6.21水害」から21年、都市化がさらに進んでいますので、災害も変化している可能性があります。
都市防災の再点検が必要ですが、現時点においては、まず、目先の危機対応です。
新型コロナウイルス対策は、あくまで命あっての対策です。
自分の身は自分で守る心構えで、最新の気象情報を入手して警戒してください。
タイトル画像、図1、図3、図4、図5の出典:ウェザーマップ提供。
図2、図6、図7の出典:気象庁ホームページ。