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アクアブルーの清流は必見! “日本の滝百選”認定の七ツ釜五段ノ滝と「西沢渓谷」トレッキング

上町嵩広登山レポーター

◆東京近郊ハイキング・レポ◆(0005)

奥秩父・甲武信ヶ岳の南麓を流れる日本有数の渓谷トレッキングコース。色鮮やかで透き通った渓流と数々の滝は見応え満点です。

<趣意>
東京とその近郊のハイキングで個人的なお気に入りのコースをピックアップして紹介いたします。

<こんな方にオススメ>

(1)渓谷等のリバーサイド・トレッキングが好き
(2)ガッツリ登山よりも体力を必要とせずに自然の中を歩きたい
(3)滝が好き

西沢渓谷案内図
西沢渓谷案内図

<概要>

西沢渓谷 (にしざわけいこく)
所在地: 山梨県山梨市
山梨県北部の奥秩父・笛吹川源流部にあたる渓谷。
「日本の秘境百選」(JTB選定)、「森林浴の森百選」(林野庁等選定)。多くの滝がありもっとも有名な七ツ釜五段ノ滝は「日本の滝百選」(環境省・林野庁後援)。
台風被害による一部通行止めから2024年となり3年ぶりにトレッキングコースの全体が通行再開となった。

<ハイキングコース>

西沢渓谷の入口を起点・終点として反時計回りに周遊するルートです。初夏は目に麗しい新緑、盛夏は清涼な渓流や秋は紅葉と3シーズンを通して自然を満喫できる、登山初心者や入門者も楽しめるトレッキングコースという印象です。

西沢渓谷入口
西沢渓谷入口

さっそく清流が見えてくる
さっそく清流が見えてくる

「西沢渓谷入口」バス停からスタートです。甲武信ユネスコエコパークの看板の脇の林道を進みます。ゲートを越えて立派なトイレ棟を過ぎて甲武信ヶ岳登山のための徳ちゃん新道への分岐の先からいよいよ西沢渓谷に入ります。吊り橋を渡り、いったん森のなかを上がってから渓谷へ下りていきます。さっそく渓谷の青い清流を目にすることができます。残念ながらこの日は曇天のため色鮮やかさは半ばという感じでしょうか。

三重の滝
三重の滝

人面洞
人面洞

竜神の滝
竜神の滝

まず最初の滝・三重ノ滝の滝見台で観望し、本格的に渓流沿いの道を進んでいきます。この先は急流の際ギリギリの濡れた岩床を歩くところもありますのでトレッキングシューズなどの適切な靴が必要になります。渓流脇の道は起伏が多少ありますが、急登などはあまりありません。このあとも竜神ノ滝、恋糸ノ滝や貞泉ノ滝などいくつもの滝が続きます。滝好きにはたまらないコースではないでしょうか。

渓流際の道
渓流際の道

西沢渓谷の激流
西沢渓谷の激流

急流の際を振り返る
急流の際を振り返る

トレッキングコース前半としては渓流沿いスレスレの道でなおかつ幅の狭い道やゾーンが多いので通行するほかの登山者に配慮してあまり長い間立ち止まったり休憩できる場所が少ないです。とはいえ、何ヶ所かはすこし広さがある川岸部分もありますのでそこで岩に腰かけてコーヒーを淹れてゆっくりと清流を眺めて楽しむことができそうなところも見つけられるでしょう。

母胎渕。甌穴だそうです。
母胎渕。甌穴だそうです。

渓流の際の岩場
渓流の際の岩場

方杖橋が見えてくる
方杖橋が見えてくる

登山道は鎖が付いた箇所もあります。うっかり滑って落ちてしまえば急流にのまれてウォータースライダーさながらに流されてしまいかねないため足元には注意が必要です。渓流の青さと新緑のコラボレーションが美しい。関東屈指の渓谷美を満喫しながら登山道を進みます。木造の方杖橋を渡るといよいよ七ツ釜五段ノ滝に迫ります。

七ツ釜五段ノ滝の下段
七ツ釜五段ノ滝の下段

七ツ釜五段ノ滝まだまだ下段
七ツ釜五段ノ滝まだまだ下段

新しく架けられた橋。強固な鋼鉄製。
新しく架けられた橋。強固な鋼鉄製。

七ツ釜五段ノ滝の上段
七ツ釜五段ノ滝の上段

数年前の台風被害で最近はこの先は通行止めとなっていました。新しく鉄骨の橋が架けられて2024年からふたたび七ツ釜五段ノ滝を間近に見ることができるようになりました。新しい橋に差しかかると滝が見えてきますが、全容ではありません。七ツ釜五段ノ滝はワンスポットで一望できるのではなく、橋を渡りさらに滝の脇を通過しながらようやく滝の全体像を眺めていくことができる規模感です。迫力満点、数重に連なる滝の奔流は素晴らしいの一言に尽きます。立派な橋を再構築していただいた関係者の皆様にたいへん感謝です。

七ツ釜五段ノ滝の先から斜面を上がる
七ツ釜五段ノ滝の先から斜面を上がる

シャクナゲ群生地の斜面
シャクナゲ群生地の斜面

七ツ釜五段ノ滝の右岸をぐるっとたどっていきます。七ツ釜五段ノ滝を見終えてその奥の不動ノ滝が西沢渓谷トレッキングコースの最奥部といってよいでしょうか。この先は渓谷を外れて谷上へ斜面を直登気味に登っていきます。一帯はシャクナゲ群生地となっていますので平年ですと5月後半ごろにピークを迎えるようです。

西沢渓谷終点(トレッキングコースの最高点)
西沢渓谷終点(トレッキングコースの最高点)

西沢渓谷終点の広場
西沢渓谷終点の広場

トロッコ軌道の跡を歩く
トロッコ軌道の跡を歩く

木製の階段をしばらく上がっていきますとトレッキングコース上のピークに着きました。ベンチがいくつか置かれて簡易トイレも設置されています。またコースのおおよその中間地点となっており一番の休憩適地となっています。しかし残念ながら眺望はさほどありません。右手に進めば黒金山の登山コース、左手が西沢渓谷周遊コースの続きでありバス停に戻ることになります。

渓谷や渓流沿いに整備されたトレッキングコースはほかにもいくつもあるかと思います。しかし西沢渓谷ほど間近に渓流を歩いて急流を実感したり青く澄み切った清流を目に焼き付けることができるルートはなかなかないかと思われます。東京近郊にお住まいの方ならばぜひ一度は行ってみてほしいなーと思います。

トロッコ軌道の案内板
トロッコ軌道の案内板

新緑の林間コース
新緑の林間コース

奥秩父・甲武信主脈山塊の案内
奥秩父・甲武信主脈山塊の案内

雲を被った鶏冠山
雲を被った鶏冠山

コースの後半は渓谷から離れた林間コースになります。かつてのトロッコ軌道が残った周遊ルートを進んでバス停へ戻ります。前半のような渓流はなく静かな森の登山道を歩いていきます。ところどころで左手に渓谷の北方にそびえる鶏冠山の姿を目にすることができ、途中にはベンチも置かれた展望地もあります。

静かな新緑の森のなかを進む
静かな新緑の森のなかを進む

カワズ池
カワズ池

音取大橋を渡るとトレッキングコースももうすぐ終わり
音取大橋を渡るとトレッキングコースももうすぐ終わり

鮮やかな新緑が一面を覆いつくす森のなかを進んでいきます。道は歩きやすく森林浴にはピッタリではないでしょうか。カワズ池まで下りてくると西沢渓谷トレッキングコースももう終わりです。音取大橋を渡ると元来た道にあったトイレ棟に合流です。ふたたび道を戻ってバス停に着けばゴールです。

西沢渓谷周辺の俯瞰図
西沢渓谷周辺の俯瞰図

西沢渓谷は関東屈指、日本でも有数の渓谷美といえるのではないでしょうか。もちろん全体的な規模からいえば大杉谷、黒部峡谷や奥入瀬渓流にはかないませんが、その分、短い距離と小さな世界に森と渓谷の魅力がぎゅっと凝縮されています。とくに東京から日帰り可能でかつ半日のトレッキングで自然を満喫できる希少なスポットだと実感します。

[行程表]

※標準的タイムによる目安(休憩除く)
「西沢渓谷入口」バス停→ 徳ちゃん新道分岐(30分)→ 三重ノ滝(20分)→ 七ツ釜五段ノ滝(60分)→ 西沢渓谷終点(20分)→ 展望地(20分)→ 大久保沢(15分)→ 音取大橋(40分)→ 「西沢渓谷入口」バス停(20分)
コースタイム/ 4時間程度(休憩除く)
標高差/ 300m程度

[アクセス]

●往路
JR中央本線「塩山」駅から路線バス(山梨交通バス)で「西沢渓谷入口」バス停まで60分程度。
●帰路
「西沢渓谷入口」バス停から路線バスが2路線あります。
「塩山」駅行き(山梨交通バス)で同駅まで60分程度。
「山梨市」駅行き(山梨市民バス)で同駅まで60分程度。
《補足》
「塩山」駅と「山梨市」駅は中央線特急「あずさ」や「かいじ」が停車する便もあります。
塩山駅~西沢渓谷入口間の山梨交通バスは季節運行で冬季から春先は運休です。※運行時期はその年により異なるため事前要確認。
山梨市民バスはPASMO・Suicaなどの交通系ICカードは利用できません。

[ハイキングコースの補足]

道標は要所に設置されているので迷うことはほとんどないと思います。
渓流の際ギリギリの濡れて滑りやすい岩床の道を歩くところもあるため足元に注意が必要です。
急登はほとんどありませんが、七ツ釜五段ノ滝から西沢渓谷終点の斜面は直登気味に登り上げます。
トレッキングコースの前半は渓谷沿いの道、後半は林間コースになります。
渓谷沿いの登山道は原則一方通行とされています(バス停から渓谷終点方向)。
西沢渓谷は冬季から春先までは立入規制されます。
●水場やトイレなど
水場は登山道上にはありません。
トイレはバス停近くの国道140号線、音取大橋のそば、西沢山荘跡、西沢渓谷終点(簡易トイレ)にあります。

[難易度・危険個所など]

渓流沿いの道は濡れた岩のため滑りやすいです。
一部の登山道は非常に狭く片側は渓流側に切れ落ちています。とくに紅葉シーズンには込み合います。通行の追抜き等の際にはほかの登山者との体やザックの衝突などにご注意ください。

<西沢渓谷の魅力>

(1)アクアブルーの渓谷美
その際立った渓流の青さは絶品といっても過言ではないかと思われます。渓谷全体が花崗岩質であるため川床の白さが光をよく反射して西沢渓谷独特の煌めく輝きを生み出すようです。四国の仁淀川の「仁淀ブルー」という言葉は有名ですが、こちらも「西沢ブルー」などという言葉があってもいいのではないでしょうか。
(2)数多くの滝と七ツ釜五段ノ滝
単なる急流・清流というだけでなく、渓谷内には大小さまざまな滝がいくつも断続しています。そのなかでも七ツ釜五段ノ滝(日本の滝百選)はトレッキングコースのクライマックスにあり、5つの滝と7つの滝壺からなる景勝となります。荘厳という言葉もふさわしく、西沢渓谷のシンボルでもあります。

<補足情報>

[売店等]

「西沢渓谷入口」バス停そばに売店があります。名物は草餅です。
同バス停からすぐそばに国道140号線が通っており、近くにある「道の駅みとみ」には売店や食堂が入っています。
「塩山」駅と「山梨市」駅には売店が併設されています。
「塩山」駅そばにはお土産物屋さんがあります。「山梨市」駅そばにはコンビニエンスストアがあります。

[日帰り温泉など]

塩山温泉「宏池荘」 塩山駅
「はやぶさ温泉」
最寄バス停:「放光寺入口」(山梨交通バス)または「隼上」(山梨市民バス)
「花かげの湯」
最寄りバス停:「花かげの湯」(山梨市民バス)

[お食事処]

「道の駅みとみ」内に食堂があります。
「甲州ほうとう 完熟屋 本店」 ほうとう等/塩山駅
「御食事処 歩成 本店」 ほうとう等/山梨市駅

[付近の山]

甲武信ヶ岳
乾徳山
雁坂峠
笠取山
金峰山

[そのほかの補足]

●甲州市観光案内所
塩山駅そば。
●山梨市観光案内所
山梨市駅そば。
●恵林寺
武田信玄の墓所。夢窓疎石が開山し、「心頭滅却すれば火もまた涼し」の言葉で知られる快川紹喜が住職を務めた。塩山駅から北へすこし離れた場所にある。

道の駅みとみ
道の駅みとみ

道の駅みとみ・食堂のメニュー
道の駅みとみ・食堂のメニュー

<今回お立ち寄りした施設>

●道の駅みとみ
「西沢渓谷入口」バス停そばを通る国道140号線沿いにある道の駅です。大きくはありませんが売店があり、ほうとうなどの山梨県の特産品や銘菓そして地元の野菜や山菜などが販売されています。また食堂も併設しており、”いのぶたラーメン”などちょっと珍しいメニューも提供されています。バス停からは徒歩で5分もかからない程度の距離です。
リンク先: 「道の駅 みとみ」 ※公式サイト

<参考リンク>

山梨市観光協会 ※公式サイト
秩父多摩甲斐国立公園 (環境省)

(2024/06/12 上町嵩広)

登山レポーター

登山やトレッキングに関する極私的な観点からの感想や記録のレポートがメインです。登山道の情報だけでなくお食事処や立寄り湯などの関連情報もお伝えしていきたいと思います。皆様の今後の山行のお役に立ち、またこれから登山を始めたいと考えていらっしゃる方のためになれば幸いです。登山歴は15年ほど。普段は奥多摩や丹沢周辺に出没し、八ヶ岳や北アルプスにも出張ります。雪山やテント泊もやっています。ブログ「note」内でマガジン『登山の魅力』や『歴史に連なる山登り』なども掲載しております。よかったら併せてご覧ください。好きな山は「編笠山」(八ヶ岳)。山の抱負は「ちょっとだけ背伸びした山を登ってみる」

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