アップル、iPhone13減産へ 半導体不足深刻化 中国の電力不足長期化で影響波及か
米アップルが最新スマートフォン「iPhone 13」の減産を余儀なくされる見通しだと、米ブルームバーグやロイターが報じた。世界規模の長期的な半導体不足を理由に、2021年内の生産目標を最大1000万台引き下げる可能性があるという。
21年の生産目標、1000万台引き下げ
報道によると、アップルは21年10〜12月期に13シリーズ全体で9000万台を生産する計画だった。だが、米半導体メーカーのブロードコムとテキサス・インスツルメンツ(TI)による十分な量の部品供給が難航しており、アップルはアジアの製造パートナーに期間中の生産台数を減らす旨を伝えている。
アップルは世界最大規模の半導体購入企業。スマホ部品のサプライチェーン(供給網)に大きな影響力を持ち、これまでこうしたトラブルに巻き込まれなかった。
しかしその強力な購買力をもってしても、他の企業と同様の問題に直面するようになったとブルームバーグは伝えている。半導体大手各社は22年も需要が供給を上回るとの見通しを示しており、この状態はさらに長引く可能性もあると警告している。
ブルームバーグによると、アップルはTIからディスプレー部品の供給を受けている。新型iPhone向け部品で供給不足となっているTI製半導体の1つは、OLED(有機EL)ディスプレーの電力供給に関するもの。またブロードコムは長年、アップルに無線関連部品を供給している。アップルは他のサプライヤーの部品不足問題にも直面しているという。
販売店に入荷遅れ、納期は4週間先
こうした問題は、すでに新型iPhoneの出荷体制に影響を及ぼしている。米アップルの直販サイトでは、上位モデルの「iPhone 13 Pro」と「同13 Pro Max」の配送日が3〜4週間先という状況。直営店「Apple Store」での受け取りもできない。iPhoneを扱う通信事業者の店舗でも入荷遅れが生じているという。
入荷遅れの問題は10〜12月期の売上高に影響を及ぼす可能性があると指摘されている。昨年10〜12月期におけるアップルの売上高は1114億3900万ドル(約12兆7200億円)で、四半期として初めて1000億ドルの大台を突破した。
21年10〜12月期は、前年同期比約7%増の1200億ドル(約13兆7000億円)になるとみられている。この金額は10年前における1年分の売上高を上回る(図1、$100b=1000億ドル)。
香港のカウンターポイント・リサーチはiPhone 13の販売が好調で、昨年のiPhone 12を上回っていると分析している。だがアップルのティム・クックCEO(最高経営責任者)は投資家向け説明会で、「これまでパソコン『Mac』とタブレット端末『iPad』に影響が及んでいた電子部品供給問題が主力iPhoneにも波及し、販売が制約される」との見通しを示した。
半導体リードタイム延長、中国で深刻な電力不足
米サスケハナ・ファイナンシャル・グループによると、半導体の、発注から納品までの供給リードタイムは9カ月連続して延びている。健全とされるリードタイムは12〜14週間。だが21年6月は19週間で、サプライチェーンの危険水域とみなされる16週間よりも長かった。これが21年9月には21.7週間となったという。
これらの遅延に加え、スマホの主要製造拠点である中国で電力不足問題が長期化している。アップルのサプライヤーで電子機器画面のタッチパネル部品を手掛ける台湾の宸鴻光電科技(TPK)は政府による電力制限を受け、中国南東部・福建省にある工場の生産計画を見直した。iPhoneの組み立てを手がける台湾・和碩聯合科技(ペガトロン)も中国工場で規制を順守し電力使用を制限している。
- (このコラムは「JBpress Digital Innovation Review」2021年10月14日号に掲載された記事を基にその後の最新情報を加えて再編集したものです)