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バスケットボールU18日本代表:最後までタフに、そして冷静に戦い抜いた日本がイランにリベンジ

青木崇Basketball Writer
攻防両面でイランへのリベンジに大きく貢献した河村 (C)FIBA.com

 7日間で7試合というハードなスケジュールの中で迎えた5位決定戦、イランよりも1試合多い日本は疲労が蓄積。ガード陣が足を相当使い、フロントラインはサイズとフィジカルの強さで上回る相手に体力を削られていた。しかし、イランにリベンジするという強い気持は、松崎裕樹(福岡第一高3年)の3Pシュートをきっかけに試合開始から5分強で14対4とリードし、先に主導権を握る要因となる。1Qで6点を奪った中村拓人(中部大第一高3年)は、試合序盤について次のように話す。

「今大会を通して最初のスタートが悪く、自分と松崎が取りに行かないとチームの得点が伸びないと思っている。前の試合を見つめ直したら前半がダメだったので、自分が点を取りに行かなければ、と思ってやりました」

 一方のイランは、モハンマドレザ・タギロウがテクニカルファウル、エーサン・ダリルザハンがアンスポーツマンライク・ファウルを取られるなど、日本よりもレフェリーとの戦いに気を取られていた。2Q7分38秒にこの試合最大となる12点のリードを奪うなど、日本は前半のFG成功率が26.5%とながらも、厳しいディフェンスを継続し、29対22とリードしてハーフタイムを迎える。

 しかし、ハーフタイムで一度冷静さを取り戻したイランは、3Q開始早々に本来の力を発揮して9連続得点で逆転。ダリルザハンのドライブから決めたレイアップがきっかけとなり、活発なボールムーブからビッグマンのアミルホセイン・レザエイファルが3Pシュートを決めていた。日本は悪い流れを断ち切るため、6分46秒にタイムアウトをコール。そして、直後のオフェンスで河村勇輝(福岡第一高2年)のアシストから富永啓生(桜丘高2年)が右コーナーからこの試合で唯一決まった3Pシュートですぐに逆転する。その直後、日本は武器であるトラップ・ディフェンスから河村がスティールしてそのままレイアップ、中村拓人もアンスポーツマンライク・ファウルをもらい、三谷桂司朗(広島皆実高2年)のオフェンス・リバウンドから結城智史(土浦日本大高2年)がフィニッシュし、リードを7点まで広げた。

 イランのタギロウが2度目のテクニカルファウルで退場になるなど、日本はフリースローで点差を広げるチャンスを得たものの、8本中1本しか決められない。3分25秒に三谷が富永との合わせからレイアップを決めたのが3Q最後のFGとなり、イランに3点差まで詰め寄られて最後の10分を迎える。

 リードしてもじわじわと追い上げられる展開の中で、4Q序盤で日本を牽引したのがU19ワールドカップを経験している中田嵩基(福岡大附大濠高3年)。4Q最初のオフェンスで得意の右ウイングから3Pシュート、2点差とされた後の6分54秒にもトップからジャンプシュートを決めたのは、リードを維持し続けただけでなく、イランに流れを渡さないうえで大きな意味があった。

4Q序盤に3Pシュートとジャンパーを決めるなど、チームリーダーとして仕事を堅実にこなした中田 (C)FIBA.com
4Q序盤に3Pシュートとジャンパーを決めるなど、チームリーダーとして仕事を堅実にこなした中田 (C)FIBA.com

 試合終盤は中田と交代して出場した河村が、ビッグプレーを連発する。5分37秒に24秒バイオレーション寸前に難しい体勢から3Pシュートを決めると、その後中村のレイアップと3Pシュートをアシスト。2分1秒には自慢のクイックネスを最大限生かし、結城のミスショット後にリバウンドを奪ったプレーは、時間を最大限使ってイランのオフェンス機会を減らした点で大きな意味があった。チーム最高となる18点を記録した河村は、試合をこう振り返る。

「相手が大きい分、小さいことの特権ですばしっこいことをやれば行けると思っていたので、それはよかったですけど、キックアウトのところを増やさなければという反省、課題も見えたのでいい試合になったと思います」

 3分19秒に富永がレイアップを決めたのを最後に、日本は1点も取れなかった。しかし、最後までディフェンスの足は止まらず、残り1.2秒で2点差とされるも、指揮を執る佐藤光壱アシスタントコーチが冷静にタイムアウトをコール。イランのファウル数が少なかったことも幸いし、着実にインバウンドパスを入れた日本は、60対58でイランへのリベンジを果たした。

「こんな結果になるとは…。昨日も今日も希望を持っていたけど、本当に選手たちが大きなプレゼントをしてくれたと思っています。各選手たちが一生懸命、元々所属チームでしっかり鍛え上げられた選手たちだということが、ここでもそれが生きてきているんだなと思います」

 吉田裕司ヘッドコーチのコメントに象徴されるように、日本はFG成功率30.6%、フリースローも50%という低い数字に終わりながらも、ディフェンスを最後までタフにやり続けたのが勝因。イランから21本のターンオーバーを誘発させて16点を奪い、セカンド・チャンスからの失点も12に限定させたことも大きい。

ワールドカップは逃したが、イランへのリベンジを果たし喜びを爆発させた日本 (C)FIBA.com
ワールドカップは逃したが、イランへのリベンジを果たし喜びを爆発させた日本 (C)FIBA.com

「みんなでしっかり(トーステン)ロイブルコーチに恩返しするという気持で、必ずリベンジしようと訴えました。相手のコンタクトに対して自分たちも受け身にならず、立ち向かっていけたのが勝因だと思います」と語るのは、今大会の個人最多タイとなる11点をマークした中田。ワールドカップの夢が断たれても、ロイブルコーチから教わったことを実践した選手たちは、日本代表の誇りを持って戦い続けた。バーレーン戦の逆転劇に続いてのイラン撃破は、ハードワークと粘り強さを持ったチームだったと言っていいだろう。

Basketball Writer

群馬県前橋市出身。月刊バスケットボール、HOOPの編集者を務めた後、98年10月からライターとしてアメリカ・ミシガン州を拠点に12年間、NBA、WNBA、NCAA、FIBAワールドカップといった国際大会など様々なバスケットボール・イベントを取材。2011年から地元に戻り、高校生やトップリーグといった国内、NIKE ALL ASIA CAMPといったアジアでの取材機会を増やすなど、幅広く活動している。

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