トルコ占領下のシリア北部を所属不明の戦闘機が爆撃、反体制系サイトはロシア軍の攻撃との見方を示す
シリア軍の砲撃に対して、トルコ軍が応戦
シリア北西部のイドリブ県では、英国を拠点とする反体制系NGOのシリア人権監視団などによると、シリア軍が前日に引き続いて7月15日も、「決戦」作戦司令室の支配下にあるザーウィヤ山地方のカンスフラ村、バーラ村などへの砲撃を続けた。
シリア軍が使用した砲弾は300発以上に達し、砲撃で「決戦」作戦司令室の戦闘員3人が死亡、2人が負傷した。
「決戦」作戦司令室は、シリアのアル=カーイダであるシャーム解放機構とトルコの支援を受ける国民解放戦線(国民軍)などからなる武装連合体。
シリア軍の激しい砲撃に対し、「決戦」作戦司令室に加え、イドリブ県各所に監視所、拠点を設置して駐留を続けるトルコ軍部隊も、カフルナブル市一帯に展開するシリア軍の拠点を砲撃した。
シリア軍の攻撃は、7月14日にアレッポ市とラタキア市を結ぶM4高速道路で発生したロシア軍を狙った爆破攻撃に対する報復の一環(「シリアのイドリブ県でロシア軍を狙った爆発が発生、兵士3人負傷、ロシア・シリア軍は報復爆撃・砲撃を激化」を参照)。
この攻撃ではロシア軍兵士3人が負傷、ロシア軍が報復として14日にイドリブ県ザーウィヤ地方、ラタキア県クルド山地方を激しく爆撃していた。
トルコ占領地にロシア軍によるとされる爆撃
ロシア軍による爆撃は7月15日には実施されなかった。
トルコの占領下にあるアレッポ県北部のいわゆる「ユーフラテスの盾」地域では、7月15日晩、所属不明の航空機が拠点都市の一つバーブ市を爆撃した。
爆撃は同市ブー・ガザール地区のイーマーン・モスク一帯とアール・ナッジャール地区のサラーム病院一帯に対して行われ、両地域の住宅複数棟が倒壊し、女性と子供を含む住民10人以上が死傷した。
爆撃に関して、シリア人権監視団や反体制系サイトのZamanalwslは「ロシア軍によると思われる」と伝える一方、反体制系サイトのEldorarはロシア軍の攻撃と断じた。
ハサカ市のシリア民主軍拠点で大きな爆発
一方、北東部のハサカ県では、国営のシリア・アラブ通信(SANA)やクルド民族主義組織の民主統一党(PYD)に近いハーワール・ニュース(ANHA)によると、政府と北・東シリア自治局の共同統治(分割統治)下にあるハサカ市のムシャイリファ地区に設置されている人民防衛隊(YPG)主体のシリア民主軍の拠点の一つで大きな爆発が発生した。
これに関して、北・東シリア自治局の内務治安軍部隊(アサーイシュ)は声明を出し、爆発がイスラーム国との戦闘で回収された爆発性戦争残存物(ERW)を保管していた武器弾薬庫での電気のショートによるものだとしたうえで、「敵機の爆撃」だとする一部情報を否定した。
シリア人権監視団は、この爆発でアサーイシュとシリア民主軍の隊員9人が負傷したと発表した。
(「シリア・アラブの春顛末記:最新シリア情勢」をもとに作成)