Yahoo!ニュース

【高原町】継ぐ。そして紡ぐ大切な想い。

全速嫁タロゥかたつむり型ズボラ嫁ライター(都城市・小林市)

瑞々しいブルーベリーと優しい鴇色が目を引くコントラスト。こちらは、珍しいプラムを使ったソースでいただく、ふわふわとした食感が特徴の台湾かき氷なんです。みるだけでも美味しそうでしょ?ここは、高原町にある元「杜の穂倉」にできたお店「agave」さん(以下アガベ)。2024年8月10日にオープンした、ちょっと特別なお店です。

素敵な古民家風の佇まいは木の温かさを感じられて、高原町の自然豊かな雰囲気にも馴染む外観です。

お店に入ると、季節の風と採光を活かした空間があり木の香りもほのかに感じられます。中央にはレジャーブランドの椅子とテーブルがあり、お店の雰囲気とマッチしていておしゃれ度を引き上げています。

そして目を引くのが、この天井の高さ。古民家に良く見られる天井の造りは、初めて来たのにどこか懐かしさを覚えます。空間が広く感じられるので、開放感が違いますね。木製の装飾も雰囲気造りに一役買っています。

agaveさんの「特別」

こちらはアガベの店主、内山 圭さん。24歳という若さでのチャレンジです。店名は、お父様が好きな多肉植物「アガベ」のように、成長はゆっくりでも価値のある男になりたいと命名されたそうです。そんな男気溢れる内山さんは「事業承継」でこのお店を始められました。なかなか聞かない言葉ですが、事業承継とは経営していた方が後継者に事業に関する事柄を引き継ぐこと。内山さんは、事業承継で何を引き継いだのか、気になりますね。

緑のへべすジャムはグリーンを損なわない技術の開発に4年もの歳月がかかったそうです
緑のへべすジャムはグリーンを損なわない技術の開発に4年もの歳月がかかったそうです

レジ横に並ぶこれらは、高原町で料理研究家をされている中武榮子さんの商品。「花*あそび」というジャムとピクルスを製造販売するアトリエを運営されています。温かな色味のジャムが目にも鮮やかで、とても美味しそうに可愛らしく並んでいます。中武さんの商品は、素材の持つ個性を活かす事や、その季節に採れるものにこだわる丁寧な製法が特徴です。中武さんだからこそ生み出せる味は、県内外広くファンを持つ銘品ばかり。
その中武さんの思いを大切にしながら、秘伝のレシピやノウハウを引き継いでいるのが山内さんなのです。そんな内山さんは、現在は宮崎市に住まわれており、片道1時間以上かけて高原町に通いながら、お店の経営と中武さんのノウハウを学ばれています。

お店の外からも工程を見ることが出来ます
お店の外からも工程を見ることが出来ます

でも、どうして中武さんと内山さんの人生がクロスすることになったのでしょうか?それは2022年、高原町にある古民家カフェのクラフトコーラ開発で出会ったことがきっかけでした。元々シェフをされていた内山さんと中武さんが開発チームとして話を深めていくうちに、二人の熱い思いが繋がったといいます。中武さんは御年71歳。ご自身の思いを次世代に託すという、未来を掛けたご決断に心からの敬意を表します。もしお二人の出会いがなかったら、もし中武さんの決断が無かったら。私はこの素晴らしい味に出会う事はなかったのかも知れません。

更なるブラッシュアップ

「氷カップ」や「おかわり」があるのも珍しいですね
「氷カップ」や「おかわり」があるのも珍しいですね

現在販売されているものは台湾かき氷と、ドリンク類、それから高原町の米粉を使用した焼き菓子、花*あそびさんとの商品というラインナップになります。取材中もお客様が次々に台湾かき氷を頼まれ、あまりに美味しそうに召し上がるので、これはもう我慢できるわけがありません!私も猛暑という絶好のスパイスを感じながら、台湾かき氷(ミルク氷)のプラムを食べてみることにしました。

台湾かき氷 プラム(ミルク氷) 700円
台湾かき氷 プラム(ミルク氷) 700円

ご覧ください、この色、艶!一般的なかき氷では見ることのない色と味わいに期待が高まります。プラムは酸味と甘みが特徴のフルーツ。その個性をダイレクトに感じることができる、とても美味しいふわふわかき氷です。この暑さにはプラムの優しい酸味と素材を活かした甘みがとても心地よく、牛乳で作られた氷との相性も最高で、あっという間に完食してしまいました。後半の少し溶けた部分も、プラムの良い香りを感じられて、他には代えられない美味しさをじっくり堪能することが出来ます。

この台湾かき氷に使われるシロップやフルーツは、ジャムと同様に基本的には中武さん宅で採れたものを使用。マンゴーは西諸県で作られた厳選したものを仕入れています。添えるというには贅沢すぎる程のブルーベリーも、自然な甘みと酸味があって「自然をいただいているなぁ」という心地よい気持ちにさせてくれました。
この台湾かき氷のシロップは、中武さんのジャム作りのノウハウを生かして内山さんが作り上げたコラボレーション商品。事業承継を経て、今あるものを双方の力で更に深めながら新しいものを生み出す姿も、アガベの魅力のひとつです。

アガベさんと米粉

「道の駅ビタミン館」など宮崎市内でも販売されています
「道の駅ビタミン館」など宮崎市内でも販売されています

実はアガベ、作られている焼き菓子には高原町産の米粉を使用しています。しかもこの米粉は、「ミズホチカラ」という製パン適正の高い品種でつくられており、特別に農家さんに栽培していただいたものを、「気流粉砕方式」という特殊な技術で粉末化して製品化しています。有名焼酎に使われる水として知られる霧島裂罅(れっか)水の源流が流れ込む田んぼで育ったお米は、品質にも絶対の自信があります。

用途様々なので、米粉へのハードルが下がりますね
用途様々なので、米粉へのハードルが下がりますね

こだわりの米粉は「ふわり」という名前を貰い、アガベで活躍中。内山さんがふわりを使ってシフォンケーキを焼いた時、そのふわふわさに感動し、「ふわり」と名前をつけたそうです。「気流粉砕方式」という製法で粉末化すると、米粉の粒子が超微粒子化。澱粉損傷が低くなる事で水分保持が高くなり、作った製品がしっとりとして膨らみ良く、更に香り高く仕上がるという違いがあるのだといいます。「『気流粉砕方式』って言葉は難しいんですけど、美味しく仕上がるのは間違いないですよ」と笑う内山さんの顔には、キラキラとした自信が溢れていました。

店内ではこちらの販売もされています
店内ではこちらの販売もされています

内山さんが活動する中で、中武さんから誘われた県の開発センターのイベントで出会ったのが米粉。そこでの話で米粉の力に興味が湧き、「高原の米粉を使った製品を作ろう!」と山内さんは立ち上がりました。なんと、料理に熱い思いを持つ内山さんは、納得のいく米粉を作る為、ふわりの原料米である「ミズホチカラ」の自家栽培も行っています。中武さんの紡いだ縁が内山さんの心を動かし、私は今美味しいお菓子をいただくことが出来ているなんて、人との繋がりは本当に財産ですね。

気になるお菓子

この日はシフォンケーキ、マフィン、カヌレの販売がありました。折角全て揃っていたので、引き続き食欲に正直に購入してみます。ちなみにシフォンケーキは、日によってはカットの用意もあるそうです。さぁ、内山さんが徹底的にこだわった米粉や卵を使ったお菓子たち。口に運ぶのが凄く楽しみです。

シフォンケーキ(ホール)1200円
シフォンケーキ(ホール)1200円

切ったときに驚いたのですが、静かに「しゅわしゅわしゅわ」と音が聞こえます。食べる前からワクワクする、なんと素敵な音でしょう!断面が非常にしっとりとしていて、独特の弾力がありながらも肌理が細かくふわっふわです。

口に含むとパサつきは無く、飲むように食べられるシフォンケーキでした。電子レンジで少し温めて食べると、尚更に香りが立ち、美味しくいただくことできるのでおすすめです。アガベで使っている卵は高原町にある橋口養鶏場さんの味の濃い卵。山内さんが選び抜いた卵で作られたシフォンケーキは、温めた時の香りも素晴らしかったです。

食べきれなかった分は、小分けにしてラップで包み、冷凍しました。温めると元通りに美味しくいただけましたのでおすすめです。自分へのご褒美がたくさん用意できました。

小麦アレルギーのある方はお買い求めの際ご注意ください
小麦アレルギーのある方はお買い求めの際ご注意ください

こちらはカヌレ。内山さんが求めるベストの味わいを作り出す為に研究を重ね、米粉と小麦粉を独自のバランスで配合して作られています。買った時には少ししっとりとしていたのでトースターで焼いてから少し冷ますと、てっぺんはカリッと、中はぷるぷると焼き立てのような食感を楽しめました。内山さんが狙った通り、最高の仕上がりになっています。

上の方にフツフツとバターが泡立って見えてくるので、焦げない程度に見極めて取り出しました。火力にもよると思いますので、焦がさないようにお気を付けください。リベイク(焼き直し)した方が圧倒的に香りも食感も良いので、ぜひお勧めしたいです。カヌレの特徴でもある食感のコントラストが最大に際立っていて、本当に美味しかったです。

こちらはマフィン。店頭ではプレーン、チョコチップ、ナッツがありましたが、1つだけレジ前に大好きなブルーチーズがあったので、すかさずチョイスいたしました。ブルーチーズとは特有の硫黄のような香りを持つ、青かびを生成させたチーズの事。私はこのチーズが大好きなので、迷うことなく購入しました。

折角なので、マフィンもリベイクしていただきました。一般的なマフィンよりもふんわり、ほわほわとして軽やかなのは、米粉のなせる業でしょうか。重くないのであっという間に食べきってしまいました。生地の優しい甘みとブルーチーズの塩味がマッチして、ブルーチーズが好きな方にはぜひ食べていただきたい美味しさです。温めたことで、ブルーチーズの豊潤な香りが口いっぱいに広がります。ただ、ブルーチーズのマフィンは「試しに焼いてみました!」と仰っていましたので、気になる方はインスタグラムのDMからお問合せください。

内山さんの心

「事業承継という形で、本当にいいものに出会えたと思っています。」そう楽しそうに、嬉しそうに話す内山さんは、小さい頃から料理が好きな子どもだったといいます。「小学校の時に料理のアニメがあったんですけど、ご存知ですか?それを見て『パン屋になりたい!』と思って、家でずっと作ってたんです。だけど、気付いたら東京で公務員していました。」

「写真を撮らせてください」と伝えると、一生懸命ヘアセットするチャーミングさも魅力です
「写真を撮らせてください」と伝えると、一生懸命ヘアセットするチャーミングさも魅力です

一度東京に出て、ご友人と起業して地元に戻ってこられ、更に事業承継でアガベを始めるというバイタリティの凄さは、先述の通り宮崎市から高原町への往復を難なくこなすことからも容易に納得がいきます。お話を伺って感じたのは、とにかく「前へ前へ」という思い。悩むのではなく「考える」という思考で生きている方だと強く感じました。

親しみやすい笑顔は、老若男女に愛されるポイントですね
親しみやすい笑顔は、老若男女に愛されるポイントですね

「今でも料理を極めたい思いは強いです。憧れるお店もあるので、料理の部分の夢もずっとあります。」そう話す内山さんの言葉には強い「言霊」感じずにはいられません。きっと、心の中にはまだまだ燃えるものを秘めているんだろうなと思いました。

もちもちのういろうが良いアクセントになっています
もちもちのういろうが良いアクセントになっています

ミズホチカラの米粉「ふわり」は、実はこんなところにも使われています。先ほどの台湾かき氷のトッピングに入っていた白いもの。実はういろうなんです!あまり知られていませんが、ういろうは米粉から作るお菓子で、宮崎の隠れた名物でもありますよね。ここでまさか青島を感じるとは思いませんでした。小さなういろう一つですが、なんだか心がワクワクします。

内山さんは言います。「米粉使ってるって言うと、『健康志向の人』とか『意識高い人』とかっていう、ちょっと偏ったイメージみたいなものがある気がするんです。小麦粉と一緒で、単純に食材としてもっと当たり前に認知されたいですよね。だから、作っているカヌレにも小麦粉と米粉を使用していますし、うちの商品をとっかかりとして広く使って、知ってもらいたいです。」

●DATE●
・場所
宮崎県西諸県郡高原町大字蒲牟田788-2
・営業時間
   11:00-17:00(売れ行き次第で早まる事があります)
・定休日
   水曜日
・駐車場
   7台程度
・agaveさん Instagram(店休日などこちらからご確認ください)

アガベの外には離れもあり、目の前に広がる川のせせらぎを感じながら食事をすることが出来ます。周りの山々から吹き降りる涼しい風が本当に心地良かったです。店の外には椅子やテーブルがあるので、せっかくですから夏の高原町の香りを楽しみつつ、ゆっくりと食べるのはいかがでしょうか?

縁を紡いで繋がった事業承継という未来。内山さんが心に秘める「夢」がどういう変化を見せるのか、出会えた縁を糧にはばたく姿をこれからも応援したいと思います。

かたつむり型ズボラ嫁ライター(都城市・小林市)

宮崎県内からの『プチ移住』で都城市にやってきた、夫マンと保護犬2名の家族を見守る全速嫁タロゥと申します。食べる事、フルーツ、動物、自然が大好き、まんまる女。髪をレインボーに染めるのが夢。

全速嫁タロゥの最近の記事