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「教育にカネを使え」の声を踏みつぶす元凶

前屋毅フリージャーナリスト
(写真:Natsuki Sakai/アフロ)

教育にもっとカネを使うべき、と多くの人がおもっている。どの分野で政府の支出をいまより増やすべきだとおもうかを訊いたNHKの世論調査結果が、4月2日に公表された。

それによれば、トップは教育だった。8つの分野の政府支出について尋ねたところ、「増やすべき」と「どちらかといえば増やすべきだ」を合わせて、もっとも多かったのが教育で、52%を占めた。それに次いでは保険・医療で50%、高齢者の年金が41%、環境が40%、防衛が23%、失業手当と文化と芸術が18%、警察・裁判が14%となっている。

実際、教育予算は満足いくレベルどころか、大いに不足しているのが現状である。典型的なのが教員の数であり、少人数学級が実現できないどころか、教員数が不足しているために現在の教員は過重勤務となってしまっている。

この現状が改善されない最大の要因は、財務省である。教育予算でも決定権をもつ財務省が、予算増に頑なに抵抗しているため、劣悪ともいえる教育環境はいっこうに改善されない。

たとえば教員定数について財務省は、ホームページで次のような見解を示している。冒頭で「理想の教育環境を追い求めると、教職員定数や外部人材の活用、教育施設・機械設備の充実など、必要なものは際限なく存在し、予算はいくらあっても足りない状態となる」と、理想の教育環境には教員数増が必要と認めながらも、増やすことには断固として反対する姿勢をみせている。

さらに、「ここで示す定数以上に教職員定数の配置が必要な場合には、いじめ・不登校問題への対応、学力向上やアクティブ・ラーニングなどの効果について、確かなエビデンスに基づく議論を予算編成プロセスの中で行い、事後的な検証も通じ、PDCAサイクルを徹底することとする」と続けている。

つまり、目に見える結果がなければ教員定数は増やさない、と言っているのだ。ここが、問題である。

教育は短期的に結果がでるものではない。その結果も、子ども一人ひとりによって違うもので、画一的な結果だけにとらわれてはいけないものである。にもかかわらず財務省は、短期的で明確な結果を求めている。だから、教育予算を増やせとの声が強くても、財務省は無視するのだ。

そうした財務省を説得するために、文科省も学校も努力している。しかし、教育の本質を財務省に認めさせる努力ではない。

文科省と学校がやろうとしていることは、財務省の求める結果を示す努力だ。「テストでの点数が上がった」という単純で、結果が目に見えやすいものを財務省に示そうと必死になっている。

その結果、教育の本質から文科省と学校が遠のくことになってしまっている。財務省の求める結果を実現して教育予算を増やすことに成功したとしても、それが子どもたちのための教育になっているとはかぎらない。

フリージャーナリスト

1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。立花隆氏、田原総一朗氏の取材スタッフ、『週刊ポスト』記者を経てフリーに。2021年5月24日発売『教師をやめる』(学事出版)。ほかに『疑問だらけの幼保無償化』(扶桑社新書)、『学校の面白いを歩いてみた。』(エッセンシャル出版社)、『教育現場の7大問題』(kkベストセラーズ)、『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『全証言 東芝クレーマー事件』『日本の小さな大企業』などがある。  ■連絡取次先:03-3263-0419(インサイドライン)

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