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日焼け止めの成分に金属、『かぶれ』は大丈夫? かぶれやすい成分を専門医が解説

堀向健太医学博士。大学講師。アレルギー学会・小児科学会指導医。
(写真:アフロ)

毎年、『過去最高気温』というニュースを聞いているような気がしますが、日差しが強くなってくると診療の現場では『日焼け止めを使っていいですか?』と聞かれることが増えてきます。私の外来にはアトピー性皮膚炎を持っているお子さんが多いこともあり、日焼け止めでかぶれるのではないかという心配をお持ちなのでしょう。

そこで今回は、アトピー性皮膚炎を持っているお子さんが多い私の外来でお話ししている、日焼け止めの選択の目安をご紹介します

紫外線による『光老化』と、日焼け止めによる『接触皮膚炎(かぶれ)』

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日光を浴びると皮膚の見た目の老化が早く進むという、『光老化』という言葉が普及しつつあります

鹿児島に住む女性300人と秋田に住む女性302人を比較した研究があります。

すると、鹿児島の平均40歳の女性の“顔のしわ”は、秋田の平均48歳の女性と同じくらいだったという結果でした。鹿児島では、秋田よりも紫外線を多く浴びるからではないかと推測されています(※1)。

(※1)Journal of Dermatological Science 2001; 27:42-52.(日本語訳)

この、日焼け止めによる『かぶれ』と『光老化』はトレードオフの関係にあり、なかなか両立させることが悩ましいものです。

SPFとは、どんな指標でしょう?

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SPFという指標は、Sun Protection Factorの略で、数値が高いほど紫外線(UV-B)を防御する能力が高くなることを示します。

では、『SPF 10』とは、どういう意味でしょうか?

20分で皮膚が赤くなって炎症を起こしてしまう人がいるとしましょう。SPF 10というのは、20分×10倍まで赤くなるまでの時間を伸ばすことができるという指標になります。

なお、PAというのは、波長が異なる紫外線を抑える指標です。PAも重要な指標ですが、SPFが高ければPAも高くなるので、普段はSPFを参考にしておけば大丈夫でしょう。

日焼け止めは、紫外線吸収剤(化学成分)と紫外線散乱剤(金属)のふたつに分けられます

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日焼け止め成分は大きく2種類に分かれます。

ひとつは紫外線吸収剤多くは化学成分です。

もうひとつは紫外線散乱剤金属である酸化亜鉛や酸化チタンが使われます

そしてどちらかというと紫外線吸収剤(化学成分)のほうが接触皮膚炎(かぶれ)を起こす率が高くなります

たとえば、3~17歳の子ども157人に対し、日焼け止め成分に対するアレルギーがあるかどうかを調べる光パッチテストを行った研究があります。すると9人(5.7%)が接触皮膚炎(かぶれ)を起こしたそうです。そして原因として多かったのは紫外線吸収剤のメトキシケイ皮酸エチルヘキシルとベンゾフェノン-3という成分でした(※2)。

(※2)British journal of dermatology 2014; 171(2): 370-5.(日本語訳)

2019年にFDAは、日焼け止めの一般的な化学成分12種類の安全性試験と、よりシンプルで読みやすい表示をするように求めるルールを発表しました(※3)。

(※3)Sunscreen Drug Products for Over-the-Counter Human Use

FDA はすでに紫外線散乱剤である酸化亜鉛と酸化チタンの2種類を "一般的に安全で効果的な“日焼け止め成分として認定していて、子どもであったり敏感肌である場合は、酸化亜鉛や酸化チタンの使用を優先したほうが良いとしています(※4)。

(※4)AAP News: Groups continue to recommend sunscreen while studies are ongoing

SPFを高くするということは化学成分の種類を増やして量を増やすことになりますので、アトピー性皮膚炎のお子さんには向いていないといえるでしょう。

しかし、化学成分を減らした製品は使いにくかったり値段が高かったりします

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紫外線吸収剤でも9割以上はかぶれないので、試し塗りをしてみてかぶれないかどうか確かめてもいいかもしれません。

でも、アトピー性皮膚炎のお子さんはやっぱり気になりますよね。

そこで私は、まずは化学成分を減らした製品を選ぶといいかもしれませんとお話ししています。化学成分を減らした日焼け止めには、『ノンケミカル』などという表示がされています。

つまり、紫外線散乱剤である金属、酸化亜鉛や酸化チタンが中心の日焼け止めになりますね。しかし、紫外線散乱剤は『白浮きしやすい』という欠点があります(※4)。

紫外線吸収剤(化学成分)のなかでも、かぶれやすい成分の目安はあるでしょうか?

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タイのバンコクで市販されている日焼け止め246製品のうち、「子ども用」または「敏感肌用・低刺激性」と表示された製品に含まれたアレルギーになりやすい化学物質の頻度を調査した研究があります。

そして『子ども用』と表示された日焼け止め製品であっても、少なくとも1種類の日焼け止め化学成分が85%の製品に含まれていたそうです。ただ、かぶれやすい成分としてお話しした、メトキシケイ皮酸エチルヘキシルとベンゾフェノン-3が含まれる製品は少なかったそうです。『子ども用』は、多少目安になるかもしれません(※5)。

(※5)Pediatric Dermatology 2020[Online ahead of print]. (日本語訳)

そしてこんな研究もあります。

「子ども向け」とされている日焼け止め製品533種類のなかに、アレルギーになりやすい成分を調べ、値段との関連を評価したところ、アレルギーになりやすい成分を多く含む製品は、含まない製品よりも安価である傾向だったという結果でした(※6)。

(※6)Dermatitis 2018; 29:81-4.

つまり、極端に安価な製品のほうはかぶれやすいのかもしれないということですね。

皮膚の弱いお子さんへの日焼け止めの話をまとめると…

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まとめると、アトピー性皮膚炎のお子さん方には、SPFが極端に高いものではなく(たとえば20くらい)のもので、実際に塗ってもかぶれず、もし心配ならば紫外線吸収剤、すなわち化学成分が少ないノンケミカル製品を選ぶと良いでしょうとお話ししています。

まだまだ日差しが強い日が続きます。

なにかの参考になれば嬉しく思います。

医学博士。大学講師。アレルギー学会・小児科学会指導医。

小児科学会専門医・指導医。大学講師。アレルギー学会専門医・指導医・代議員。1998年 鳥取大学医学部医学科卒業。鳥取大学医学部附属病院・関連病院での勤務を経て、2007年 国立成育医療研究センターアレルギー科、2012年から現職。2014年、米国アレルギー臨床免疫学会雑誌に、世界初のアトピー性皮膚炎発症予防研究を発表。医学専門雑誌に年間10~20本寄稿しつつTwitter(フォロワー12万人)、Instagram(2.4万人)、音声メディアVoicy(5600人)などで情報発信。2020年6月Yahoo!ニュース 個人MVA受賞。※アイコンは青鹿ユウさん(@buruban)。

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