「性と暴力の表現が韓国エンタメヒットの鍵」 韓流学会がソウルで開催
BTSや『イカゲーム』など世界を席巻する韓流の秘密を探る――。韓流について学術的な視点で発表・討論する「第9回韓流国際学術大会」が2022年10月20~21日に韓国・ソウルで開催された。世界における韓流の受容や最新のプラットフォーム事情、ゲームや翻訳書などのコンテンツについてなど、幅広い「韓流」について16か国からのスピーカーが登壇した。
テーマの一つは、「世界で韓流が人気の秘密」。特に興味深かったのが、オープニングセッションで基調講演を行った米ペンシルバニア州立大学サム・リチャーズ教授のプレゼンテーションだ。BTSのファンダムや韓国ドラマの視聴者層で、近年大きな勢力となっているのがイスラム圏。海外からの旅行者に門戸を開き始めたソウルの街でも、韓国エンタメに魅せられたという中東やインドネシアからの観光客の姿を多く見かける。
なぜ、イスラム圏で韓国エンターテインメントが人気なのか。リチャーズ教授は「韓国コンテンツにおける性の表現」を挙げる。「アメリカのドラマや音楽がセクシーな要素を奔放に盛り込み、ティーン向けの雑誌にも大胆に肌を見せる内容が多いのに対し、韓国のドラマは性的な表現が控えめです。暴力的なシーンがあるといわれている『イカゲーム』もアメリカのドラマに比べると、血が流れるシーンはずっと少ない。わたしが教えている学生の中にはアフガニスタンからアメリカに移民した学生もいますが、『アメリカのドラマや音楽は家族で見るのは気が引ける。韓国エンターテインメントは、安心して楽しめる』といいます」
また、韓国でエンターテインメントの現場に携わるキーパーソンも多数登壇。ドラマ『パチンコ』などの製作にかかわる会社Mr. RomanceのCBOパク・ジョンヒョンさんは、韓流黎明期からの自らのキャリアに重ねて、K-POPの歴史を以下のように語った。
「1999年にH.O.TがMTV Video Music Awardの授賞式に立ったことがK-POP世界化のひとつの原点。以後「韓流第2期」(2003年~2009年)では安室奈美恵がソウルのステージに立つなど、日韓交流の動きもありました。SNSが活発化した「韓流第3期」では、(2010~2017年)にはエンタメとコスメをテーマにしたコンテンツをYouTubeで発信するプロジェクトがアジアで人気に。2018年以後は、「韓流第4期」。SNSがさらに日常に浸透し、ファンたちも簡単かつ自由に発信する時代となりました。こうして拡散され世界中でブームとなった韓国コンテンツに、欧米の大手動画プラットフォームがラブコールを送るようになったのです」
20年以上の現場経験をもとにパク・ジョンヒョンさんが強調するのは、「もっとも大事なことは、コンテンツそのものの力」。なかでも重要なのは、「すぐれたIP(著作権・知的財産権)を確保すること。現在は漫画家カンプル氏とタッグを組み、代表作の一つ『ムービング』をディズニー+で準備中。さらに、『アベンジャーズ』シリーズのように、カンプル氏の6つの作品を一つの世界観で結ぶプロジェクトを計画しているという。
さらに、韓流コンテンツが成功した3つのキーワードを明かした。
「ひとつめは努力。すべての歴史は一朝一夕では生まれない。ふたつめは、プラットフォームの活用。最適のプラットフォームで勝負するコンテンツが勝利する。みっつめは、コンテンツそのもの。優れたクリエーターたちを発掘・活用するシステムが重要」
今年で9回目を迎える韓流学会。世界韓流学会学術理事のキム・ヨンミさんは、「今回は特に、学問的な視点から分析する世界各国の学者と、エンタメ産業の現場で日々夢を現実にしていくプレーヤーとの交流に重点を置いた」と明かす。
「学者たちはエンタメビジネスの中心にいる人材から彼らが作ってきた歴史と現実の課題、未来の夢を知り、韓国の製作者たちは自分たちが気づいていなかった視点を海外の学者の視点を通じて新たな可能性を探ることができるからです」
韓流学会は、来年12月、韓流のヨーロッパの要所フランス・パリで開催予定だ。
写真提供:韓流国際学術大会