気候変動の影響を受けるフィジーがみるノルウェーの石油裁判
11月22日、ノルウェー初の憲法の解釈をかけた石油環境裁判がオスロ地方裁判所で最終日を迎えた。
判決がでるまでには4~12週間と想定されているが、異例の裁判であるため、最高裁までもめるとみられている。
さらなる油田開発は市民の環境と健康を保証する憲法に反しており、新エリアでの油田開発をやめるように訴えられているノルウェー政府。
政府側や国会の主要政党は、石油・環境議論は国会でされるべきものと反論。裁判所に持ち込む行為は米国の真似事であり、民主主義に反しているとあきれている姿勢だ。
裁判を傍聴しにCOP23からやってきたフィジー出身の2人
同時期にはドイツのボンで、国連気候変動会議COP23が開催されていた。今年は南太平洋の島国フィジーが初めてホスト国を担った。
ノルウェーでの石油裁判のことをCOP23の会場で知り、急遽オスロにまでやってきたのは2人のフィジー在住者だった。
アリシ・ナベア氏とサムエラ・クリドゥラニ氏は、環境団体「Pacific Island Represent」を代表している。
14日、オスロでの環境イベントで偶然出会い、話を聞いた。
クリドゥラニ氏は、パリ協定に同意しているはずのノルウェーが油田開発をしている状況を知って、悲しくなったと語る。2人はこの日、オスロ地方裁判所での裁判を傍聴した。
「ノルウェーはパリ協定に貢献できていないのではないでしょうか。同時に、未来の世代の健康と安全を守ろうと、若い人々が裁判を起こしている姿を見て、大きなインスピレーションを受けました」と話すクリドゥラニ氏。
ノルウェーが油田開発をやめ、再生可能エネルギーに投資すれば、気候変動に一定の歯止めはかかると思うと語った。
ノルウェーは裕福な北欧の国。油田開発をしていると知らなかった
2人は、ノルウェーが油田開発をしている国だということを、COP23で教えてもらうまで知らなかったと話す。
「裕福な北欧の国というイメージしかありませんでした。フィジーでは知られていないことです。帰国したら、フィジーの人々に私たちが見たことを伝えたい」とナベア氏。
裁判とCOP23のダブル効果で環境議論が再燃
今回の裁判では、市民環境派側が勝訴することは難しいのではとされている。それでも裁判期間中は、COP23の時期がかぶっていたため、メディアやSNSで環境議論が再燃。
ノルウェーの人々は、意見は人によって違いはあれ、環境・気候の議論をすることが好きだ。
ノルウェー国営放送局NRKは「気候おたくのための番組」など、子どもが分かりやすいように説明する企画をいくつも打ち出していた。
NRKの15日の記事では、クリドゥラニ氏がインタビューされており、「あなたたちが油田を掘り続ければ、私たちはいつか沈んでしまう。ノルウェーが油田開発を続けようとしていると聞いて、怒りを感じました」と答えていた。
Photo&Text: Asaki Abumi