【英会話】夏の特別編4最終回 went to the school ってどういう意味? キィは抽象度
仕事で英語を話し始めたころに困ったのは、a やthe と言った冠詞です。かなりの確率で間違える。
英文法絡みのエンタメ小説を出版したりする身としては間違えない方がいいんで、Native English Speakerたちを質問攻めして、大学で習得した現象学を使って自分なりの理窟を作りました。Native English Speakerと大学の恩師のおかげで、この理窟なかなか優秀。今ではほとんど間違えずにすんでいます。そんな徳田流冠詞の奥義を夏の特別企画として公開します。今回はその第4回最終回です(第1回はこちら)。
昨日、学校に行ったよ。
ある時、Native English Speakerに、昨日、学校に行ったよ と言われたことがあります。英語は、
I went to the school yesterday.
これを聞いた瞬間、はて? となる。
みなさんもなりますよね? だって、学校に行く は、go to school と習いましたもの。そして、勉強不足で、my school と書いて、ペケをもらいましたよね? みんな。あれ? おれだけ?
それはともかくとして、went to the school は納得がいかない。
納得いかないことはほっとけないんで、よせばいいのに、そのNative English Speakerにwent to school じゃないの? と訊(き)いちゃう。
そしたら、Native English Speaker、怪訝(けげん)な顔して、学校の建物に行ったんだもの と言って来た。
ちょっと納得しきれなかったけど、学校の建物をあらわすときはthe をつけていいのかと理解したんですが、第1回から読んでいらっしゃるみなさんなら、わたしの理解が浅いことが判りますね。
第1回から読むのが面倒という方のために軽く説明しますと、
Native English Speakerは、まず見えているものの抽象度を決める。それを
特定のレベルか?⇒the
どれでもいいレベルか?⇒a(an もしくは複数のs)
ふわっとした概念のレベルか?⇒無冠詞
という風に分ける。
今回の文であれば特定のレベルだなと思ってschoolを置いているんです。なら、特定のレベルのschool、つまり、スポットライトを当てられた学校、もしくはその建物ということです。
じゃあ、われわれNative Japanese Speakerが習った無冠詞のschool とは何をあらわしているのでしょうか?
無冠詞ですから、概念のレベル、頭の中にあるふわっとしたイメージの学校です。つまり、学びの場としての学校。なので、遠足も、課外活動も、修学旅行も含んでいるんです。学びの場ですから。誰ですか? 修学旅行でなんか学んだっけって言ってるのは?
こういう風に抽象度を決めて、それを冠詞であらわすというのは、われわれNative Japanese Speakerにはちょっと異質な思考の流れで、なかなか身につかないんですが、ポイントはイメージなんです。
それをこのエッセイのイラストをお願いしている大橋さんに話したところ、イラストを描いてくれました。夏ですからね、題材は肝試しです。大橋さんありがとうございます。
あなたは、こんなことを言いたいとします。
私、怖い場所に行くの好きだな。
さて、この日本語から、みなさんは下のどれを想像されたでしょうか? 想像したものに従って、the, ~~s or × のどれかを決めてください。
1であれば、 I love to go to spooky places. どれでもいいレベルですから。
2であれば、 I love to go to the spooky place. 特定のレベルですね。
3であれば、 I love to go to spooky place. 細かいところをイメージしていないふわっとした概念ですね。
思ったことを言葉にする際に、こんな感じで想像して、抽象度を決めて、それを冠詞であらわしてから、名詞を置くというフローをやってみてください。効果抜群ですよ。
早速フローを試してみたい方のために、練習問題を。
英文中の(the, a or ×)のどれかを選びましょう。
音楽は好きですよ。
I prefer (the, a or ×) music.
(ホテルなどの初めて入った部屋で)電気つけて。
Turn on (the, a or ×) light.
(レストランでメニューを見ながら)ステーキにしよう。
I’ll have (the, a or ×) steak.
(レストランで何も見ずに)スモールのピザをもらいます。
I’ll have (the, a or ×) small pizza.
解答はイラストの下です。
音楽は好きですよ。
I prefer music.
はっきりした何か映画とかの音楽ではなく、概念のレベルをイメージすると思いますので、何もつけません。
(ホテルなどの初めて入った部屋で)電気つけて。
Turn on a light.
どれでもいいから照明が欲しい状況ですね。どれでもいいレベルなので、a です。ちなみに、光あれ というのは、Let there be light. と言います。神様も存在していない光を呼び出す際はふわっとした概念のレベルだったんですね。
(レストランでメニューを見ながら)ステーキにしよう。
I’ll have the steak.
メニューの中のステーキという特定のレベルですね。なので、the です。
(レストランで何も見ずに)スモールのピザをもらいます。
I’ll have a small pizza.
なにも見ていないということはどれでもいいレベルです。なので、a です。
今回で夏の特別編は終演です。
4日間連続でお付き合いいただいたみなさまも、この第4回の最終回からお読みいただいたみなさまも、徳田流冠詞の理窟をお愉しみいただけたとしたら幸いです。
ついでですが、この冠詞の理窟を知っているといろんな冠詞の不思議に答えを見出せます。河の名前はthe Sumida Riverとあらわすのに、湖の名前はLake Biwa となったり、月はthe moon なのに、木星の衛星はmoons of Jupiter になる。これはつまり抽象度が~~。え? しつこいよ、もうわかったからいい? 失礼しました。おあとがよろしいようで。
明後日8/24(土)からは、いつもの私の失敗英語や、今も私の周りで起こっている失敗英語を多少脚色も加えてお送りします。9PMのアップ予定です。そちらもお気に召しましたら是非ともごひいき(フォロー)くださいますようお願い申し上げます。
イラスト 大橋啓子